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episode1 私、みえるんです
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梨花の父親に二人の交際がバレたのだ。
外務省のキャリア官僚である梨花の父親は、
二人の交際に激怒し、強制的に海外留学の
手続きをしてしまったのだという。
困った梨花は、どうすれば良いかわからず、
彼にその事を相談した。が、なんと話を聞いた
彼の方から、突然別れを切り出されてしまい……
放心状態で、赤信号の横断歩道をふらりと渡って
しまったところを、車にはねられてしまった。
というのが1週間前の話で……現在に至る。
幸い、病院で眠っている梨花の体は、軽い擦り傷と
脳しんとうで済んだのだが、霊体が体から抜け出して
しまっているのだから、意識が戻るわけもない。
「気が付いたら病院の天井から、ベッドに眠る
自分を見てたのよね。すごく、シュールだったわ」
まるで他人事のようにそう言って、梨花は微笑んで
いるが、つばさは、眉を顰めて斗哉の顔を覗いた。
つばさ自身、幽体離脱の経験は一度もないが、
あまり長い時間、魂が体から離れているのは、
不味い気がする。
「どうして体に戻れないのかが、問題なんだよね。
斗哉はどう思う?」
「直前に受けた精神的ショックが、戻れない理由。
それしか思い浮かばないよな。彼女の話を聞くかぎり」
ちら、とつばさの隣を気にしながら斗哉が言った。
「やっぱり、そっか。でも、失恋したくらいで幽体離脱
するかな?そんなことくらいで幽体離脱してたら、世の中、
彷徨う魂で溢れかえっちゃうよねぇ?」
つばさは肩を竦める。失恋どころか、初恋と呼べるもの
すら知らないつばさには、到底、想像もつかなかった。
そんなつばさの肩を、隣から梨花が突く。そして、
「そんなことだなんて、言わないで」と頬を膨らました。
痛いなぁ、もう、と肩をさするつばさに、怪訝な顔をしながら、
斗哉が話を進める。
「まあ、人の恋路に他人が首を突っ込むのは気が
引けるけど、その辺の話を彼に訊きに行くのが、一番
てっとり早いよな。他にも俺たちの知らない話が訊ける
かもしれないし」
「だよね。あ、彼氏さんって、梨花さんが事故にあった
こと、知ってるの?」
つばさは、梨花を向いて聞いた。
「ううん。彼は何にも知らない。私から連絡できないし、
共通の知り合いもいないし……」
「じゃあ」
つばさは、斗哉の目を覗き込んで、言った。
「私たちが行くしかないよね。彼のところに」
「たち、って……俺も?」
斗哉が顔を顰めて、自分を指差す。つばさは、お願い、
と顔の前で手を合わせた。
「だって、私より斗哉の方が信じてもらえそうだし、
男同士の方が話しやすいかもしれないし?」
それに、恋の話となれば、つばさはからっきしだ。
恋愛経験のある斗哉の方が、話を聞き出しやすい
気もする。
「私からも、お願い」
つばさの隣で、梨花も祈るように手を合わせた。
その声が斗哉に届くはずもないが、梨花が手を
合わせたのと同時に、斗哉が頷く。
「わかった。俺も一緒に行くよ。でも、行くなら急いだ
方がいいよな。週末は俺たちも学際で忙しいし。
明日の帰り、そのまま彼の店へ行こう」
斗哉がそう言った瞬間、ふわりと梨花がテーブルを
飛び越えた。そうして、斗哉に抱きついた。
「きゃ~っ!斗哉くん、ありがとう!!」
目の前で斗哉の首根っこにしがみつき、梨花が
頬ずりまでしている。つばさは、なぜかイラッとして、
「ちょっと、何してんの!!」と、声を荒げた。
「何だよ、いきなり」
つばさの剣幕にびっくりして、斗哉が目を丸くする。
「べ、別に……何でもない」
頬を膨らませたまま、ぷいっ、と横を向くと、
梨花は首を竦めて、「ごめんね」と、また舌を出した。
外務省のキャリア官僚である梨花の父親は、
二人の交際に激怒し、強制的に海外留学の
手続きをしてしまったのだという。
困った梨花は、どうすれば良いかわからず、
彼にその事を相談した。が、なんと話を聞いた
彼の方から、突然別れを切り出されてしまい……
放心状態で、赤信号の横断歩道をふらりと渡って
しまったところを、車にはねられてしまった。
というのが1週間前の話で……現在に至る。
幸い、病院で眠っている梨花の体は、軽い擦り傷と
脳しんとうで済んだのだが、霊体が体から抜け出して
しまっているのだから、意識が戻るわけもない。
「気が付いたら病院の天井から、ベッドに眠る
自分を見てたのよね。すごく、シュールだったわ」
まるで他人事のようにそう言って、梨花は微笑んで
いるが、つばさは、眉を顰めて斗哉の顔を覗いた。
つばさ自身、幽体離脱の経験は一度もないが、
あまり長い時間、魂が体から離れているのは、
不味い気がする。
「どうして体に戻れないのかが、問題なんだよね。
斗哉はどう思う?」
「直前に受けた精神的ショックが、戻れない理由。
それしか思い浮かばないよな。彼女の話を聞くかぎり」
ちら、とつばさの隣を気にしながら斗哉が言った。
「やっぱり、そっか。でも、失恋したくらいで幽体離脱
するかな?そんなことくらいで幽体離脱してたら、世の中、
彷徨う魂で溢れかえっちゃうよねぇ?」
つばさは肩を竦める。失恋どころか、初恋と呼べるもの
すら知らないつばさには、到底、想像もつかなかった。
そんなつばさの肩を、隣から梨花が突く。そして、
「そんなことだなんて、言わないで」と頬を膨らました。
痛いなぁ、もう、と肩をさするつばさに、怪訝な顔をしながら、
斗哉が話を進める。
「まあ、人の恋路に他人が首を突っ込むのは気が
引けるけど、その辺の話を彼に訊きに行くのが、一番
てっとり早いよな。他にも俺たちの知らない話が訊ける
かもしれないし」
「だよね。あ、彼氏さんって、梨花さんが事故にあった
こと、知ってるの?」
つばさは、梨花を向いて聞いた。
「ううん。彼は何にも知らない。私から連絡できないし、
共通の知り合いもいないし……」
「じゃあ」
つばさは、斗哉の目を覗き込んで、言った。
「私たちが行くしかないよね。彼のところに」
「たち、って……俺も?」
斗哉が顔を顰めて、自分を指差す。つばさは、お願い、
と顔の前で手を合わせた。
「だって、私より斗哉の方が信じてもらえそうだし、
男同士の方が話しやすいかもしれないし?」
それに、恋の話となれば、つばさはからっきしだ。
恋愛経験のある斗哉の方が、話を聞き出しやすい
気もする。
「私からも、お願い」
つばさの隣で、梨花も祈るように手を合わせた。
その声が斗哉に届くはずもないが、梨花が手を
合わせたのと同時に、斗哉が頷く。
「わかった。俺も一緒に行くよ。でも、行くなら急いだ
方がいいよな。週末は俺たちも学際で忙しいし。
明日の帰り、そのまま彼の店へ行こう」
斗哉がそう言った瞬間、ふわりと梨花がテーブルを
飛び越えた。そうして、斗哉に抱きついた。
「きゃ~っ!斗哉くん、ありがとう!!」
目の前で斗哉の首根っこにしがみつき、梨花が
頬ずりまでしている。つばさは、なぜかイラッとして、
「ちょっと、何してんの!!」と、声を荒げた。
「何だよ、いきなり」
つばさの剣幕にびっくりして、斗哉が目を丸くする。
「べ、別に……何でもない」
頬を膨らませたまま、ぷいっ、と横を向くと、
梨花は首を竦めて、「ごめんね」と、また舌を出した。
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