不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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55.妹と二人

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 期末テストを無事に乗り切った私は、実家に帰るために馬車に乗っていた。
 そんな私の正面には、妹であるエムリーがいる。彼女と一緒の馬車というのは、とても気まずい。できれば、避けたいものだった。
 しかし、姉妹が違う馬車で帰るというのも良くないと思っている。一応、両親の前では表面上は仲良くしているため、これは仕方ない措置なのだ。

「……」
「……」

 とりあえず私は、窓の外の景色を見てみた。それでいくらか、気は紛れる。
 そもそも、一人で帰ったとしても馬車の中が静かなのは変わらない。エムリーのことはいないものとして、考えるとしよう。

「……うん?」
「え? あっ……」

 そんなことを思っていると、馬車が幾分か大きく揺れた。
 その揺れによって、エムリーの体は大きく傾いた。

「あがっ……」
「……エムリー!」

 そして次の瞬間、エムリーは馬車の壁に頭をぶつけた。
 鈍い音が響いて、流石の私も心配してしまう。いやというか、エムリーから返答がないのだが。

「エムリー……っ! これは」

 エムリーの状態を確認しようとした私は、窓の外を見てあることに気付いた。
 外には、大きな体をした獣がいる。あれは熊だろうか。かなり近くにいるみたいだ。
 ということは、馬車に何が起こったかもわかってくる。恐らく、馬が怖がったことによって、激しく揺れたということだろう。

「とりあえず静かにしておかないと……」

 私は、窓の外を見ながらエムリーの体を慎重に動かす。
 血は流れていないし、息はしている。しかし、意識がないということは、まずい状態なのかもしれない。
 とはいえ、今御者にことを知らせてもどうにもならないだろう。あの熊がこちらを気にせず、御者が馬を鎮められることを祈るしかない。

「んんっ……」
「エムリー、気が付いたの?」
「あ、あれ?」

 そんなことを考えていると、エムリーが目を覚ました。
 色々と不安な状況ではあるが意識が戻ったというのは、嬉しいことだ。

「エムリー、驚かないで聞いてね。外に熊がいるの。それで馬が動揺して馬車が揺れたと思うのだけれど……とにかく、今は静かにしていて」
「エムリー? それは、誰ですか?」
「え?」

 焦りながら事情を説明した私に対して、エムリーはきょとんとした顔をしていた。
 そして彼女は、自分が誰であるかを聞いてきている。その事実に、私は固まっていた。

「というか、ここはどこで私は誰で……あれ?」
「ま、まさか……」

 エムリーは周囲を見渡して、疑問符を浮かべていた。
 それによって、私は悟る。彼女が記憶喪失になったということを。
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