80 / 100
80.危険な令嬢
しおりを挟む
ロヴェリオ殿下に相談した結果、エフェリアお姉様とレフティス様に鋭い視線を向けていた令嬢の正体がわかった。
彼女は、モーレット子爵家のマネリア嬢というらしい。ディトナス様のお茶会にも参加していた人で、噂によるとレフティス様に思いを寄せていたようだ。
「まあ、噂の方はつい先程知ったんだけどな。あっちで噂している人がいたらしいんだ」
「レフティス様に思いを寄せていたというなら、その態度の理由というのもわかりやすくはありますね……当然のことながら、今回のことは快く思わないでしょうし」
「ああ、それは理解できるな。ただ、表に出していいことではない」
ロヴェリオ殿下は、ゆっくりと首を横に振った。
マネリア嬢は、この場においてそういった表情をするべきではなかったということだろう。手厳しいことかもしれないが、ここでも自分を律する必要があったということかもしれない。
「大体、こちらはあの二人のことは事前に通知していた訳だからな。ヴェルード公爵家から話を聞いた後、俺は通達した。それに休憩も挟んで、準備する時間も与えている。それなのに、マネリア嬢はのこのことやって来て、そんな視線をしたんだ。別に体調不良でもなんでも、言い訳は用意できたというのに」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに、マネリア嬢がわざわざ二人のダンスを見に来たというのは奇妙なことである。
あんな風に視線を向けるくらい嫌なら、見に来なければ良かっただけだ。それなのに彼女が来たことには、何か意味があるように思えてしまう。
「ロヴェリオ殿下、まさかとは思いますが、マネリア嬢は何か危険なことをしようとしているのではありませんか?」
「……何?」
「ロヴェリオ殿下の言う通り、あの場に彼女がいたのは変な話です。もしかしたら、自分を見失っているのではないでしょうか? 端的に言ってしまえば、やけになっているということです」
「……その可能性は、ない訳ではないな」
私の中には、最悪の想定が形成されていた。
マネリア嬢は、エフェリアお姉様に何か直接的な危害を加えるつもりなのではないか、そんな考えが過ってきたのだ。
今の彼女は、追い詰められている状態なのかもしれない。となると、やけになって全てを滅茶苦茶にしようと考えるのも、あり得る気がする。
その場合、取る手段は非難や罵倒などの生易しいものではないだろう。もっと直接的で、残酷なことをするはずだ。
「騎士辺りを呼んでおくべきか……」
「そうしてもらえると――」
「クラリア? どうかしたのか?」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は答えようとしていた。
しかし、言葉を詰まらせることになってしまった。それは、レフティス様とともにエフェリアお姉様が会場に戻って来たからだ。
ただ私はすぐに気付いた。ロヴェリオ殿下も、見ればすぐにわかるだろう。レフティス様の隣にいるのは、オルディアお兄様なのだ。
彼女は、モーレット子爵家のマネリア嬢というらしい。ディトナス様のお茶会にも参加していた人で、噂によるとレフティス様に思いを寄せていたようだ。
「まあ、噂の方はつい先程知ったんだけどな。あっちで噂している人がいたらしいんだ」
「レフティス様に思いを寄せていたというなら、その態度の理由というのもわかりやすくはありますね……当然のことながら、今回のことは快く思わないでしょうし」
「ああ、それは理解できるな。ただ、表に出していいことではない」
ロヴェリオ殿下は、ゆっくりと首を横に振った。
マネリア嬢は、この場においてそういった表情をするべきではなかったということだろう。手厳しいことかもしれないが、ここでも自分を律する必要があったということかもしれない。
「大体、こちらはあの二人のことは事前に通知していた訳だからな。ヴェルード公爵家から話を聞いた後、俺は通達した。それに休憩も挟んで、準備する時間も与えている。それなのに、マネリア嬢はのこのことやって来て、そんな視線をしたんだ。別に体調不良でもなんでも、言い訳は用意できたというのに」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに、マネリア嬢がわざわざ二人のダンスを見に来たというのは奇妙なことである。
あんな風に視線を向けるくらい嫌なら、見に来なければ良かっただけだ。それなのに彼女が来たことには、何か意味があるように思えてしまう。
「ロヴェリオ殿下、まさかとは思いますが、マネリア嬢は何か危険なことをしようとしているのではありませんか?」
「……何?」
「ロヴェリオ殿下の言う通り、あの場に彼女がいたのは変な話です。もしかしたら、自分を見失っているのではないでしょうか? 端的に言ってしまえば、やけになっているということです」
「……その可能性は、ない訳ではないな」
私の中には、最悪の想定が形成されていた。
マネリア嬢は、エフェリアお姉様に何か直接的な危害を加えるつもりなのではないか、そんな考えが過ってきたのだ。
今の彼女は、追い詰められている状態なのかもしれない。となると、やけになって全てを滅茶苦茶にしようと考えるのも、あり得る気がする。
その場合、取る手段は非難や罵倒などの生易しいものではないだろう。もっと直接的で、残酷なことをするはずだ。
「騎士辺りを呼んでおくべきか……」
「そうしてもらえると――」
「クラリア? どうかしたのか?」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は答えようとしていた。
しかし、言葉を詰まらせることになってしまった。それは、レフティス様とともにエフェリアお姉様が会場に戻って来たからだ。
ただ私はすぐに気付いた。ロヴェリオ殿下も、見ればすぐにわかるだろう。レフティス様の隣にいるのは、オルディアお兄様なのだ。
749
お気に入りに追加
3,131
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたのことが大好きなので、今すぐ婚約を解消いたしましょう!
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「ランドルフ様、私との婚約を解消しませんかっ!?」
子爵令嬢のミリィは、一度も対面することなく初恋の武人ランドルフの婚約者になった。けれどある日ミリィのもとにランドルフの恋人だという踊り子が押しかけ、婚約が不本意なものだったと知る。そこでミリィは決意した。大好きなランドルフのため、なんとかしてランドルフが真に愛する踊り子との仲を取り持ち、自分は身を引こうと――。
けれどなぜか戦地にいるランドルフからは、婚約に前向きとしか思えない手紙が届きはじめる。一体ミリィはつかの間の婚約者なのか。それとも――?
戸惑いながらもぎこちなく心を通わせはじめたふたりだが、幸せを邪魔するかのように次々と問題が起こりはじめる。
勘違いからすれ違う離れ離れのふたりが、少しずつ距離を縮めながらゆっくりじりじりと愛を育て成長していく物語。
◇小説家になろう、他サイトでも(掲載予定)です。
◇すでに書き上げ済みなので、完結保証です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる