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80.危険な令嬢
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ロヴェリオ殿下に相談した結果、エフェリアお姉様とレフティス様に鋭い視線を向けていた令嬢の正体がわかった。
彼女は、モーレット子爵家のマネリア嬢というらしい。ディトナス様のお茶会にも参加していた人で、噂によるとレフティス様に思いを寄せていたようだ。
「まあ、噂の方はつい先程知ったんだけどな。あっちで噂している人がいたらしいんだ」
「レフティス様に思いを寄せていたというなら、その態度の理由というのもわかりやすくはありますね……当然のことながら、今回のことは快く思わないでしょうし」
「ああ、それは理解できるな。ただ、表に出していいことではない」
ロヴェリオ殿下は、ゆっくりと首を横に振った。
マネリア嬢は、この場においてそういった表情をするべきではなかったということだろう。手厳しいことかもしれないが、ここでも自分を律する必要があったということかもしれない。
「大体、こちらはあの二人のことは事前に通知していた訳だからな。ヴェルード公爵家から話を聞いた後、俺は通達した。それに休憩も挟んで、準備する時間も与えている。それなのに、マネリア嬢はのこのことやって来て、そんな視線をしたんだ。別に体調不良でもなんでも、言い訳は用意できたというのに」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに、マネリア嬢がわざわざ二人のダンスを見に来たというのは奇妙なことである。
あんな風に視線を向けるくらい嫌なら、見に来なければ良かっただけだ。それなのに彼女が来たことには、何か意味があるように思えてしまう。
「ロヴェリオ殿下、まさかとは思いますが、マネリア嬢は何か危険なことをしようとしているのではありませんか?」
「……何?」
「ロヴェリオ殿下の言う通り、あの場に彼女がいたのは変な話です。もしかしたら、自分を見失っているのではないでしょうか? 端的に言ってしまえば、やけになっているということです」
「……その可能性は、ない訳ではないな」
私の中には、最悪の想定が形成されていた。
マネリア嬢は、エフェリアお姉様に何か直接的な危害を加えるつもりなのではないか、そんな考えが過ってきたのだ。
今の彼女は、追い詰められている状態なのかもしれない。となると、やけになって全てを滅茶苦茶にしようと考えるのも、あり得る気がする。
その場合、取る手段は非難や罵倒などの生易しいものではないだろう。もっと直接的で、残酷なことをするはずだ。
「騎士辺りを呼んでおくべきか……」
「そうしてもらえると――」
「クラリア? どうかしたのか?」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は答えようとしていた。
しかし、言葉を詰まらせることになってしまった。それは、レフティス様とともにエフェリアお姉様が会場に戻って来たからだ。
ただ私はすぐに気付いた。ロヴェリオ殿下も、見ればすぐにわかるだろう。レフティス様の隣にいるのは、オルディアお兄様なのだ。
彼女は、モーレット子爵家のマネリア嬢というらしい。ディトナス様のお茶会にも参加していた人で、噂によるとレフティス様に思いを寄せていたようだ。
「まあ、噂の方はつい先程知ったんだけどな。あっちで噂している人がいたらしいんだ」
「レフティス様に思いを寄せていたというなら、その態度の理由というのもわかりやすくはありますね……当然のことながら、今回のことは快く思わないでしょうし」
「ああ、それは理解できるな。ただ、表に出していいことではない」
ロヴェリオ殿下は、ゆっくりと首を横に振った。
マネリア嬢は、この場においてそういった表情をするべきではなかったということだろう。手厳しいことかもしれないが、ここでも自分を律する必要があったということかもしれない。
「大体、こちらはあの二人のことは事前に通知していた訳だからな。ヴェルード公爵家から話を聞いた後、俺は通達した。それに休憩も挟んで、準備する時間も与えている。それなのに、マネリア嬢はのこのことやって来て、そんな視線をしたんだ。別に体調不良でもなんでも、言い訳は用意できたというのに」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに、マネリア嬢がわざわざ二人のダンスを見に来たというのは奇妙なことである。
あんな風に視線を向けるくらい嫌なら、見に来なければ良かっただけだ。それなのに彼女が来たことには、何か意味があるように思えてしまう。
「ロヴェリオ殿下、まさかとは思いますが、マネリア嬢は何か危険なことをしようとしているのではありませんか?」
「……何?」
「ロヴェリオ殿下の言う通り、あの場に彼女がいたのは変な話です。もしかしたら、自分を見失っているのではないでしょうか? 端的に言ってしまえば、やけになっているということです」
「……その可能性は、ない訳ではないな」
私の中には、最悪の想定が形成されていた。
マネリア嬢は、エフェリアお姉様に何か直接的な危害を加えるつもりなのではないか、そんな考えが過ってきたのだ。
今の彼女は、追い詰められている状態なのかもしれない。となると、やけになって全てを滅茶苦茶にしようと考えるのも、あり得る気がする。
その場合、取る手段は非難や罵倒などの生易しいものではないだろう。もっと直接的で、残酷なことをするはずだ。
「騎士辺りを呼んでおくべきか……」
「そうしてもらえると――」
「クラリア? どうかしたのか?」
ロヴェリオ殿下の言葉に、私は答えようとしていた。
しかし、言葉を詰まらせることになってしまった。それは、レフティス様とともにエフェリアお姉様が会場に戻って来たからだ。
ただ私はすぐに気付いた。ロヴェリオ殿下も、見ればすぐにわかるだろう。レフティス様の隣にいるのは、オルディアお兄様なのだ。
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