妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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68.隠れていた姉

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「エフェリアお姉様、何をやっているんですか?」
「あ、あはは……」

 私の小声の言葉に、エフェリアお姉様は苦笑いを浮かべていた。
 流石に自分がやっていることが、とんでもないことだということは理解しているようだ。

 とりあえず無事に見つけられて、一安心である。お兄様方では目立つからという理由で、私にこれが頼まれたのだが、成し遂げられて良かったと思う。
 いや、まだ正確には成し遂げているとは言えないかもしれない。私の任務は、エフェリアお姉様を連れて帰ることなのだから。

「……ぼ、僕はオルディアだよ」
「いえ、流石にそれは無理がありますよ。私ももう、お姉様方を見間違ったりしませんから」
「それはちょっと嬉しいけど」

 エフェリアお姉様とオルディアお兄様は、性別の違い以外はそっくりだ。そんな二人のことを、私は初め見分けられなかった。
 ただ、それは既に昔の話だ。今となっては、どうしてわからなかったのかわからなくなるくらいには、二人の違いを如実に感じている。

「レフティス様と一緒にいるのは、オルディアお兄様ですよね?」
「まあ、うん。そうだけど」
「いつ入れ替わったんですか? 玄関で出迎えた時は、エフェリアお姉様でしたよね?」
「それはそうだね。だから、部屋に案内している間に入れ替わったんだ」
「どうしてそんなことを……」

 エフェリアお姉様の言葉に、私は単純な疑問の言葉を口にしていた。
 わざわざ二人が入れ替わる意味が、私にはわからない。これは結構重要な場面であるというのに、どうしてこんなことをしているのだろうか。

「理由という程の理由はないんだけど……その、やっぱり私とオルディアを見分けられるかとか、気になるから」
「気になるからって、こんなことをしたら駄目だと思うんですけど……」「
「うう、クラリアが厳しい……」
「いや、厳しいと言いますか……」

 私は別に、厳しいという訳ではないと思う。これに関しては、お父様や夫人、お兄様方も疑問に思っていたことだ。
 というか皆、結構焦っているようだった。当然のことながら、これがばれたら無礼にあたるからである。
 今の所、ばれている様子はないのだが、これからどうなるかはわからない。二人には明確な違いもあるため、ちょっとしたきっかけからばれる可能性もある。

「とりあえず、戻ってもらわないと困ります」
「うん……」

 私の言葉に対して、エフェリアお姉様は力なく頷いた。
 なんというか、様子が少し変なような気がする。もしかして、レフティス様との婚約に対して不安なことなどがあるのだろうか。
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