妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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65.新たなる申し出

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「婚約? 父上、またですか?」
「うむ……」

 私の婚約に関する一連の事件が収束してロヴェリオ殿下が帰ってから数日後、私達ヴェルード公爵家の面々は、お父様の執務室に集まっていた。
 大事な話がある。そう言って呼び出された私達に、お父様は婚約の話であるということを切り出してきた。
 それによって、私は背筋を伸ばすことになった。ディトナス様の件があったからか、皆警戒しているようだ。

「といっても、今回はクラリアへの婚約の提案という訳ではない。エフェリアへの提案だ」
「え? 私ですか?」
「ああ、レフティス・ラベーシン伯爵令息を知っているか?」
「レフティス……あ、ああ!」

 お父様に話を振られたエフェリアお姉様は、手を叩いて目を丸くしていた。
 それはその名前に、覚えがあるということだろう。それは当然だ。レフティス様とは、つい最近会ったばかりである。
 それは、ドルイトン侯爵家でのお茶会の時のことだ。私も一緒に、挨拶をしたことを覚えている。

「あの人が私に、ですか?」
「ラベーシン伯爵家の嫡子であるそうだが、どんな人だったのか、聞いてもいいか? 先日のお茶会で顔を合わせたのだろう?」
「あ、はい。まあ、紳士的な人ではありましたよ? 挨拶した時には、特に気になる点などは……」
「……どうかしたのか?」
「少し大袈裟な人でしたね。悪い意味ではなくて」

 エフェリアお姉様の言葉に、当時そこにいた私とオルディアお兄様以外の人達は首を傾げることになった。
 レフティス様という人間は、実際に接した私達にしかわからないことだろう。彼はとても紳士的であったのだが、なんというか身振り手振りなどが激しい人であった。
 悪い言い方かもしれないが、演技っぽい人だったのだ。とはいえ、私に対しても敵意などは見せて来なかったし、少なくともディトナス様のように体裁も保てないような人ではなさそうである。

「僕がやってみましょうか……イフェネア姉上、相手役をお願いします」
「え? ああ、構わないわよ?」
「イフェネア嬢、どうもこんにちは。今日は良い天気ですね。こんな日はどこかに出掛けたくなります」
「あ、ええ、そうね……」

 オルディアお兄様が、レフティス様の所作というものを実践してくれた。
 それによって、周囲の空気は少し固まった。その大袈裟な言動に、皆驚いているようだ。

 エフェリアお姉様達の反応からもわかっていたことではあるが、やはり彼の動きというものは特殊なものだったようである。
 私は貴族のことをよく知らないため、あれが一般的なのかとも思っていたが、貴族としても特殊なのが、レフティス様という人らしい。
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