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30.ムキになって
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「……僕としたことが」
ウェリダンお兄様は、いつも通りの笑みを浮かべていた。
ただそれは恐らく、誤魔化しの笑みだ。お兄様はきっと、今まで自分が喋っていたことが失言だと思っているのだろう。
「変なことを話してしまいましたね。申し訳ありません」
「……変なんてことはありませんよ。ウェリダンお兄様にも色々なことがあったとわかりましたから」
「……そうですか」
ウェリダンお兄様は、少し気まずそうにしていた。
その気まずさというものに対して、私はどうするべきか悩む。今のウェリダンお兄様に、私がかけるべき言葉とは一体何なのか、それがすぐには出て来なかったのだ。
いや、正確には少し違うのかもしれない。私には言いたいことがある。だけど、それを言っていいのかどうか、一瞬迷ってしまったのだ。
ただ答えはすぐに出た。このままウェリダンお兄様のことを放っておくことが、良いことだとは思えない。だって話している時のウェリダンお兄様は、辛そうだったから。
「……けれど、このままではいけないと思います」
「……おや、それはどういうことでしょうか?」
「ウェリダンお兄様は、他人にわかってもらえなくても良いなんて、本当は思っていないからです」
「何を言うかと思ったら、そのようなことですか。クラリアなら、僕のことをわかってくれると思っていたのですが……」
「そうやってムキになっているのが、何よりの証拠ではありませんか」
「ムキに? 僕がいつムキになったと……」
私の指摘に、ウェリダンお兄様は固まっていた。
自分でも気付いたのだろう。私の指摘に対して、語気を強めて反論しているということに。
本当に何も思っていないのなら、笑って受け流すことだってできたはずだ。それをしなかったということは、図星だったということである。
「……あの、ウェリダンお兄様?」
そんなことを考えながら、私はウェリダンお兄様に声をかけた。
彼は固まったまま、まったく動かなくなっている。それがあまりにも長い時間であったため、少し心配になってきたのだ。
私は、言い過ぎてしまったのだろうか。だとしたら、申し訳ない。ウェリダンお兄様のことを、傷つけたい訳ではなかったのだが。
「……すまない」
「え?」
「クラリア、すまない。僕はなんと愚かなことを……自分の不出来を妹にぶつけるなど、僕はなんて馬鹿なことをっ!」
「ウェ、ウェリダンお兄様?」
ウェリダンお兄様は、心配していた私に駆け寄って来た。
どうやら、私に対して少し語気を強めたことを気にしているらしい。
しかしそれは、仕方ないことである。私もウェリダンお兄様を怒らせるような言葉を発していたという自覚はある。
ただ、今重要なのはどちらが悪かったかとか、そういった話ではないだろう。
私に駆け寄って来たウェリダンお兄様の表情を見て、私はそう思った。今の彼は、いつもの不気味な笑みとは違った表情をしているのだ。
ウェリダンお兄様は、いつも通りの笑みを浮かべていた。
ただそれは恐らく、誤魔化しの笑みだ。お兄様はきっと、今まで自分が喋っていたことが失言だと思っているのだろう。
「変なことを話してしまいましたね。申し訳ありません」
「……変なんてことはありませんよ。ウェリダンお兄様にも色々なことがあったとわかりましたから」
「……そうですか」
ウェリダンお兄様は、少し気まずそうにしていた。
その気まずさというものに対して、私はどうするべきか悩む。今のウェリダンお兄様に、私がかけるべき言葉とは一体何なのか、それがすぐには出て来なかったのだ。
いや、正確には少し違うのかもしれない。私には言いたいことがある。だけど、それを言っていいのかどうか、一瞬迷ってしまったのだ。
ただ答えはすぐに出た。このままウェリダンお兄様のことを放っておくことが、良いことだとは思えない。だって話している時のウェリダンお兄様は、辛そうだったから。
「……けれど、このままではいけないと思います」
「……おや、それはどういうことでしょうか?」
「ウェリダンお兄様は、他人にわかってもらえなくても良いなんて、本当は思っていないからです」
「何を言うかと思ったら、そのようなことですか。クラリアなら、僕のことをわかってくれると思っていたのですが……」
「そうやってムキになっているのが、何よりの証拠ではありませんか」
「ムキに? 僕がいつムキになったと……」
私の指摘に、ウェリダンお兄様は固まっていた。
自分でも気付いたのだろう。私の指摘に対して、語気を強めて反論しているということに。
本当に何も思っていないのなら、笑って受け流すことだってできたはずだ。それをしなかったということは、図星だったということである。
「……あの、ウェリダンお兄様?」
そんなことを考えながら、私はウェリダンお兄様に声をかけた。
彼は固まったまま、まったく動かなくなっている。それがあまりにも長い時間であったため、少し心配になってきたのだ。
私は、言い過ぎてしまったのだろうか。だとしたら、申し訳ない。ウェリダンお兄様のことを、傷つけたい訳ではなかったのだが。
「……すまない」
「え?」
「クラリア、すまない。僕はなんと愚かなことを……自分の不出来を妹にぶつけるなど、僕はなんて馬鹿なことをっ!」
「ウェ、ウェリダンお兄様?」
ウェリダンお兄様は、心配していた私に駆け寄って来た。
どうやら、私に対して少し語気を強めたことを気にしているらしい。
しかしそれは、仕方ないことである。私もウェリダンお兄様を怒らせるような言葉を発していたという自覚はある。
ただ、今重要なのはどちらが悪かったかとか、そういった話ではないだろう。
私に駆け寄って来たウェリダンお兄様の表情を見て、私はそう思った。今の彼は、いつもの不気味な笑みとは違った表情をしているのだ。
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