妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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31.不適格な器(アドルグside)

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「私もドルートン伯爵も、被害者なのです! 娘達は愚かなことをしました! 申し訳ありません!」

 アドルグの目の前で、カラスタ子爵は地に頭をつけて謝ってきた。
 それにロヴェリオが困惑しているのを横目で見ながら、アドルグは自分と倍以上年が離れた子爵を見下ろす。
 そうやって見下ろしてみても、彼にはまったく持って理解することができなかった。自分よりも立場が弱い者を虐げることの何が楽しいのかが。

「カラスタ子爵の言う通りです。私達は、きちんとした教育を施してきたつもりです」
「お、お父様、何を……」
「しかし、この娘達は期待を裏切りました。正直頭を抱えています。こんな出来の悪い娘を持つことになるなんて、思ってもいませんでしたから」

 アドルグが二人の令嬢の行いについて考えていると、横からドルートン伯爵が声をかけてきた。その言葉にアドルグは表情を歪める。ドルートン伯爵もカラスタ子爵も、自らの保身しか頭にないことが伝わってきたからだ。
 自らの父親に痛烈に批判されていることに、二人の令嬢はその表情を歪めている。それは自業自得ではあるのだが、それでもアドルグは彼女達に対して幾分か同情していた。二人の父親の言い分が、あまりにも醜いものだったかだ。

「ドルートン伯爵、それからカラスタ子爵、あなた方は何かを勘違いしているようだ」
「勘違い?」
「そ、それはどういうことですか?」
「当主というものは、責任を背負う立場です。家に属する者の行動の全てが、自分達に返って来るものだということをあなた達はわかっていない」

 ドルートン伯爵とカラスタ子爵は、貴族の当主としては不適格である。アドルグはそのような結論を出していた。
 二人の令嬢を家から追放することによって、今回の件を手打ちにする。その結論は変わっていない。しかしそれでも、アドルグは二家に対して指導をする必要があると感じていた。

「やり方などいくらでもあったということです。ご息女をきちんと教育する。教育できなかったのなら外に出さない。そんな風に対処することをあなた達はしなかった」
「そ、それは結果論というものです。今回の件は不測の事態で――」
「ご息女は以前も同じようなことをしたようではありませんか。その時点で、あなた方は対処するべきだったといえるでしょう。一つ忠告しておきましょうか。ヴェルード公爵家はあなた方に目を光らせていると」
「なっ……!」

 アドルグの言葉に、ドルートン伯爵とカラスタ子爵は顔を見合わせた。
 公爵家の監視があるという言葉には、効果があった。二人は派手に動くことができなくなるのだ。自らの行いを改めざるを得なくなる。改められなければ、家が追い詰められるからだ。
 それに焦っている二人を見てから、アドルグは娘達の方に視線を向けた。彼女達にも言わなければならないことがあると、彼は思っていたのだ。
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