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28.責任の所在(アドルグside)
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アドルグは、ドルートン伯爵とその娘であるペレティア、カラスタ子爵とその娘であるサナーシャとロヴェリオとともに対峙していた。
二人の令嬢は、アドルグのことを睨みつけている。ただその視線に力はない。流石に彼女達も、正式な公爵家の令息である自分には勝てないと思っていることを、アドルグは理解した。
その一方で、彼女達の父親はすっかり怯え切っていた。この国において、ヴェルード公爵家の影響力は多大だ。その機嫌を損ねているという現状が、二人はよくわかっているようだ。
「アドルグ様、これは一体どういうことなのでしょうか?」
「……ペレティア嬢、質問の意図が計りかねる。あなたは俺に何を聞きたいのだ?」
「どうしてあなたが、ここを訪ねて来たのかを聞きたいのです。私達が一体、何をしたというのですか?」
「まさかわかっていない訳でもあるまい。俺の妹をあなた達は侮辱したのだからな」
アドルグがそれぞれを睨みつけると、サナーシャは震えて、ペレティアはその表情を歪めた。
クラリアから、二人の令嬢の様子はアドルグも聞いている。そのことからも予想していたが、彼は改めて主導権を握っているのはペレティアであると気付いた。
家同士の力関係的にも、それは特におかしくはないことだ。それを認識しながらアドルグは、ドルートン伯爵の方に目を向けた。
「ドルートン伯爵、あなたにお聞きしたいことがあります」
「な、なんでしょうか?」
「ご息女は、前々から少々お転婆な所があったと聞いています。以前にも同じようなことをしたそうですね。その時あなたは、何も注意しなかったということでしょうか?」
「ま、まさか、きちんと注意しましたとも」
アドルグには、ドルートン伯爵が嘘をついていることはすぐにわかった。
彼の目は泳いでいる。それは明らかに、やましいことがある時の動きだ。
故にアドルグは、父親の性根まで捻じ曲がっていることを認識した。そもそもの発端が、目の前の伯爵であることは明白だったのだ。
「カラスタ子爵、あなたにもお聞きしておきましょうか?」
「わ、私は別に……す、全ては娘の責任です」
「お、お父様……」
次に目を向けたカラスタ子爵は、娘と同じようにその体を震わせた。
それに血の繋がりを感じながらも、アドルグは忌々しく思った。子爵がその責務から逃げて、娘に責任を押し付けようとしているからだ。
二人の令嬢の行いは、許されるものではない。それに対する罰を、アドルグは与えるつもりだ。
ただ、その責任の全てが二人にあるとは彼も思っていない。二人の父親と話したことによって、アドルグはそれをより濃く認識している。
その点において、つい先日失望した両親に対して彼は少し敬意を取り戻した。駄目な所はあったが、それでも二人の精神は気高きものだと、アドルグは思い返したのである。
二人の令嬢は、アドルグのことを睨みつけている。ただその視線に力はない。流石に彼女達も、正式な公爵家の令息である自分には勝てないと思っていることを、アドルグは理解した。
その一方で、彼女達の父親はすっかり怯え切っていた。この国において、ヴェルード公爵家の影響力は多大だ。その機嫌を損ねているという現状が、二人はよくわかっているようだ。
「アドルグ様、これは一体どういうことなのでしょうか?」
「……ペレティア嬢、質問の意図が計りかねる。あなたは俺に何を聞きたいのだ?」
「どうしてあなたが、ここを訪ねて来たのかを聞きたいのです。私達が一体、何をしたというのですか?」
「まさかわかっていない訳でもあるまい。俺の妹をあなた達は侮辱したのだからな」
アドルグがそれぞれを睨みつけると、サナーシャは震えて、ペレティアはその表情を歪めた。
クラリアから、二人の令嬢の様子はアドルグも聞いている。そのことからも予想していたが、彼は改めて主導権を握っているのはペレティアであると気付いた。
家同士の力関係的にも、それは特におかしくはないことだ。それを認識しながらアドルグは、ドルートン伯爵の方に目を向けた。
「ドルートン伯爵、あなたにお聞きしたいことがあります」
「な、なんでしょうか?」
「ご息女は、前々から少々お転婆な所があったと聞いています。以前にも同じようなことをしたそうですね。その時あなたは、何も注意しなかったということでしょうか?」
「ま、まさか、きちんと注意しましたとも」
アドルグには、ドルートン伯爵が嘘をついていることはすぐにわかった。
彼の目は泳いでいる。それは明らかに、やましいことがある時の動きだ。
故にアドルグは、父親の性根まで捻じ曲がっていることを認識した。そもそもの発端が、目の前の伯爵であることは明白だったのだ。
「カラスタ子爵、あなたにもお聞きしておきましょうか?」
「わ、私は別に……す、全ては娘の責任です」
「お、お父様……」
次に目を向けたカラスタ子爵は、娘と同じようにその体を震わせた。
それに血の繋がりを感じながらも、アドルグは忌々しく思った。子爵がその責務から逃げて、娘に責任を押し付けようとしているからだ。
二人の令嬢の行いは、許されるものではない。それに対する罰を、アドルグは与えるつもりだ。
ただ、その責任の全てが二人にあるとは彼も思っていない。二人の父親と話したことによって、アドルグはそれをより濃く認識している。
その点において、つい先日失望した両親に対して彼は少し敬意を取り戻した。駄目な所はあったが、それでも二人の精神は気高きものだと、アドルグは思い返したのである。
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