妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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23.年齢差を聞いて

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「おやおや、これはこれは……」
「あ、ウェリダンお兄様……」
「げ……」

 私とロヴェリオ殿下が中庭で話していると、そこにウェリダンお兄様がやって来た。
 その顔を見て、ロヴェリオ殿下は少し嫌そうにする。ウェリダンお兄様との間に、何かあったのだろうか。

「ロヴェリオ殿下、人の顔を見てげは、ないのではありませんか?」
「いや、だってウェリダン様はちょっと気味が悪いし……」
「……気持ちがわからない訳では、ないのですが」

 私が小声で一応注意してみると、ロヴェリオ殿下は納得できなくもない理由を返してきた。
 ウェリダンお兄様の笑顔は、ちょっと不気味である。エフェリアお姉様やオルディアお兄様も、それには同意してくれた。
 ただだからといって、人の顔を見て露骨に嫌そうにするのは駄目だと思う。ウェリダンお兄様は、お優しい人ではあるし。

「……おやおや、僕はお邪魔虫でしたか、ロヴェリオ殿下」
「え? あ、いや、そういう訳ではありませんけど……そうだった。ウェリダン様、クラリアを虐めていた二人の令嬢の件ですけど」
「ああ、その時クラリアを助けていただいたのですね。感謝します」
「その二人に対して、過度な罰を与えようとしていますよね。それを取りやめていただけませんか?」

 ロヴェリオ殿下は、ハキハキと自分の意見を述べていた。
 それにウェリダンお兄様は、不気味な笑みを浮かべている。基本的に、彼の感情は全てその笑みで表されるため、何を考えているのかは不明だ。

「ロヴェリオ殿下は、まだまだお若いですからね。大人の考えというものは、理解できないということですか……」
「六歳しか違わないから、ウェリダン様だってまだ大人とは言えないんじゃないですか?」
「え? 六歳?」
「クラリア? どうかしましたか?」

 ウェリダンお兄様と自分の年齢差を聞いて、私は思わず声を出してしまった。
 てっきり、ウェリダンお兄様は二十代半ばとかだと思っていたからだ。でも考えてみれば当然である。だってウェリダンお兄様は、イフェネアお姉様の弟である訳だし、少なくともお姉様よりは年下なのだから。

「クラリアだって失礼じゃないか」
「あ、いや、だってウェリダンお兄様って大人っぽいですし……」
「まあ、気持ちはわからない訳ではないが……」

 今度はロヴェリオ殿下に小声で注意されてしまった。
 でも、これに関しては仕方ないことだと思う。だって私は、六年後にウェリダンお兄様のようになれるとは思えないからだ。
 ただそう考えると、八年後にイフェネアお姉様のようになれる自信もない。どうやら私は、大人になるまでもう少し時間が必要なようだ。
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