上 下
18 / 100

18.最初に破ったのは

しおりを挟む
「実の所、私達はクラリアにあまり近づかない方がいいんじゃないかって、話し合っていたんだよね……」
「え?」
「まあ、クラリアのことを嫌っている人なんていなかったけれど、やっぱりいきなりぐいぐい行くのもどうなのかと思ってね。とりあえず距離感を計ろうとしていたのさ」

 エフェリアお姉様やオルディアお兄様から聞くそれは、初めて聞くことだった。
 お兄様方やイフェネアお姉様は、そのようなことを言っていなかった。秘密の話し合いがなされていたということだろうか。

「それが解かれたのは、つい最近のことなんだよね。というか、今朝のことっていうか」
「アドルグ兄上が言い出したんだ。もうそろそろ、その必要はないんじゃないかって」
「……アドルグお兄様が、今朝そのようなことを言い出したんですか?」
「うん?」
「どうかしたのかな、クラリア」

 二人の言葉に、私は思い出していた。
 アドルグお兄様の本心を、いつ聞いたのかということを。
 それは今から数日前に遡る舞踏会での出来事だ。つまり、ヴェルード公爵家の長兄であるアドルグお兄様は、一番に兄弟の取り決めを破った、ということだろうか。

「……もしかして、アドルグお兄様?」
「……だろうね」
「ええ……本当に? 言い出しっぺなのに?」

 私の表情によって、アドルグお兄様の悪行がばれてしまった。それについては、アドルグお兄様に申し訳ない。
 でも、アドルグお兄様も悪いと思う。どうして言い出しっぺなのに、最初に約束を破ってしまったのだろうか。いや、私としてはありがたかったのですが。

「あ、そうだ。ペレティア・ドルートン伯爵令嬢とサナーシャ・カラスタ子爵令嬢」
「ああ、アドルグ兄上がなんか言っていたね」
「許せないよね、なんかクラリアにひどいことしたんでしょう? 悪口言ったとかだっけ?」
「うん。まあ、社会的に追い詰めるべきなんじゃない? ヴェルード公爵家としても、そんなこと言われて黙ってはいられないだろうし」
「それで反省してくれるといいけどね」

 アドルグお兄様との話を思い出したのか、エフェリアお姉様やオルディアお兄様は例の二人の令嬢のことを話し始めた。
 ただ、その内容は随分と穏やかである。他のお兄様方などと比べると、とても軽い。
 だが、これに関してはエフェリアお姉様とオルディアお兄様くらいが丁度良いといえるだろう。他の三人は、いくらなんでも過激すぎるのだ。

「あれ? でもこの状況って……」
「……ああ、まずいかもしれないね」
「クラリア、もしかして……」
「あ、はい。多分、そのもしかしてです……あの、結構まずい感じですか?」

 私が考えていたことに、二人は思い当たったらしい。
 そこで二人は、その表情を変えた。どうやら事態は、私が思っていたよりも深刻なものであるらしい。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓
恋愛
 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。  異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。  そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。 「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」  そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。 「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」  飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。  これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

処理中です...