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18.最初に破ったのは
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「実の所、私達はクラリアにあまり近づかない方がいいんじゃないかって、話し合っていたんだよね……」
「え?」
「まあ、クラリアのことを嫌っている人なんていなかったけれど、やっぱりいきなりぐいぐい行くのもどうなのかと思ってね。とりあえず距離感を計ろうとしていたのさ」
エフェリアお姉様やオルディアお兄様から聞くそれは、初めて聞くことだった。
お兄様方やイフェネアお姉様は、そのようなことを言っていなかった。秘密の話し合いがなされていたということだろうか。
「それが解かれたのは、つい最近のことなんだよね。というか、今朝のことっていうか」
「アドルグ兄上が言い出したんだ。もうそろそろ、その必要はないんじゃないかって」
「……アドルグお兄様が、今朝そのようなことを言い出したんですか?」
「うん?」
「どうかしたのかな、クラリア」
二人の言葉に、私は思い出していた。
アドルグお兄様の本心を、いつ聞いたのかということを。
それは今から数日前に遡る舞踏会での出来事だ。つまり、ヴェルード公爵家の長兄であるアドルグお兄様は、一番に兄弟の取り決めを破った、ということだろうか。
「……もしかして、アドルグお兄様?」
「……だろうね」
「ええ……本当に? 言い出しっぺなのに?」
私の表情によって、アドルグお兄様の悪行がばれてしまった。それについては、アドルグお兄様に申し訳ない。
でも、アドルグお兄様も悪いと思う。どうして言い出しっぺなのに、最初に約束を破ってしまったのだろうか。いや、私としてはありがたかったのですが。
「あ、そうだ。ペレティア・ドルートン伯爵令嬢とサナーシャ・カラスタ子爵令嬢」
「ああ、アドルグ兄上がなんか言っていたね」
「許せないよね、なんかクラリアにひどいことしたんでしょう? 悪口言ったとかだっけ?」
「うん。まあ、社会的に追い詰めるべきなんじゃない? ヴェルード公爵家としても、そんなこと言われて黙ってはいられないだろうし」
「それで反省してくれるといいけどね」
アドルグお兄様との話を思い出したのか、エフェリアお姉様やオルディアお兄様は例の二人の令嬢のことを話し始めた。
ただ、その内容は随分と穏やかである。他のお兄様方などと比べると、とても軽い。
だが、これに関してはエフェリアお姉様とオルディアお兄様くらいが丁度良いといえるだろう。他の三人は、いくらなんでも過激すぎるのだ。
「あれ? でもこの状況って……」
「……ああ、まずいかもしれないね」
「クラリア、もしかして……」
「あ、はい。多分、そのもしかしてです……あの、結構まずい感じですか?」
私が考えていたことに、二人は思い当たったらしい。
そこで二人は、その表情を変えた。どうやら事態は、私が思っていたよりも深刻なものであるらしい。
「え?」
「まあ、クラリアのことを嫌っている人なんていなかったけれど、やっぱりいきなりぐいぐい行くのもどうなのかと思ってね。とりあえず距離感を計ろうとしていたのさ」
エフェリアお姉様やオルディアお兄様から聞くそれは、初めて聞くことだった。
お兄様方やイフェネアお姉様は、そのようなことを言っていなかった。秘密の話し合いがなされていたということだろうか。
「それが解かれたのは、つい最近のことなんだよね。というか、今朝のことっていうか」
「アドルグ兄上が言い出したんだ。もうそろそろ、その必要はないんじゃないかって」
「……アドルグお兄様が、今朝そのようなことを言い出したんですか?」
「うん?」
「どうかしたのかな、クラリア」
二人の言葉に、私は思い出していた。
アドルグお兄様の本心を、いつ聞いたのかということを。
それは今から数日前に遡る舞踏会での出来事だ。つまり、ヴェルード公爵家の長兄であるアドルグお兄様は、一番に兄弟の取り決めを破った、ということだろうか。
「……もしかして、アドルグお兄様?」
「……だろうね」
「ええ……本当に? 言い出しっぺなのに?」
私の表情によって、アドルグお兄様の悪行がばれてしまった。それについては、アドルグお兄様に申し訳ない。
でも、アドルグお兄様も悪いと思う。どうして言い出しっぺなのに、最初に約束を破ってしまったのだろうか。いや、私としてはありがたかったのですが。
「あ、そうだ。ペレティア・ドルートン伯爵令嬢とサナーシャ・カラスタ子爵令嬢」
「ああ、アドルグ兄上がなんか言っていたね」
「許せないよね、なんかクラリアにひどいことしたんでしょう? 悪口言ったとかだっけ?」
「うん。まあ、社会的に追い詰めるべきなんじゃない? ヴェルード公爵家としても、そんなこと言われて黙ってはいられないだろうし」
「それで反省してくれるといいけどね」
アドルグお兄様との話を思い出したのか、エフェリアお姉様やオルディアお兄様は例の二人の令嬢のことを話し始めた。
ただ、その内容は随分と穏やかである。他のお兄様方などと比べると、とても軽い。
だが、これに関してはエフェリアお姉様とオルディアお兄様くらいが丁度良いといえるだろう。他の三人は、いくらなんでも過激すぎるのだ。
「あれ? でもこの状況って……」
「……ああ、まずいかもしれないね」
「クラリア、もしかして……」
「あ、はい。多分、そのもしかしてです……あの、結構まずい感じですか?」
私が考えていたことに、二人は思い当たったらしい。
そこで二人は、その表情を変えた。どうやら事態は、私が思っていたよりも深刻なものであるらしい。
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