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3.できないこと
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「災難でしたね。大丈夫ですか?」
「あ、ええ、お陰様で。助けていただきありがとうございます、ルナーラ様」
「私は当然のことをしたまでです。ああいう輩は気に食わない」
ルナーラ様は、ドアの方を見つめていた。
二人の令嬢は、既にいなくなっている。多分、あのまま帰ったのだろう。また問い詰められることはなさそうだ。
「とはいえ、私の助けなんてなくても、あなたはあの場を切り抜けられたのでしょうけれどね」
「え? そ、そうでしょうか?」
「あなたの魔法使いとしての力は、頭一つ抜けている。それは誰もが、わかっていることでしょう。あの二人くらい、指一本でも動かせれば消し炭にできたはずです」
そこで私は、少し面食らってしまった。
ルナーラ様が言っていることが、あまりにも物騒だったからだ。
そもそもそんなことは流石にできないし、仮にできたとしてもやる訳がない。色々と問題があり過ぎる。
「まあ、そんなことはしませんよ。流石に冗談です」
「じょ、冗談でしたか……」
「もっとも、あなたがその気になれば、本当にこの国一つくらいは滅ぼせるのでしょうけれどね」
「いえ、そんなことは無理ですよ」
ルナーラ様は、私の力を過信しているようだった。
確かに私は、この国でも有数の魔法使いではあるだろうが、一国を覆せる程ではないだろう。多勢に無勢で勝てる程、私は自分の力に自信を持つことはできない。
「ルナメリア様やルナーラ様もいる訳ですし……」
「母はともかく、私などは大したことはありません。あなたの足元にも及ばない」
「ルナーラ様は他の方よりも優れた魔法使いでした。私にはそれがわかります」
聖女の最終選考まで残ったのは、五人である。その中でも、私が頭一つ抜けていたのは、紛れもない事実である。
ただ、ルナーラ様とその他の候補者との間にもかなりの差はあったと思う。そこにも大きな壁があるのだ。
「まあ、褒めていただけるのは嬉しく思います。しかし私も、結局の所敗者でしかありません。これからのあなたの活躍をご期待しますよ」
「あっ……待ってください」
ルナーラ様は、私に背を向けた。
私の言葉が不快だったのだろうか。上から目線は良くなかったのかもしれない。
ただ、私は彼女を引き止めなければならなかった。一つだけ、聞いておきたいことがあったからだ。他に誰に聞いていいのかもわからないし、とりあえず友好的な彼女に尋ねておきたい。
「どうかしましたか?」
「えっと、王都に安い宿などはありますか?」
「安い宿?」
「一週間後に王城に来るように言われたのですが、故郷の村は遠いですから、泊まる所を探しているんです。恥ずかしながら、そこまで持ち合わせてもいないので、安い宿などはないかと思いまして」
このようなことを聞くのは、正直恥ずかしいものである。
しかしこれは、聞いておかなければならないことだ。流石に故郷に帰ってもう一度来るなんてことはできないし。
「……その旨は、他に誰かに伝えましたか?」
「え? ええ、メイドさんとかに聞いてみましたが」
「まさか……」
そこでルナーラ様は、その目を丸めていた。
何か驚くようなことが、あるのだろうか。私は思わず、首を傾げるのだった。
「あ、ええ、お陰様で。助けていただきありがとうございます、ルナーラ様」
「私は当然のことをしたまでです。ああいう輩は気に食わない」
ルナーラ様は、ドアの方を見つめていた。
二人の令嬢は、既にいなくなっている。多分、あのまま帰ったのだろう。また問い詰められることはなさそうだ。
「とはいえ、私の助けなんてなくても、あなたはあの場を切り抜けられたのでしょうけれどね」
「え? そ、そうでしょうか?」
「あなたの魔法使いとしての力は、頭一つ抜けている。それは誰もが、わかっていることでしょう。あの二人くらい、指一本でも動かせれば消し炭にできたはずです」
そこで私は、少し面食らってしまった。
ルナーラ様が言っていることが、あまりにも物騒だったからだ。
そもそもそんなことは流石にできないし、仮にできたとしてもやる訳がない。色々と問題があり過ぎる。
「まあ、そんなことはしませんよ。流石に冗談です」
「じょ、冗談でしたか……」
「もっとも、あなたがその気になれば、本当にこの国一つくらいは滅ぼせるのでしょうけれどね」
「いえ、そんなことは無理ですよ」
ルナーラ様は、私の力を過信しているようだった。
確かに私は、この国でも有数の魔法使いではあるだろうが、一国を覆せる程ではないだろう。多勢に無勢で勝てる程、私は自分の力に自信を持つことはできない。
「ルナメリア様やルナーラ様もいる訳ですし……」
「母はともかく、私などは大したことはありません。あなたの足元にも及ばない」
「ルナーラ様は他の方よりも優れた魔法使いでした。私にはそれがわかります」
聖女の最終選考まで残ったのは、五人である。その中でも、私が頭一つ抜けていたのは、紛れもない事実である。
ただ、ルナーラ様とその他の候補者との間にもかなりの差はあったと思う。そこにも大きな壁があるのだ。
「まあ、褒めていただけるのは嬉しく思います。しかし私も、結局の所敗者でしかありません。これからのあなたの活躍をご期待しますよ」
「あっ……待ってください」
ルナーラ様は、私に背を向けた。
私の言葉が不快だったのだろうか。上から目線は良くなかったのかもしれない。
ただ、私は彼女を引き止めなければならなかった。一つだけ、聞いておきたいことがあったからだ。他に誰に聞いていいのかもわからないし、とりあえず友好的な彼女に尋ねておきたい。
「どうかしましたか?」
「えっと、王都に安い宿などはありますか?」
「安い宿?」
「一週間後に王城に来るように言われたのですが、故郷の村は遠いですから、泊まる所を探しているんです。恥ずかしながら、そこまで持ち合わせてもいないので、安い宿などはないかと思いまして」
このようなことを聞くのは、正直恥ずかしいものである。
しかしこれは、聞いておかなければならないことだ。流石に故郷に帰ってもう一度来るなんてことはできないし。
「……その旨は、他に誰かに伝えましたか?」
「え? ええ、メイドさんとかに聞いてみましたが」
「まさか……」
そこでルナーラ様は、その目を丸めていた。
何か驚くようなことが、あるのだろうか。私は思わず、首を傾げるのだった。
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