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4.公爵家の屋敷

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 無事に聖女に選ばれた私は、何故かドルメア公爵家の屋敷の客室にいた。
 それは、ルナーラ様のご厚意によるものである。泊まる場所がないということで、招いてもらったのだ。
 当然のことながら、気は結構重い。公爵家の屋敷なんて、足を踏み入れるなんて初めてのことだ。粗相があってもいけないし、私は固まってしまっている。

「……失礼する」
「うん?」

 そんな客室に入って来たのは、一人の背の高い男性だった。
 その男性に、私は少し驚いてしまう。その人のことを、私はまったく知らないからだ。
 身なりからして、ルナーラ様のお兄様などだろうか。細いながらも、鍛え上げられていることが服の上からでもわかる。顔もどちらかというと怖い方ではあるし、私は今まで以上に委縮してしまう。

「あなたがフェルーナか?」
「あ、はい。そうですけれど、あなたは?」
「俺はラベルグ。一応、このドルメア公爵家の一員だ」
「一応?」
「俺はドルメア公爵の正式な息子ではない。妾との間にできた子だ。基本的には、この公爵家を継ぐ権利はない」
「妾の子、ですか……」

 ラベルグ様は、素早く自己紹介を始めた。
 その内容は、中々に重苦しいものである。妾の子、やはり貴族にはそういった子供もいるようだ。
 もちろん、平民の間でも浮気なんてものはあるけれど、貴族ともなると色々と大変なのだろうか。ラベルグ様の場合は、ルナーラ様にもしものことがあった時は、家を継ぐ立場になったりするのかもしれない。

「でも、そんなラベルグ様がどうしてこちらに?」
「それはルナーラ様が俺をここに呼んだからだ。その当の本人は、まだ来ていないようだがな」
「……お兄様、ルナーラ様はやめていただきたいと、何度も言っているでしょう」

 ラベルグ様の言葉のすぐ後に、客室のドアがゆっくりと開いた。
 すると見知った顔が部屋の中に入って来る。私はそれに、幾分か安心する。
 流石にラベルグ様と二人きりというのは緊張した。これで少しは、気も楽だ。いやもちろん、ルナーラ様に対しても緊張していないという訳でもないのだが。

「ルナーラ様、私は立場というものを弁えております。正当なる血筋のあなたに私が敬意を払うのは当然のこと」
「面倒くさいですね、お兄様は。もっと気楽でもいいと思うのですけれど」
「そういう訳にはいきません」

 ルナーラ様は、ラベルグ様の言葉にため息をついていた。
 どうやら彼は、結構な堅物であるらしい。それはなんとなくわかる。少し話しただけでも、伝わって来るくらいにラベルグ様は堅かった。
 しかしそんなお堅い彼が、何故ここに来たのかわからない。家族を紹介してくれるということなのだろうか。まあ私としても挨拶はしておかなければならないと思っていたので、丁度良いといえば良いのかもしれない。
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