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8.診断の結果
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「風邪ですね」
「風邪……?」
ベッドの上で寝転がっている私は、マルドラさんの言葉に驚くことになった。
自分が風邪を引いているなんて、思ってもいなかったことである。
ただ、言われてみれば体は妙に重いし、納得できない訳ではない。山登りが思った以上に厳しかったのも、風邪を引いていたせいということだろうか。
「まあ話を聞く限り、セレティナ様にも色々とあったようですから、原因はそれでしょうかね。心労が祟ったといいますか……」
「なるほど……」
「……セレティナ様、申し訳ありません。私も、もう少し早く気付くべきでした」
「いいえ、ヴェルゼス様は悪くありませんよ。大体、あなたはここまで私をちゃんと運んでくれたではありませんか」
マルドラさんの言葉を聞いて、ヴェルゼス様は申し訳なさそうにしていた。
しかし、別にこれに関して彼に悪い所は一つもない。むしろ私は、感謝しなければならないくらいである。ヴェルゼス様は、私を運んでくれた訳だし。
「マルドラさん、どうすればいいのですか?」
「安静にしていれば、大丈夫ですよ。念のため、風邪薬などを処方しておきましょう」
「ここには、薬も置いてあるんですか?」
「ええ、ヴェルゼス様達オフェリル侯爵家のお陰です」
「いえ、私は何もしてはいませんが……」
聞いていた話ではあるが、オフェリル侯爵家はかなり手厚い支援をしているようだ。
ヴェルゼス様のお祖父様は、そんなにここの長であるジオンド老師と親しいのだろうか。
そう思った私は、大切なことを思い出す。そのジオンド老師に、挨拶をしなければならないのである。
「あの、ジオンド老師には挨拶をしておいた方がよろしいですよね? もうこうしてお世話になっている訳ですし……」
「セレティナ様、その辺りのことはお気になさらないでください。私の方から話は通しておきます」
「ええ、ヴェルゼス様の言う通りです。セレティナ様は安静にしてください。老師はお優しい方ですから、そのくらいのことでは怒りませんからご安心を。それに老師もご高齢ですからね。風邪を移したりしたらいけない」
「ああ、言われてみればそうですよね。すみません」
マルドラさんの言葉に、私は自らの過ちを悟った。
この状態で挨拶をすると、老師の迷惑になる。そんな簡単なことまでわからなくなっているとは、私も相当疲労しているということだろうか。
これは言われた通り、しっかりと休むべきだ。まずは回復しなければ、話にならない。
「それに正直に言ってしまえば、セレティナ様のようなことは珍しいことではありません。ここに来る人達は皆過酷な道を歩んできますからね。多かれ少なかれ、休んでから挨拶するのが通例ですよ」
「そうですか……」
言いながらマルドラさんは、ヴェルゼス様に視線を向けた。
彼はまったく疲れていない。それが本来は、おかしいのかもしれない。
そう考えて、私は苦笑いを浮かべるのだった。
「風邪……?」
ベッドの上で寝転がっている私は、マルドラさんの言葉に驚くことになった。
自分が風邪を引いているなんて、思ってもいなかったことである。
ただ、言われてみれば体は妙に重いし、納得できない訳ではない。山登りが思った以上に厳しかったのも、風邪を引いていたせいということだろうか。
「まあ話を聞く限り、セレティナ様にも色々とあったようですから、原因はそれでしょうかね。心労が祟ったといいますか……」
「なるほど……」
「……セレティナ様、申し訳ありません。私も、もう少し早く気付くべきでした」
「いいえ、ヴェルゼス様は悪くありませんよ。大体、あなたはここまで私をちゃんと運んでくれたではありませんか」
マルドラさんの言葉を聞いて、ヴェルゼス様は申し訳なさそうにしていた。
しかし、別にこれに関して彼に悪い所は一つもない。むしろ私は、感謝しなければならないくらいである。ヴェルゼス様は、私を運んでくれた訳だし。
「マルドラさん、どうすればいいのですか?」
「安静にしていれば、大丈夫ですよ。念のため、風邪薬などを処方しておきましょう」
「ここには、薬も置いてあるんですか?」
「ええ、ヴェルゼス様達オフェリル侯爵家のお陰です」
「いえ、私は何もしてはいませんが……」
聞いていた話ではあるが、オフェリル侯爵家はかなり手厚い支援をしているようだ。
ヴェルゼス様のお祖父様は、そんなにここの長であるジオンド老師と親しいのだろうか。
そう思った私は、大切なことを思い出す。そのジオンド老師に、挨拶をしなければならないのである。
「あの、ジオンド老師には挨拶をしておいた方がよろしいですよね? もうこうしてお世話になっている訳ですし……」
「セレティナ様、その辺りのことはお気になさらないでください。私の方から話は通しておきます」
「ええ、ヴェルゼス様の言う通りです。セレティナ様は安静にしてください。老師はお優しい方ですから、そのくらいのことでは怒りませんからご安心を。それに老師もご高齢ですからね。風邪を移したりしたらいけない」
「ああ、言われてみればそうですよね。すみません」
マルドラさんの言葉に、私は自らの過ちを悟った。
この状態で挨拶をすると、老師の迷惑になる。そんな簡単なことまでわからなくなっているとは、私も相当疲労しているということだろうか。
これは言われた通り、しっかりと休むべきだ。まずは回復しなければ、話にならない。
「それに正直に言ってしまえば、セレティナ様のようなことは珍しいことではありません。ここに来る人達は皆過酷な道を歩んできますからね。多かれ少なかれ、休んでから挨拶するのが通例ですよ」
「そうですか……」
言いながらマルドラさんは、ヴェルゼス様に視線を向けた。
彼はまったく疲れていない。それが本来は、おかしいのかもしれない。
そう考えて、私は苦笑いを浮かべるのだった。
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