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5.基礎体力の差

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「セレティナ様、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」

 シェリオル山には、整備された山道があった。
 この山が定期的に利用されているということは、間違いなさそうだ。
 その山の道中で、私は息を切らしていた。思っていた以上に、山登りは厳しかったのだ。

「ただまあ、山登りというものを舐めていましたね。もう少し簡単なものだと思っていました。坂が続くのですから、きついなんて想像できるはずだったというのに、間抜けでしたね」
「初めて山に登るというなら、そのようなものでしょう。恥じることではありません。少し休憩にしましょうか?」
「いえ、日が暮れる前に登りたいですから」

 私とヴェルゼス様は、なんとか野営をして一夜を過ごした。
 それから早朝にシェリオル山に向かい、なんとか正午くらいに山の入り口までやって来たのだ。
 ここに来るまでの過程で、体力をかなり消耗している。そのため、休みたいというのが正直な所だ。

 ただ、あまりうかうかとしていると日が暮れてしまい兼ねない。
 今休んだら、なんというかしばらく歩けなくなりそうだし、気力を振り絞って進んでおいた方がいいような気がする。

「ヴェルゼス様は、すごいですね。まったく持って、堪えていないようで……」
「私は鍛えていますから」
「そうですね。魔法使いとは思えないくらいに……」

 ヴェルゼス様は大きな体をしている。その体は筋肉に覆われており、見た目だけなら戦士と言っても過言ではない。
 根っからの魔法使いが、肉体を鍛えるというのは珍しいことだ。ただ鍛え抜いたその体は、こういった時に役に立つということだろうか。
 ヴェルゼス様は、そういった所に関してはとてもストイックだ。私も見習った方が、良いかもしれない。

 私は基本的に、魔法頼りである。身体能力を強化する魔法などがあるので、普段は困らないのだが、それに胡坐をかいていたことを思い知らされた。
 一夜を乗り越えるために、様々な魔法を使った結果、こうして素の体力が試されている。極限状態ではその差があるようだし、基礎体力はもっとつけておくべきだろう。

「……よかったら、私が背負っていきましょうか?」
「……はい?」
「セレティナ様の言うことはもっともです。このままだと、本当に日が暮れるかもしれない。それに山の天気は変わりやすいとも言います。雨でも降ったら、先には進めませんからね」

 ヴェルゼス様の提案に、私は固まっていた。
 流石にそこまでお世話になるのは悪い。それに恥ずかしい。そういったことと同時に、私を背負って山を登れるつもりである彼に、驚いたのだ。
 見習わなければならないとは思うが、彼のようになるのは無理なような気もする。それくらいヴェルゼス様は、規格外だった。
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