77 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【8】どーんとやってみよう! の結果 その1
しおりを挟む「おじさんも参加しようかね」
コウジがいきなりロケットランチャーを肩に担ぐとシオンが「もう馬鹿魔力」と言いながら自分も弓を引き絞る。マイアもまた「はいっ!」と拳と蹴りを繰り出した。
同時に勇者と三王子達の攻撃が再びだが、コウジと、そしてわかっていたかのようにジークの攻撃は、魔王の骨の身体へと向かわなかった。
骨のバイコーンにまたがった二騎のデュラハンへと。コウジのロケットランチャーの着弾とジークの聖剣を槍の形に変えた雷光が襲う。
乗っていた骨のバイコーンごと、デュラハンの姿が吹っ飛ぶ。結界の一つが崩れるが、すぐに四角錐が三角錐の形の結界となって骨の魔王を覆った。他の王子と魔法少女、勇者の攻撃は跳ね返される。
また一旦姿を消したデュラハン二騎も、一度死んだ不死の身であり、他の眷族三体からの魔力の供給があるのか、ゆらりと透ける蜃気楼のような姿が浮かびあがりすぐに復活し、結界は元の四角錐の形となる。
「どこを攻撃している?」と指摘するコンラッドにフィラースが「結界の一つは確かに一旦消えたな」とつぶやく。さすが勇者様はわかっている。「だが結界の一つを吹っ飛ばしても他の三つで補ううえに、すぐ復活する」とコウジは続ける。
「なら、四つすべての結界を同時に攻撃すればいいんですよ」とピート。うん、こちらも賢い。
「では、ピートとマイア嬢はケルベロスを、コンラッドとシオン嬢はデモン達を攻撃してくれ。私達は魔道士とデュラハンを受け持つ。
結界が途切れた瞬間に勇者は攻撃を」
ジークの言葉にみんながうなずき別れる。さて、魔道士とデュラハンを同時にぶち抜かないといけないか……とコウジは唇に指を当てて少し考えて「これでやってみるか」と出したのは。
黒光りする巨大砲だった。槍を構えるコンラッドとともに弓を構えたシオンが「やっぱり馬鹿魔力」とつぶやいている。後方で待機しているフィラースは「まだ実用化されていない兵器のはずだが」と瞳を輝かせている。
「ジーク、こいつにお前の魔力を注いでくれ。俺の魔力と一緒にぶっ放す」
「わかった」
ジークが剣の形のグラフマンデを槍の形に変えて、砲身がおかれている石の床に突き刺せば、地面より雷光がばりばりと砲身に伝わり中に満ちる。コウジは己の闇の魔力をジークの光の魔力と練り上げて、そして。
「さあっ! ドーンと行こうぜ!」
「それが合図!」とシオンが文句を言いながらも、弓を放ち、コンラッドが炎の槍をケルベロスにたたき込む。ピートとマイアは背中合わせの舞いで巨大なかまいたちの竜巻を発生させて、デモン達へと攻撃する。
そして、レールガンから発射された光と闇の魔力の螺旋は、魔道士をぶち抜き二体のデュラハンをバイコーンごと消滅させた。
結界が消滅し骨の魔王がむき出しとなる。そこにフィラースが聖剣を振りかぶり高く跳んだ。
光をまとった剣が魔王の身体脳天から真っ二つにする。そこだけは骨ではなく肉があった顔が二つに割れて、閃光によって燃えはがれて白いしゃれこうべとなった。
がらがらとくずれていく骨の身体。コウジはそれに魔王を倒したという実感があまりなかった。あっけないというより。
これは抜け殻だ……。
眷族を含めての骨の山がさらさらと砂のように崩れていくのに、そんな直感があった。自分達がいままで戦っていたのは、中身のない張りぼてであったのではないか? そんな……。
そして、砂となりさらには風にさらわれて消えた魔王の残骸のなか、半分だけのしゃれこうべ、そのぽっかり空いた闇の眼窩にコウジは目を向けた。
瞬間、意識が吸い込まれた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
もはや身体に染みついている硝煙と血の匂いと銃撃の音。ここは戦場だ。
見覚えのある白亜の大理石のホールに階段。ここは砂漠のあの国の独裁者が築いた官邸。通称大統領宮殿だ。
革命が成ったとき、この無駄に豪奢な建物も壊せ! という声が大きかった。前時代のものはすべて壊してしまえ! と。
しかし、砂漠の獅子と呼ばれた革命家は民衆にそれを禁じた。不満げな顔する彼らに革命家は言った。私は奴らと同じ略奪者になるつもりはないと。
革命家に告げられた者達はハッ! とした顔となった。それまでは独裁者の親族やその関係者、協力した者達にはなにをしてもよいという雰囲気だった。実際いくつかの暴力沙汰も起こっていた。
だが、革命家のこのひと言でそれは止んだ。独裁者はたしかに略奪者であった。国の財を私物化し、気に入らない者達は抹殺した。奴と同じ破壊者に自分達はならないと革命家の言葉に、人々は誓いを新たにする。
「私達が成し遂げるべきは破壊ではなく、これから新しい国を作っていくことだ」
革命家のこの呼びかけに、民衆は歓呼の声をあげた。あれはこの白亜の大統領宮殿のベランダからだった。独裁者は屋上のヘリポートから逃げた、その数時間後のことだ。
そして、大統領宮殿は大統領官邸としてそのまま使われた。宮殿を飾っていた豪奢な美術品や絵は競売にかけられて、新しい国を作る資金とされた。
豪奢な飾りは取り払われて、執務机に椅子だけとなった簡素な執務室の主人となったのは、臨時政府を経て正しい選挙の上で大統領となった、あの革命家だ。迷彩服を着ていた砂漠の獅子は、今度はスーツに身を包んで大統領の椅子に腰掛けた。
彼は次々に改革を行って国民だけでなく、世界の喝采を浴びた。独裁者と彼につながっていたグローバル企業が独占していた鉱山資源を国民へと等分に分配した。福祉を充実し教育にも力を入れた。宗教的な理由で女子の教育が遅れていたこの国で、その門戸を開き社会進出を促した。
すべてがうまく行っているように見えた。だが、それこそが小さくも資源豊かなこの国の利権を欲しがる大国や、大企業からすればよくないことだった。男が世界から支持され喝采され続けることも。
そのクーデターは突然に起こった。革命家である男が信頼していたはずの若い将校達の叛乱。なんの備えもない大統領府はすぐに軍に囲まれて踏み込まれた。
男は血だまりのなかに沈んでいた。執務机は最後の徹底抗戦のためのバリケードとして使われて、革張りの椅子もまた床に転がって。
そして、その向こうに逃げることなく戦った側近達の遺体とともに男の死体が、自動小銃の一斉射撃で蜂の巣となった姿で倒れている。
そんな姿になってもなお、銃を構えた兵士達は彼にしばらく近づくことが出来なかった。かつてはこの国の英雄とたたえた人物を。かの独裁者と同じように亡命することを拒んで、自ら銃を持って最後まで戦った、その苛烈さ故に。
彼は革命の志半ばにして、突如起こった軍のクーデターによって死んだ。
159
作者の新作情報はtwitterにてご確認ください
https://twitter.com/sima_yuki
『チンチラおじさん転生~ゲージと回し車は持参してきた!~』
ハズレ勇者のモップ頭王子×チンチラに異世界転生しちゃった英国紳士風おじさま。

【同一作者の作品】
【完結】婚約破棄の慰謝料は36回払いでどうだろうか?~悪役令息に幸せを~
【完結】断罪エンドを回避したら王の参謀で恋人になっていました
【完結】長い物語の終わりはハッピーエンドで
https://twitter.com/sima_yuki
『チンチラおじさん転生~ゲージと回し車は持参してきた!~』
ハズレ勇者のモップ頭王子×チンチラに異世界転生しちゃった英国紳士風おじさま。
【同一作者の作品】
【完結】婚約破棄の慰謝料は36回払いでどうだろうか?~悪役令息に幸せを~
【完結】断罪エンドを回避したら王の参謀で恋人になっていました
【完結】長い物語の終わりはハッピーエンドで
お気に入りに追加
1,096
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。


「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。