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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【8】どーんとやってみよう! の結果 その2

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 そして場は一転して、どこかの神殿。勇者として召喚された彼は、二十代前半の若さとなっていた。金髪に金色の瞳に褐色の肌の青年。
 空色のマントをなびかせて、銀の胸当て、腰には白い聖剣。

 え? とコウジは思う。違う……と。

 これは自分達がフィラースを召喚した場ではない、神殿は地上にあり、見た事も無い文様の装束をまとった神官らしき人物達が並び、さらにこの世界の神なのだろう、祭壇に大きく揺れる炎から声が響く。

「よく、我らが召喚に応じてくれた異世界の勇者よ」

 と。

 そこからはまるでゲームで散々みたような展開が続いた。勇者の旅の仲間となった双子の騎士に年寄りの賢者、言葉をしゃべる狼に三人の道化で盗賊達。彼らは遠い魔界を目指し旅をし、共に困難を乗り越えるうちに固い絆の仲間となった。

 そして魔王城にての最終決戦。フィラースは仲間とともに魔王を見事に打ち倒した。
 そして、彼は神から恩恵を受け元の世界へと帰るはずだった……。

 が。

 彼は唐突に思い出した。
 自分がどうして死んだのか……。

 若い姿で召喚された彼は、その記憶を“封印”されていた。
 そして魔王を倒した瞬間に、蓋が開くようになっていたのだ。

 勇者となる異世界の者はその“栄光”とともに“非業の死”を遂げたものでなければならない。
 その心に“光”と“闇”を内包しているものでなければ。

 光は魔王を倒す為に。
 そして闇は……。

 志半ばで死んだフィラースが感じていたのは怒りだった。自分は正しいと思っていた道を進んでいたはずだ。民衆はそれに歓呼し、世界もまた自分を支持した。大国や一部の権力者や企業には苦い顔をさせておけ! と。

 だが、それはもろくも崩れ去った。信頼していた仲間の裏切りによって。

 若き将校達が叛乱を起こしたのは宗教からだ。女子の解放に彼らは良い顔をしなかった。それもこの国の発展に必要だとフィラースはいつかわかってくれると思っていた。
 だが、その彼らもまた利用されていたのだ。フィラースの死後、若き将校達のクーデターは三日で、大国の支持を受けた穏健派の将軍の手によって鎮圧された。彼もまたフィラースの良き相談役だった……はずだ。

 その後も大統領となった彼は大国の支持を受け安定した長期政権を打ち立てた。ただし、それは女子の教育解放への門戸を閉ざし、鉱山資源もまた国際協力という名で元の大企業の独占状態へと戻った。
 表面上は民主主義だが、その内実は賄賂や不正が横行する腐った社会が実現した。フィラースは国の英雄として祭り上げられて広場に彫像まで建てられた。彼の死の真相をなにも知らない民衆は、形ばかりとなった革命記念日に熱狂して彼の名を讃える。

 己の死後まで見せられフィラースの心は堕ちていく。絶望に頭を抱え闇のもやに包まれていく勇者を、いままで彼を助けていた仲間達は冷静な目で見ていた。
 双子の騎士に老齢の賢者、人語を話す巨狼、三人の道化で盗賊達。彼らは口々に言った。

「これで我らの役目は終わった」
「新たなる“魔王”の覚醒まで、魔界はまた放浪し続ける」
「では“監視者”たる我らもまた解散ということで」

 魔王は堕ちた神。神であるならばその魂は不滅。ならば倒された魔王はどうなるのか? 
 それは魔王を倒した勇者の身体へと。自分の死の絶望を思い出した勇者の心は闇へと落とされて、堕ちた神たる魔王の魂に呑み込まれ、そして……。

 その身は暗黒の繭となって数百年の後に羽化して、新たな魔王となる。
 その繰り返しの世界。
 堕ちた神の遺棄された世界。

「待て! 私を最後まで見なくていいのか? “監視者”よ」

 闇に包まれていたはずの男はふらりと立ち上がった。その姿に“監視者達”は驚愕の目を見開く。「馬鹿な! 闇に取り込まれたのでは……」と老賢者が口を開く。

「もとから光と闇は私の中にあった。歴代の勇者達が教えてくれたよ。“仲間”に心を許すな……とね」

 光と闇を内包した異世界の勇者達。強い力を持つ彼らは魔王の魂に呑み込まれて消え去っていたのではなかった。その積み重なりが、フィラースの代となって、毎夜の彼が見る夢の警告となった。
 若い身体に封じ込められていた、彼の絶望の記憶も蘇らせていたのだ。

「怒りも裏切りも死も私は既に乗り越えた。そして、いまだ私は勇者のままでもあるぞ」

 普通は崩れ去り消滅するはずの魔王の遺体は未だ、勇者が槍の形に変えた聖剣によって玉座の後ろの壁に縫い止められていた。
 真白き光を帯びていたはずの槍に黒い闇のいなずまが瞬いて、その色が血の色へと変化する。魔王の身体も同時に骨のみのものへと。

「魔王の不死者アンデット化だと!」

 三人の道化で盗賊が驚愕の声をあげると、同時に彼らやその仲間達も、光と闇の入り交じったそれに包まれた。
 双子の騎士はその騎馬とともにデュラハンへと、賢者は闇のローブをまとった魔道士に、人語をしゃべる巨狼は、言葉を話せずただうなり声をあげるケルベロスへと。
 三人の道化で盗賊達は、三匹のデモンの姿へと変えられた。

 フィラースが魔に染まりながらも、勇者である以上彼らの仲間である絆は断たれない。その拘束を利用してフィラースは彼らを不死者として、己の槍に縫い付けられた魔王に縛り付けた。不死の魔王の眷族として。

「では、まずこの世界の“革命”から始めようか?」

 魔王……いや、魔勇者というべきか。フィラースはそう宣言した。





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