30 / 59
風紀委員長様は電話をかける(自室編)
しおりを挟む
寮に帰ってから、溜息を吐くこと数回……。
気が重いが……非常に気が重いが、面倒なことは先に片づけてしまおう。
俺はスマホを手に取り、二年ぶりに親父へと電話をかけた。
『――もしもし、玲……』
ブチッ!
しまった。声を聞いたら、つい反射的に切ってしまった。
いかんいかん、かけ直さないと……あ、速攻かかってきた。
「はい」
『……ああ、玲……、私の玲……ようやく声を聞かせてくれたね』
「……親父」
『親父? いま親父って言ったかい? ああ、なんてことだ。私の可愛い玲が、この二年ですっかり反抗期に……』
「ああ、すみません。ずっと【クソ親父】と脳内で罵倒していたもので、すっかり親父呼びが板についてしまいました」
『……まだ怒っているんだね。しかし電話をしてきたからには、なにかお願いごとがあるのだろう? 後生だから前のように【お父さん】と呼んでくれないか。そんな口汚い言葉は、私の玲には似合わない。悲しすぎて集中できずに、お願いごとも聞き漏らしてしまうかもしれない』
「……わかりましたよ。お父さん」
『玲! なんて素直なんだ』
「それで用件ですが……」
『切り替えが早すぎやしないか? ああ、夢にまでみた玲の生声がようやく聞けた。今日は仲直り記念日だね。カレンダーに花マルをつけてお……』
ブチッ!
……また切ってしまった。
ひと息つく暇も与えずに、またスマホが鳴る。
「……はい」
『すまない玲、真面目に話をきくから切らないでくれ』
「まったく、お父さんは相変わらずですね」
離れていれば、少しは子離れしてくれるかと期待したが、むしろ悪化していた。
「俺と仲直りしたければ、裏で瑞貴とやりとりしないでください」
『おや、ばれてしまったのか。玲に告げ口とは、あの子も辛抱が足りない』
「二年もこきつかえば充分でしょう。それに告げ口ではなく【報告】です。彼が悪く言われるのは不愉快です」
『そんなにあの子を気にいっているのか。……妬けるな。オモチャを取り上げてしまおうか』
「もう切ります」
『冗談だよ。わかった、わかった。瑞貴君を困らせていたのは、お父さんが悪かった。反省している。玲と話が出来て浮かれているんだ。これからは定期的に声を聞かせてほしい。それだけがお父さんの望みだよ』
「……はい」
久しぶりに聞く、包み込むような低く穏やかな声……。
昔から大好きだった声……。
海外で暮らしていた時も、この人は頻繁に訪れては、いつも俺のことを笑顔で見守ってくれていた。大事なものを失くしたときも、真っ先に駆けつけ抱きしめてくれた。
だからこそ、合格していた志望校を無理やり変えられた時は、怒りよりも戸惑いの方が大きかった。一番の味方だったはずなのに何故……、理由も話してもらえなかったのだ。納得できるわけが無かった。
しかし声を聞いているうちに、怒りで凝り固まっていた心が、次第にほぐれていくのがわかる。結局俺は、この人のことが好きなのだ。
それに入学してみれば、思っていたほど悪い高校ではなかった。変わり者は多いが、それなりに学園生活を楽しめている。
結果オーライという事で、もう意地を張るのは止めよう。瑞貴にこれ以上、迷惑をかけるわけにもいかないしな。
『学校はどうだい? 風紀委員長になったらしいが……心配だな。私としては、危険の少ない生徒会に入ってほしかったよ。玲なら軽くイケただろう?』
「兄さんと違って、俺は愛想が足りないですから無理ですよ。風紀の方が性に合います」
『そうか。くれぐれも無理はしないように……』
そのあとも父から質問攻めにあい、電話を切ったときには、思いのほか時間が経過していた。電話をかける前は憂鬱だったが、かけてしまえば、普通に話せて、心が軽くなっていた。
兄については……さてどうするか。
瑞貴のことだから上手く対処するだろうが……、よし決めた。
さっそく瑞貴へ電話をかける。
『もしもし』
「この先、兄さんからの連絡は着信拒否にしろ。電話もメールもだ。別ルートで連絡がきたら俺に知らせるように」
『……は?』
「おまえはもう兄と話すな、声を聞かせるな。わかったな? 返事は?」
『わ、わかりましたっ!』
「いい子だ。この通話が終わり次第設定しろ。なお、一分以内に設定しないと、そのスマホは自動的に爆発する」
『はああああ?』
「健闘を祈る」
さて……、やることやったし、風呂にでも入ってのんびりするか。
まさか瑞貴が、「あの人ならやりかねない!」と爆破解除に本気で焦っていたことなど、そのときの俺は知る由もない。
もちろん、次の日のおやつは抜きにされた。
……冗談の通じない奴め。
気が重いが……非常に気が重いが、面倒なことは先に片づけてしまおう。
俺はスマホを手に取り、二年ぶりに親父へと電話をかけた。
『――もしもし、玲……』
ブチッ!
しまった。声を聞いたら、つい反射的に切ってしまった。
いかんいかん、かけ直さないと……あ、速攻かかってきた。
「はい」
『……ああ、玲……、私の玲……ようやく声を聞かせてくれたね』
「……親父」
『親父? いま親父って言ったかい? ああ、なんてことだ。私の可愛い玲が、この二年ですっかり反抗期に……』
「ああ、すみません。ずっと【クソ親父】と脳内で罵倒していたもので、すっかり親父呼びが板についてしまいました」
『……まだ怒っているんだね。しかし電話をしてきたからには、なにかお願いごとがあるのだろう? 後生だから前のように【お父さん】と呼んでくれないか。そんな口汚い言葉は、私の玲には似合わない。悲しすぎて集中できずに、お願いごとも聞き漏らしてしまうかもしれない』
「……わかりましたよ。お父さん」
『玲! なんて素直なんだ』
「それで用件ですが……」
『切り替えが早すぎやしないか? ああ、夢にまでみた玲の生声がようやく聞けた。今日は仲直り記念日だね。カレンダーに花マルをつけてお……』
ブチッ!
……また切ってしまった。
ひと息つく暇も与えずに、またスマホが鳴る。
「……はい」
『すまない玲、真面目に話をきくから切らないでくれ』
「まったく、お父さんは相変わらずですね」
離れていれば、少しは子離れしてくれるかと期待したが、むしろ悪化していた。
「俺と仲直りしたければ、裏で瑞貴とやりとりしないでください」
『おや、ばれてしまったのか。玲に告げ口とは、あの子も辛抱が足りない』
「二年もこきつかえば充分でしょう。それに告げ口ではなく【報告】です。彼が悪く言われるのは不愉快です」
『そんなにあの子を気にいっているのか。……妬けるな。オモチャを取り上げてしまおうか』
「もう切ります」
『冗談だよ。わかった、わかった。瑞貴君を困らせていたのは、お父さんが悪かった。反省している。玲と話が出来て浮かれているんだ。これからは定期的に声を聞かせてほしい。それだけがお父さんの望みだよ』
「……はい」
久しぶりに聞く、包み込むような低く穏やかな声……。
昔から大好きだった声……。
海外で暮らしていた時も、この人は頻繁に訪れては、いつも俺のことを笑顔で見守ってくれていた。大事なものを失くしたときも、真っ先に駆けつけ抱きしめてくれた。
だからこそ、合格していた志望校を無理やり変えられた時は、怒りよりも戸惑いの方が大きかった。一番の味方だったはずなのに何故……、理由も話してもらえなかったのだ。納得できるわけが無かった。
しかし声を聞いているうちに、怒りで凝り固まっていた心が、次第にほぐれていくのがわかる。結局俺は、この人のことが好きなのだ。
それに入学してみれば、思っていたほど悪い高校ではなかった。変わり者は多いが、それなりに学園生活を楽しめている。
結果オーライという事で、もう意地を張るのは止めよう。瑞貴にこれ以上、迷惑をかけるわけにもいかないしな。
『学校はどうだい? 風紀委員長になったらしいが……心配だな。私としては、危険の少ない生徒会に入ってほしかったよ。玲なら軽くイケただろう?』
「兄さんと違って、俺は愛想が足りないですから無理ですよ。風紀の方が性に合います」
『そうか。くれぐれも無理はしないように……』
そのあとも父から質問攻めにあい、電話を切ったときには、思いのほか時間が経過していた。電話をかける前は憂鬱だったが、かけてしまえば、普通に話せて、心が軽くなっていた。
兄については……さてどうするか。
瑞貴のことだから上手く対処するだろうが……、よし決めた。
さっそく瑞貴へ電話をかける。
『もしもし』
「この先、兄さんからの連絡は着信拒否にしろ。電話もメールもだ。別ルートで連絡がきたら俺に知らせるように」
『……は?』
「おまえはもう兄と話すな、声を聞かせるな。わかったな? 返事は?」
『わ、わかりましたっ!』
「いい子だ。この通話が終わり次第設定しろ。なお、一分以内に設定しないと、そのスマホは自動的に爆発する」
『はああああ?』
「健闘を祈る」
さて……、やることやったし、風呂にでも入ってのんびりするか。
まさか瑞貴が、「あの人ならやりかねない!」と爆破解除に本気で焦っていたことなど、そのときの俺は知る由もない。
もちろん、次の日のおやつは抜きにされた。
……冗談の通じない奴め。
66
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる