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風紀委員長様は再び拾う(3―S教室編)
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朝っぱらから、また落し物を発見してしまった。
しかもSクラス……自分の教室内でだ。
薄い小冊子のようだ。
白い表紙だったため、パラパラとめくって中身を確認する。
(……なるほど)
これはたぶん、落とし主を聞きまわっても、誰も名乗らないだろう。
何故なら、毎度おなじみの同人誌だったからだ。
いかにも同性愛っぽいタイトルが、目次で羅列されていた。
このまま没収するしかないが、同じクラスの誰かの所持品かと思うと、やるせない気持ちになる。
頻繁に授業に出席している成果か、最近は同級生とも少しずつ打ち解けてきたように思う。その中にこの本の持ち主がいないことを祈る。趣味が合いそうにない。
「おはよう……なんだそれ?」
先にきていた如月が、目敏く見つけて尋ねてきた。
「おはよう。裏で流行っている同人誌だ。そこで拾った」
「ふうん。Sクラスでも、そんなの読んでる奴いるんだな」
「読んだことあるのか?」
「無い。どうせロクでもねえだろ」
眉をしかめている如月を横目に、俺は再度めくった。
どんなものでも拾ったからには、風紀委員として、ある程度見分しなければならない。
「熟読してんじゃねえよ」
冒頭ページだけ読んだところで、ヒョイっと如月に取り上げられた。
「なにをする」
「なにを読んでる」
「【如月会長と転校生が織りなす、ときめきシンデレラストーリー(番外編付き)】だ」
「――はあ? なんだそれ」
如月もペラペラとページをめくり始めたが、
「……勝手に実名使いやがって、気色悪い」
バサリと乱暴な音を立てて、すぐに本は戻ってきた。
「実際に転校生にキスをしたんだろう? ネタを提供したお前が悪い」
「あんなのキスの内に入るかよ。伊織たちへのちょっとした意趣返しに、胸倉掴んで一瞬触れた程度だぜ? ……こんなおぞましい物が、おまえの目に触れると分かっていれば、絶対にやらなかった。あの時の俺は寝不足でどうかしてたんだ」
いつも不敵なコイツにしては珍しく、相当後悔しているようだ。
まあ確かに、こんなものを友人に見られたら傷つくよな。これ以上苛めるのはやめよう。如月は、勝手に名前を使われた被害者のうちの一人だ。
「……なあ藤堂」
「なんだ?」
同人誌を机に仕舞って、隣の如月に目をやる。
落ち込んでいるのかと思いきや、片肘を付いてジッと観察するように見られていたから驚いた。
「やっぱりキスは、好きな相手としたいよな」
「……そうだな」
なんだこの会話は。
朝っぱらから濃すぎないか?
「だから楽しみにしてろよ」
「ん?」
「今度してやる」
……。
…………。
…………誰に?
「いや意味が分からない。おまえがキスするのを、何故俺が楽しみにしなければならないんだ。報告なんて必要ないぞ。どこでも好きにやれ」
おまえのキス自慢なんか、聞きたくもない。
「ふうん、好きにやっていいのか?」
「ああ」
「なら存分にさせてもらおう。言質は取ったからな」
「……あ? ああ」
会話が微妙に噛みあっていない気がするのは、気のせいだろうか。
背筋に悪寒が……これも気のせいか?
「……藤堂って天然だよな」
隣でぼそりと呟かれた声は、小さすぎて俺の耳へは届かなかった。
しかもSクラス……自分の教室内でだ。
薄い小冊子のようだ。
白い表紙だったため、パラパラとめくって中身を確認する。
(……なるほど)
これはたぶん、落とし主を聞きまわっても、誰も名乗らないだろう。
何故なら、毎度おなじみの同人誌だったからだ。
いかにも同性愛っぽいタイトルが、目次で羅列されていた。
このまま没収するしかないが、同じクラスの誰かの所持品かと思うと、やるせない気持ちになる。
頻繁に授業に出席している成果か、最近は同級生とも少しずつ打ち解けてきたように思う。その中にこの本の持ち主がいないことを祈る。趣味が合いそうにない。
「おはよう……なんだそれ?」
先にきていた如月が、目敏く見つけて尋ねてきた。
「おはよう。裏で流行っている同人誌だ。そこで拾った」
「ふうん。Sクラスでも、そんなの読んでる奴いるんだな」
「読んだことあるのか?」
「無い。どうせロクでもねえだろ」
眉をしかめている如月を横目に、俺は再度めくった。
どんなものでも拾ったからには、風紀委員として、ある程度見分しなければならない。
「熟読してんじゃねえよ」
冒頭ページだけ読んだところで、ヒョイっと如月に取り上げられた。
「なにをする」
「なにを読んでる」
「【如月会長と転校生が織りなす、ときめきシンデレラストーリー(番外編付き)】だ」
「――はあ? なんだそれ」
如月もペラペラとページをめくり始めたが、
「……勝手に実名使いやがって、気色悪い」
バサリと乱暴な音を立てて、すぐに本は戻ってきた。
「実際に転校生にキスをしたんだろう? ネタを提供したお前が悪い」
「あんなのキスの内に入るかよ。伊織たちへのちょっとした意趣返しに、胸倉掴んで一瞬触れた程度だぜ? ……こんなおぞましい物が、おまえの目に触れると分かっていれば、絶対にやらなかった。あの時の俺は寝不足でどうかしてたんだ」
いつも不敵なコイツにしては珍しく、相当後悔しているようだ。
まあ確かに、こんなものを友人に見られたら傷つくよな。これ以上苛めるのはやめよう。如月は、勝手に名前を使われた被害者のうちの一人だ。
「……なあ藤堂」
「なんだ?」
同人誌を机に仕舞って、隣の如月に目をやる。
落ち込んでいるのかと思いきや、片肘を付いてジッと観察するように見られていたから驚いた。
「やっぱりキスは、好きな相手としたいよな」
「……そうだな」
なんだこの会話は。
朝っぱらから濃すぎないか?
「だから楽しみにしてろよ」
「ん?」
「今度してやる」
……。
…………。
…………誰に?
「いや意味が分からない。おまえがキスするのを、何故俺が楽しみにしなければならないんだ。報告なんて必要ないぞ。どこでも好きにやれ」
おまえのキス自慢なんか、聞きたくもない。
「ふうん、好きにやっていいのか?」
「ああ」
「なら存分にさせてもらおう。言質は取ったからな」
「……あ? ああ」
会話が微妙に噛みあっていない気がするのは、気のせいだろうか。
背筋に悪寒が……これも気のせいか?
「……藤堂って天然だよな」
隣でぼそりと呟かれた声は、小さすぎて俺の耳へは届かなかった。
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