風紀委員長様は今日もお仕事

白光猫(しろみつにゃん)

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風紀委員長様は朝から後輩を呼び出す(放送室編)

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 ピンポンパンポン。

“お呼び出し致します。生徒会副会長の塚崎様、副会長の塚崎様。至急放送室までいらしてください。繰り返します……”

「……こっ、これでよろしかったでしょうか? 藤堂様」
「ああ、朝からすまなかった」

 若干こいつの声が震えていたようだが、違和感は無かっただろう。

「もう行っていいぞ。ここの鍵は俺が戻しておく」
「はい! 失礼します!」

 瑞貴に適当に放送委員を捕まえさせて、呼び出しの放送をかけてもらった。

 俺が教室や生徒会室へ直接乗り込んでも、うまく連れ出せるか分からないし、転校生や他の役員どもといった余計なオマケが付いてきても困る。
 用事があるのは副会長ひとりだけだ。この方法が手っ取り早いし、なにより俺が楽チンだ。
 一体どこのスタジオだ? ……と思うほどの大げさな機材を前にして、適当にボタンを押してみたい誘惑にかられたが、好奇心をグッと押さえて、椅子に寄りかかりながら塚崎が来るのを待った。

 コンコンコン。

 数分後に、部屋の扉が小さくノックされた。
 捕獲が成功したらしい。

「失礼しま……、えっ? 藤堂先輩?」

 俺と目が合った塚崎の瞳が、明らかに動揺で揺らめいた。

 さすがは【抱きたいランキング】一位だな。目の保養にはなる。
 俺は同性愛者ではないが、むさくるしい男と部屋にふたりきりは御免こうむる。どうせ相手にするなら、男でも美人がいい。

「おはよう。おまえを呼び出したのは俺だ。朝から手間をかけさせてすまない」
「……おはようございます。あなたが私を? 一体どういったご用件でしょうか? 私も暇ではないのですが……、それになぜ風紀委員会室ではないのです?」

 そんなに毛を逆立てて警戒しなくてもいいだろうに。
 出会った頃の瑞貴を思い出す。

 思い返してみれば、こいつと二人きりで会話することなどほとんどない。大抵は如月が矢面に立って口火を切り、こいつが脇から援護するというのがお決まりのパターンだものな。

 今日は守ってくれる如月はいないぞ? どうする?

「まずは座れ」
「……お断りします。用があるのなら早く言ってください。私にも都合というものが……」
「座れ。……何度も言わせるな」

 塚崎の肩がビクリと動いた。
 目をそらしたまま、不快そうに椅子に腰かける。

「……会長から何か聞いたのですか? 生徒会内部のことに風紀委員が口を出すのは越権行為ではないでしょうか」
「役員でもない生徒が、頻繁に生徒会室に出入りしていると耳にしたが?」
「それこそ風紀には関係ないでしょう。彼を招いたのは役員である私たちです。彼は理事長の甥御さんで、近いうちに生徒会補佐に推薦しようと思っています。問題はないはずです」
「ふうん、自分からペラペラとよくしゃべってくれるな」

 俺が指摘すると、塚崎のお綺麗な顔が、みるみる赤く染まっていった。

「明日は定例会だ」
「……ええ、それが何か?」
「準備は進んでいるのか?」
「……もちろんです。あの会長に手落ちはないはずです」


 そう言いながらも、塚崎の顔は沈んでいた。
 いつも凛とした佇まいで、自信ありげに会長の横に立っていた面影がまるでない。
 俺には、迷子になって途方にくれている子供のように思えた。

「……ご用件はそれだけですか? 気になるのでしたら、私などではなく会長に聞かれた方が確実でしょう。もう帰ってもいいでしょうか?」

 如月の右腕だったお前がそれを言うのか?
 相当こじれているようだ。実に面倒臭い。

「いいや、本題はこれからだ」
「……まだ何かあるのですか」
「席についてから、一度も俺と目が合わないじゃないか。どうした? こっちを見ろよ」
「……なっ……なにを」

 俺は塚崎のおとがいに指を添えると、無理やり上に向かせた。

 なにをするつもりだと、塚崎の顔が恐怖で強張っている。
 そんなに俺が恐ろしいのか。とって食われるとでも思っているのか。心外だな。
 泣きださないうちに、用件だけ述べさせてもらおう。俺も決して暇ではない。

「いいか良く聞け副会長殿。この先の生徒会の人事など俺にはどうだっていい。会長の身柄はいま風紀が預かっている。ボロボロで隙だらけだったから、甘い言葉で簡単に拾えたぞ。返してほしければ明日までに役員総がかりで定例会の準備をするんだ。会議に間に合うように必要書類を持って来い。部外者の転校生と遊ぶ暇はないからな。おまえたちがサボっている間に、如月が寝ずに仕上げた進行表も資料も何もかも、全部俺が破り捨ててやったから使用できると思うなよ? 手を抜いたり提出できなければ、明日の定例会でおまえたちの会長が恥をかくことになる。心しておけ」

 言うだけ言って出ていきかけたが……そうだ。施錠しないと。
 呆けたまま固まっている塚崎を立たせて追い出し、しっかりと鍵をかけてから、俺は今度こそ放送室を後にした。
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