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弟
失ってしまった、かけがえのないもの
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学校から飛び出した僕は、息が切れて足を止めた。
頭が混乱したせいで、つい抜け出してしまったが、行くあてなどない。
でも、だからといって、学校に帰ったところで、純に合わせる顔はない。
なら、家に帰るしかないなと思い、駅に向かおうとした時だった。
「海斗っ!!」
後ろから、純の呼び声が聞こえた、落ち着きを取り戻しつつあった心が、また冷静を失っていった。
僕は純から逃げようと、振り返ることなく駆け出そうとしたところ、腕を掴まれてしまった。
「はっ…離してよ!!」
僕は純の腕を振り払おうとしたが、純の力が思った以上に強く、びくともしなかった。
「離さない。何故逃げるのか、理由を聞いていないからな。」
「えっ………?」
意外な言葉に驚いて振り返ると、純は真剣な眼差しで僕を見ていた。
「…………だって、気持ち悪いでしょ?男が男に……。しかも、実の兄に、恋愛感情を抱いているなんて……。だから、それを知られた以上、もう純とは、友達でいられない。」
だから僕は、覚悟を決めて、本音を口にした。
すると純は、一瞬だけ眉根を寄せた後、首を横に振った。
「どうしてそんな事を言うんだ。俺がその程度で、海斗を嫌いになると思ったのか?」
どうして純は、こんなにも優しいのだろうか……。
胸が詰まり、言葉が出ず、ただ押し黙ることしかできない。
「確かに最初は、少し驚いた。けれども、今までの海斗や陸斗さんの言動を知っていたから、何となく腑に落ちた。」
「兄さん……?」
ここで何故、兄さんの名前を出したのか、意図が分からなかった。
「ああ、先程も言ったが、陸斗さんの愛情は異常だ。でもそれは兄弟愛ならの話だ。それが恋愛感情なら、異常という言葉は当てはまらなくなる。陸斗さん自身、それを自覚して、あえて距離を置こうとしてたんじゃないだろうか?」
兄さんも、僕を、愛していた?
考えた事もなかったが、確かに振り返れば、兄さんはいつも僕の味方だった。
痴漢に身体を犯され、ボロボロになりながらも、僕の前では決して弱い姿を見せず振る舞っていた。
僕に監禁され、身体を犯されて、家族、大事な幼馴染を殺されても、とうとう僕を一度も責めることはなかった。
僕を恨み、殺意を抱くどころか、あくまでも僕を守ろう、何とかしようとしていた気がした。
そしてその結果が、今の兄さんの変貌だとしたら、僕は、取り返しのつかない事にしたことになる。
いや、そんな事は最初から分かっていた。
こんな事をしても、兄さんの心は手に入らないというのは。
少なくとも、兄さんは僕に恋愛感情は抱いていないだろう。
けれども純の言う通り、兄さんは常に、僕を優先してくれていた。
それはとても深い愛だった。
その愛を、僕は自分の手で、壊してしまった。
そしてその愛は、きっと二度と戻ってこないと、心のどこかでは自覚していた。
それを何とか気付かないふりをしていたが、もう、無理だった。
「……うっ…ううっ………うわあああぁん!」
とうとう涙腺が破壊され、涙がドッと溢れ出た。
そんな僕を、純は黙って抱きしめてくれた。
頭が混乱したせいで、つい抜け出してしまったが、行くあてなどない。
でも、だからといって、学校に帰ったところで、純に合わせる顔はない。
なら、家に帰るしかないなと思い、駅に向かおうとした時だった。
「海斗っ!!」
後ろから、純の呼び声が聞こえた、落ち着きを取り戻しつつあった心が、また冷静を失っていった。
僕は純から逃げようと、振り返ることなく駆け出そうとしたところ、腕を掴まれてしまった。
「はっ…離してよ!!」
僕は純の腕を振り払おうとしたが、純の力が思った以上に強く、びくともしなかった。
「離さない。何故逃げるのか、理由を聞いていないからな。」
「えっ………?」
意外な言葉に驚いて振り返ると、純は真剣な眼差しで僕を見ていた。
「…………だって、気持ち悪いでしょ?男が男に……。しかも、実の兄に、恋愛感情を抱いているなんて……。だから、それを知られた以上、もう純とは、友達でいられない。」
だから僕は、覚悟を決めて、本音を口にした。
すると純は、一瞬だけ眉根を寄せた後、首を横に振った。
「どうしてそんな事を言うんだ。俺がその程度で、海斗を嫌いになると思ったのか?」
どうして純は、こんなにも優しいのだろうか……。
胸が詰まり、言葉が出ず、ただ押し黙ることしかできない。
「確かに最初は、少し驚いた。けれども、今までの海斗や陸斗さんの言動を知っていたから、何となく腑に落ちた。」
「兄さん……?」
ここで何故、兄さんの名前を出したのか、意図が分からなかった。
「ああ、先程も言ったが、陸斗さんの愛情は異常だ。でもそれは兄弟愛ならの話だ。それが恋愛感情なら、異常という言葉は当てはまらなくなる。陸斗さん自身、それを自覚して、あえて距離を置こうとしてたんじゃないだろうか?」
兄さんも、僕を、愛していた?
考えた事もなかったが、確かに振り返れば、兄さんはいつも僕の味方だった。
痴漢に身体を犯され、ボロボロになりながらも、僕の前では決して弱い姿を見せず振る舞っていた。
僕に監禁され、身体を犯されて、家族、大事な幼馴染を殺されても、とうとう僕を一度も責めることはなかった。
僕を恨み、殺意を抱くどころか、あくまでも僕を守ろう、何とかしようとしていた気がした。
そしてその結果が、今の兄さんの変貌だとしたら、僕は、取り返しのつかない事にしたことになる。
いや、そんな事は最初から分かっていた。
こんな事をしても、兄さんの心は手に入らないというのは。
少なくとも、兄さんは僕に恋愛感情は抱いていないだろう。
けれども純の言う通り、兄さんは常に、僕を優先してくれていた。
それはとても深い愛だった。
その愛を、僕は自分の手で、壊してしまった。
そしてその愛は、きっと二度と戻ってこないと、心のどこかでは自覚していた。
それを何とか気付かないふりをしていたが、もう、無理だった。
「……うっ…ううっ………うわあああぁん!」
とうとう涙腺が破壊され、涙がドッと溢れ出た。
そんな僕を、純は黙って抱きしめてくれた。
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