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新たなる幕開け
僅かな不安
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翌日、俺はいつものように電車に乗り込んだ。
果たして仲間が死んだ今、どんな顔をして、アイツは俺の前に現れるのだろうか。
今までの仕打ちを思うと、同情する気なんて当然ないが、やはり少し気になった。
しかし待てど暮らせど男は現れず、結局何事も無く俺は電車を降りた。
その時は、きっとショックでそれどころではないのだろうと勝手に解釈したが、次の日もその次の日も男は現れず、とうとう一週間が過ぎた。
こうなってくると、もう男は現れることはない気がした。
それは願ったり叶ったりなはずなのに、なんとも言えない感情が、胸を締めつけた。
家に帰っても心が晴れることはなく、それを海斗に見透かされた。
「どうしたの?元気ないね。」
海斗の無垢な瞳が俺をじっと捉えた。
どうするべきか。
素直に言うべきだろうか。
しかし、まだ本当に男が二度と現れないという確信もない中、海斗を巻き込む訳にはいかなかった。
それにこの心のもやは、それだけではない何か別の感情に思えて、口にするのも難しかった。
「………いや、何でもない。」
結局こう言うしかなく、誤魔化した事によって居づらくなった俺は、そそくさと自分の部屋に戻った。
そして机の前に座って、スマホを確認する。
「……連絡は、無しか。」
やはり今日も、男からの着信履歴も、メッセージもない。
そして、遥華からもだ。
「やっぱり、酷い事したかな……。」
あの、遊園地に行った日、俺は遥華からの告白を断った。
それ以来、全く連絡がない。
それまでは、むしろ危険な目に巻き込ませずに済むと思って気にしないようにしていたが、今となっては、一度俺の方から連絡すべきだったと思った。
なら、今からでも電話をかけてみるべきだろうか。
だが、そうしたところで、何を言えばいいのか分からず、遥華の名前をタップしようとした指が止まった。
……いや、もうこの際理由とかはどうでもいい。
ただ単純に、遥華の声を聞きたい。
それだけでいい気がした。
そう思い、俺は遥華に電話をかけた。
すると2コールくらいで、遥華が電話に出た。
「リッくん?本当にリッくんなの⁉︎」
すると耳元から、取り乱したような大声が聞こえたため、思わずスマホを少し離した。
「……そう、だけど。………元気か?」
「元気か、じゃないよ!!あれから散々連絡しようとしたのに、全然繋がらないから、心配してたんだから。」
遥華の話を聞いて、俺は首を傾げた。
「えっ?でも、俺のスマホには、履歴なんてなかったぞ。」
もしかしたら、知らないうちにスマホが故障して、着信を受け付けなかったのだろうか。
いや、それならこうして電話なんて、出来るはずはないと、頭の中で疑問が浮かんだ。
「それにさ、心配なら、家に来てもよかったんだぞ。」
最近はめっきりそんな機会はなかったが、昔はよく家を行き来してたほどなので、俺は軽い気持ちで言った。
だかよく考えると、振られた相手の家に行くことほど、気まずい事はないと思い、すぐに失言だと気づいた。
案の定、遥華は少し黙り込んで、何か考えているようだった。
「………その、家には、カイくんもいるから……。」
「ん?海斗がいたらまずいのか?」
しかしその答えは、あまりに予想外だった。
俺と会うのが気まずいのなら、理解できる。
でも何故、俺ではなく海斗なのだろうか。
「あっ!きっ、気にしないで。何でもないから!!それより、どうして急に電話してくれたの?」
電話をした理由、それを素直に言うのは、振った立場上おかしなことだと思った。
「いや、そうだな……。まずは、ごめん!振って悪かった。」
どんな理由であれ、遥華を傷つけたのは事実なので、俺は心から謝罪する事にした。
「やっ、やだなあ!もう気にしてないから大丈夫!!こっちこそごめんね、迷惑かけちゃって。だから、これからは、また普通の幼馴染として、付き合っていいかな?」
遥華は電話越しでも分かるほどテンパった様子で、何故か謝り出した。
だがそれほど傷付いてはいなかった様子だったので、少しホッとした。
「何言ってるんだよ。こっちこそ、よろしくな。」
そういえば、昔から、遥華のそういうあっけらかんとした態度に、何度も振り回されてつつも、助けられていた気がする。
海斗だけじゃない、遥華も俺にとって、心の支えになっていたのだと、改めて実感した。
「それで、話は変わるけど。リッくん、あれからどう?変わりない感じ?」
日常の変化なら、ある。
金髪の男が亡くなってからというもの、男も忽然と姿を消し、俺が犯されることは無くなった。
とはいえ当然、そんな事を素直に言えるわけもなく、適当に誤魔化すことにした。
「そうだな……。問題事がもう時期収まりそうなんだ。だから、もう少しすれば、また毎日のように会えるかもな。」
「解決……したって事?──。」
てっきり大喜びかと思っていたが、遥華の反応は意外で、急に声のトーンを落とした後、聞き取れないほどの声で何かを囁いた。
「……どうかしたか?」
「ううん、何でもない!!とにかく良かったー。あっ、また電話してね、じゃあね。」
そう言うと遥華は慌てた様子で、一方的に電話を切った。
一体どうしたのかと気になりつつ、俺はもう一つの気になっている事を確認した。
「………何で、ブロックされてるんだ?」
もしかしたらと思い確認したら、着信拒否した連絡先の中に、遥華の名前があった。
当然俺は、そんな事をした覚えはない。
だとしたら、一体誰がこんな事をしたというのだろうか。
「まさか、海斗が……?」
一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すかさず俺は頭を横に振った。
そんなはずはない。
あの海斗がこんな事をする訳がないし、理由もない。
きっと俺が何かの間違いで設定したに違いない。
そう言い聞かせて、俺はスマホをそっと置いた。
果たして仲間が死んだ今、どんな顔をして、アイツは俺の前に現れるのだろうか。
今までの仕打ちを思うと、同情する気なんて当然ないが、やはり少し気になった。
しかし待てど暮らせど男は現れず、結局何事も無く俺は電車を降りた。
その時は、きっとショックでそれどころではないのだろうと勝手に解釈したが、次の日もその次の日も男は現れず、とうとう一週間が過ぎた。
こうなってくると、もう男は現れることはない気がした。
それは願ったり叶ったりなはずなのに、なんとも言えない感情が、胸を締めつけた。
家に帰っても心が晴れることはなく、それを海斗に見透かされた。
「どうしたの?元気ないね。」
海斗の無垢な瞳が俺をじっと捉えた。
どうするべきか。
素直に言うべきだろうか。
しかし、まだ本当に男が二度と現れないという確信もない中、海斗を巻き込む訳にはいかなかった。
それにこの心のもやは、それだけではない何か別の感情に思えて、口にするのも難しかった。
「………いや、何でもない。」
結局こう言うしかなく、誤魔化した事によって居づらくなった俺は、そそくさと自分の部屋に戻った。
そして机の前に座って、スマホを確認する。
「……連絡は、無しか。」
やはり今日も、男からの着信履歴も、メッセージもない。
そして、遥華からもだ。
「やっぱり、酷い事したかな……。」
あの、遊園地に行った日、俺は遥華からの告白を断った。
それ以来、全く連絡がない。
それまでは、むしろ危険な目に巻き込ませずに済むと思って気にしないようにしていたが、今となっては、一度俺の方から連絡すべきだったと思った。
なら、今からでも電話をかけてみるべきだろうか。
だが、そうしたところで、何を言えばいいのか分からず、遥華の名前をタップしようとした指が止まった。
……いや、もうこの際理由とかはどうでもいい。
ただ単純に、遥華の声を聞きたい。
それだけでいい気がした。
そう思い、俺は遥華に電話をかけた。
すると2コールくらいで、遥華が電話に出た。
「リッくん?本当にリッくんなの⁉︎」
すると耳元から、取り乱したような大声が聞こえたため、思わずスマホを少し離した。
「……そう、だけど。………元気か?」
「元気か、じゃないよ!!あれから散々連絡しようとしたのに、全然繋がらないから、心配してたんだから。」
遥華の話を聞いて、俺は首を傾げた。
「えっ?でも、俺のスマホには、履歴なんてなかったぞ。」
もしかしたら、知らないうちにスマホが故障して、着信を受け付けなかったのだろうか。
いや、それならこうして電話なんて、出来るはずはないと、頭の中で疑問が浮かんだ。
「それにさ、心配なら、家に来てもよかったんだぞ。」
最近はめっきりそんな機会はなかったが、昔はよく家を行き来してたほどなので、俺は軽い気持ちで言った。
だかよく考えると、振られた相手の家に行くことほど、気まずい事はないと思い、すぐに失言だと気づいた。
案の定、遥華は少し黙り込んで、何か考えているようだった。
「………その、家には、カイくんもいるから……。」
「ん?海斗がいたらまずいのか?」
しかしその答えは、あまりに予想外だった。
俺と会うのが気まずいのなら、理解できる。
でも何故、俺ではなく海斗なのだろうか。
「あっ!きっ、気にしないで。何でもないから!!それより、どうして急に電話してくれたの?」
電話をした理由、それを素直に言うのは、振った立場上おかしなことだと思った。
「いや、そうだな……。まずは、ごめん!振って悪かった。」
どんな理由であれ、遥華を傷つけたのは事実なので、俺は心から謝罪する事にした。
「やっ、やだなあ!もう気にしてないから大丈夫!!こっちこそごめんね、迷惑かけちゃって。だから、これからは、また普通の幼馴染として、付き合っていいかな?」
遥華は電話越しでも分かるほどテンパった様子で、何故か謝り出した。
だがそれほど傷付いてはいなかった様子だったので、少しホッとした。
「何言ってるんだよ。こっちこそ、よろしくな。」
そういえば、昔から、遥華のそういうあっけらかんとした態度に、何度も振り回されてつつも、助けられていた気がする。
海斗だけじゃない、遥華も俺にとって、心の支えになっていたのだと、改めて実感した。
「それで、話は変わるけど。リッくん、あれからどう?変わりない感じ?」
日常の変化なら、ある。
金髪の男が亡くなってからというもの、男も忽然と姿を消し、俺が犯されることは無くなった。
とはいえ当然、そんな事を素直に言えるわけもなく、適当に誤魔化すことにした。
「そうだな……。問題事がもう時期収まりそうなんだ。だから、もう少しすれば、また毎日のように会えるかもな。」
「解決……したって事?──。」
てっきり大喜びかと思っていたが、遥華の反応は意外で、急に声のトーンを落とした後、聞き取れないほどの声で何かを囁いた。
「……どうかしたか?」
「ううん、何でもない!!とにかく良かったー。あっ、また電話してね、じゃあね。」
そう言うと遥華は慌てた様子で、一方的に電話を切った。
一体どうしたのかと気になりつつ、俺はもう一つの気になっている事を確認した。
「………何で、ブロックされてるんだ?」
もしかしたらと思い確認したら、着信拒否した連絡先の中に、遥華の名前があった。
当然俺は、そんな事をした覚えはない。
だとしたら、一体誰がこんな事をしたというのだろうか。
「まさか、海斗が……?」
一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すかさず俺は頭を横に振った。
そんなはずはない。
あの海斗がこんな事をする訳がないし、理由もない。
きっと俺が何かの間違いで設定したに違いない。
そう言い聞かせて、俺はスマホをそっと置いた。
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