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双子の過去
裏切り
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「………えっ?」
それは、去年の夏のことだった。
陸斗のサッカーの試合が終わってから数日後、学校の帰り道で、海斗は陸斗から驚愕の話を耳にして、絶望感に襲われた。
「実は俺、ここ最近進路について悩んでたんだ。だけど、こないだの試合で、ようやく決心がついたんだ。プロのサッカー選手になるって事に。だから、俺は学校の推薦で、県外のサッカーの強豪校に進学する。」
どうして?何故?
まさか、あの時の約束を忘れてしまったとでもいうのだろうか?
聞きたいことが数多く頭に浮かんだが、何一つとして言葉にならなかった。
「………だったら、僕は、サッカー関連の仕事に就く。」
それでも海斗は、何とか声を振り絞った。
だがそんな海斗の気持ちなど知る由もなく、陸斗は首を横に振った。
「何言ってるんだ。お前は昔から、車とか、機械をいじるのが好きだったじゃないか。」
確かにあの日以来、車の事を調べたり、ロボットを組み立てるなどしているうちに、そういうものが好きになっていった。
しかし元々は、陸斗を側で支えたいという思いからやってきた事であり、それを裏切られた今、自動車整備士になることなど、どうでもよくなってしまった。
それに、こうして面と向かって否定されたということは、やはり陸斗はあの日の約束を忘れてしまったのだろうと思い、どうしようもない感情が、海斗に押し寄せた。
とはいえ大好きな陸斗に、その事を問いただすことなど出来るはずもなく、その負の感情の矛先は、両親へと向けられることになった。
その日の夜、陸斗の入浴時を見計らって、海斗はリビングにいた両親にその事を話して、説得を試みた。
「兄さんはそんな事言ってたけど、僕は止めた方がいいと思うんだ。たかが全国中学校サッカー大会に出場出来たからって、プロのサッカー選手を目指そうだなんて、いくらなんでも無謀すぎるよ!ね、父さんも母さんもそう思うでしょ?」
プロのレーサーになるというのも無謀な事だが、その事は棚に上げて、海斗は切実な目で両親を見つめた。
大概の親は、子どもには安定な職についてほしいと思うものだと、海斗は考えていた。
なので自分の意見に賛同してくれて、陸斗を進学させずに済むと思った。
しかし両親の反応は、海斗の予想とは大きく異なっていた。
「……そうね。海斗が心配するのも分かるわ。でもね、私は陸斗を応援してあげたいと思うの。」
初めに口を開いた母親の言葉に耳を疑い、海斗は唖然としたまま、その場に立ち尽くした。
「海斗は昔からサッカーをしていたでしょ。その努力が実って、学校の推薦がもらえる事になっただなんて、すごい事じゃない。だから、その努力を無駄にすることなんて、私には出来ないわ。あなたもそうでしょ?」
そう言って母親は、父親の方に目を配った。
すると父親は深く相槌を打った。
「海斗、母さんの言う通りだぞ。それは陸斗が決めた事だ。例え親だろうと、もちろん弟である海斗であっても、陸斗の夢を奪う権利なんてないんだ。もし本当に、海斗が陸斗の事を思うなら、夢を応援してやることが、陸斗のためになると思わないか?」
それはあまりにも正論だと思った。
だから反論の余地もない。
それが返って、海斗の負の感情を大きくさせた。
その時にふと、いじめっ子の事と、美由の事が頭を過ぎり、自暴自棄になった海斗は、肩を落としつつほくそ笑んだ。
「分かったよ。父さん、母さん。僕が間違ってた。だから、もう何も言わないよ。」
そう言うと、海斗は踵を返して、リビングを後にした。
ある決意を胸に秘めつつ──。
それは、去年の夏のことだった。
陸斗のサッカーの試合が終わってから数日後、学校の帰り道で、海斗は陸斗から驚愕の話を耳にして、絶望感に襲われた。
「実は俺、ここ最近進路について悩んでたんだ。だけど、こないだの試合で、ようやく決心がついたんだ。プロのサッカー選手になるって事に。だから、俺は学校の推薦で、県外のサッカーの強豪校に進学する。」
どうして?何故?
まさか、あの時の約束を忘れてしまったとでもいうのだろうか?
聞きたいことが数多く頭に浮かんだが、何一つとして言葉にならなかった。
「………だったら、僕は、サッカー関連の仕事に就く。」
それでも海斗は、何とか声を振り絞った。
だがそんな海斗の気持ちなど知る由もなく、陸斗は首を横に振った。
「何言ってるんだ。お前は昔から、車とか、機械をいじるのが好きだったじゃないか。」
確かにあの日以来、車の事を調べたり、ロボットを組み立てるなどしているうちに、そういうものが好きになっていった。
しかし元々は、陸斗を側で支えたいという思いからやってきた事であり、それを裏切られた今、自動車整備士になることなど、どうでもよくなってしまった。
それに、こうして面と向かって否定されたということは、やはり陸斗はあの日の約束を忘れてしまったのだろうと思い、どうしようもない感情が、海斗に押し寄せた。
とはいえ大好きな陸斗に、その事を問いただすことなど出来るはずもなく、その負の感情の矛先は、両親へと向けられることになった。
その日の夜、陸斗の入浴時を見計らって、海斗はリビングにいた両親にその事を話して、説得を試みた。
「兄さんはそんな事言ってたけど、僕は止めた方がいいと思うんだ。たかが全国中学校サッカー大会に出場出来たからって、プロのサッカー選手を目指そうだなんて、いくらなんでも無謀すぎるよ!ね、父さんも母さんもそう思うでしょ?」
プロのレーサーになるというのも無謀な事だが、その事は棚に上げて、海斗は切実な目で両親を見つめた。
大概の親は、子どもには安定な職についてほしいと思うものだと、海斗は考えていた。
なので自分の意見に賛同してくれて、陸斗を進学させずに済むと思った。
しかし両親の反応は、海斗の予想とは大きく異なっていた。
「……そうね。海斗が心配するのも分かるわ。でもね、私は陸斗を応援してあげたいと思うの。」
初めに口を開いた母親の言葉に耳を疑い、海斗は唖然としたまま、その場に立ち尽くした。
「海斗は昔からサッカーをしていたでしょ。その努力が実って、学校の推薦がもらえる事になっただなんて、すごい事じゃない。だから、その努力を無駄にすることなんて、私には出来ないわ。あなたもそうでしょ?」
そう言って母親は、父親の方に目を配った。
すると父親は深く相槌を打った。
「海斗、母さんの言う通りだぞ。それは陸斗が決めた事だ。例え親だろうと、もちろん弟である海斗であっても、陸斗の夢を奪う権利なんてないんだ。もし本当に、海斗が陸斗の事を思うなら、夢を応援してやることが、陸斗のためになると思わないか?」
それはあまりにも正論だと思った。
だから反論の余地もない。
それが返って、海斗の負の感情を大きくさせた。
その時にふと、いじめっ子の事と、美由の事が頭を過ぎり、自暴自棄になった海斗は、肩を落としつつほくそ笑んだ。
「分かったよ。父さん、母さん。僕が間違ってた。だから、もう何も言わないよ。」
そう言うと、海斗は踵を返して、リビングを後にした。
ある決意を胸に秘めつつ──。
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