堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

文字の大きさ
上 下
29 / 70
双子の過去

裏切り

しおりを挟む
「………えっ?」

それは、去年の夏のことだった。

陸斗のサッカーの試合が終わってから数日後、学校の帰り道で、海斗は陸斗から驚愕の話を耳にして、絶望感に襲われた。

「実は俺、ここ最近進路について悩んでたんだ。だけど、こないだの試合で、ようやく決心がついたんだ。プロのサッカー選手になるって事に。だから、俺は学校の推薦で、県外のサッカーの強豪校に進学する。」

どうして?何故?

まさか、あの時の約束を忘れてしまったとでもいうのだろうか?

聞きたいことが数多く頭に浮かんだが、何一つとして言葉にならなかった。

「………だったら、僕は、サッカー関連の仕事に就く。」

それでも海斗は、何とか声を振り絞った。

だがそんな海斗の気持ちなど知る由もなく、陸斗は首を横に振った。

「何言ってるんだ。お前は昔から、車とか、機械をいじるのが好きだったじゃないか。」

確かにあの日以来、車の事を調べたり、ロボットを組み立てるなどしているうちに、そういうものが好きになっていった。

しかし元々は、陸斗を側で支えたいという思いからやってきた事であり、それを裏切られた今、自動車整備士になることなど、どうでもよくなってしまった。

それに、こうして面と向かって否定されたということは、やはり陸斗はあの日の約束を忘れてしまったのだろうと思い、どうしようもない感情が、海斗に押し寄せた。

とはいえ大好きな陸斗に、その事を問いただすことなど出来るはずもなく、その負の感情の矛先は、両親へと向けられることになった。

その日の夜、陸斗の入浴時を見計らって、海斗はリビングにいた両親にその事を話して、説得を試みた。

「兄さんはそんな事言ってたけど、僕は止めた方がいいと思うんだ。たかが全国中学校サッカー大会に出場出来たからって、プロのサッカー選手を目指そうだなんて、いくらなんでも無謀すぎるよ!ね、父さんも母さんもそう思うでしょ?」

プロのレーサーになるというのも無謀な事だが、その事は棚に上げて、海斗は切実な目で両親を見つめた。

大概の親は、子どもには安定な職についてほしいと思うものだと、海斗は考えていた。

なので自分の意見に賛同してくれて、陸斗を進学させずに済むと思った。

しかし両親の反応は、海斗の予想とは大きく異なっていた。

「……そうね。海斗が心配するのも分かるわ。でもね、私は陸斗を応援してあげたいと思うの。」

初めに口を開いた母親の言葉に耳を疑い、海斗は唖然としたまま、その場に立ち尽くした。

「海斗は昔からサッカーをしていたでしょ。その努力が実って、学校の推薦がもらえる事になっただなんて、すごい事じゃない。だから、その努力を無駄にすることなんて、私には出来ないわ。あなたもそうでしょ?」

そう言って母親は、父親の方に目を配った。

すると父親は深く相槌を打った。

「海斗、母さんの言う通りだぞ。それは陸斗が決めた事だ。例え親だろうと、もちろん弟である海斗であっても、陸斗の夢を奪う権利なんてないんだ。もし本当に、海斗が陸斗の事を思うなら、夢を応援してやることが、陸斗のためになると思わないか?」

それはあまりにも正論だと思った。

だから反論の余地もない。

それが返って、海斗の負の感情を大きくさせた。

その時にふと、いじめっ子の事と、美由の事が頭を過ぎり、自暴自棄になった海斗は、肩を落としつつほくそ笑んだ。

「分かったよ。父さん、母さん。僕が間違ってた。だから、もう何も言わないよ。」

そう言うと、海斗は踵を返して、リビングを後にした。

ある決意を胸に秘めつつ──。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

大親友に監禁される話

だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。 目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。 R描写はありません。 トイレでないところで小用をするシーンがあります。 ※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。

羽田家の日常

瀬界
BL
ちょっとぶっ飛んだものを書きたくなったので、エロ多めな上になんだそれなお話です。苦手な人は回れ右推奨。 BL/近親相姦/父×息子/兄×弟 です。 【概要】 羽田家。 父 雅臣(まさおみ) 35歳。IT社長、185センチ、筋肉質。 長男 玲(れい)16歳。高校2生、176センチ、文武両道。 次男 勇(ゆう)8歳。小学3年生、128センチ、天然。 ぼくのお家は、おっきくて優しいパパと頭が良くてなんでも教えてくれるお兄ちゃんの3人家族です。生まれた時からママはいないけど、優しいパパとお兄ちゃんがたくさんかまってくれるので、毎日たのしいです。 ぼくの家にはたくさんのルールがあるけど、これはぼくを守るためで家族みんなが仲良しのためのひけつ?なんだって! 自分たちだけのとくべつだから、みんなにはしーなんだって、パパとお兄ちゃんが教えてくれました! ぼくはいいこなので約束は守れます!! シングルパパの羽田家のえっちな日常をお送りします。 普通に家族がいちゃいちゃしてる常識はずれな家庭です。 誤字脱字、リクエストなどありましたら気軽にお声掛けよろしくお願いします。

兄弟愛

まい
BL
4人兄弟の末っ子 冬馬が3人の兄に溺愛されています。※BL、無理矢理、監禁、近親相姦あります。 苦手な方はお気をつけください。

旦那の愛が重すぎる

カイン
BL
男同士で結婚男も妊娠できる世界で、ちょっといや大分束縛溺愛しすぎてくる旦那様を持つ俺の話

【近親相姦?】アルファ王太子は、オメガな弟を犯して妊娠させる

天災
BL
 アルファ王太子による近親相姦?

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

【R18】歪んだ家族の幸せ

如月 永
BL
ホモでメスガキの僕は、エッチな事が好きだった。 母さんがいなくなった家で、寂しいお兄ちゃんとお父さんは僕をメスとして愛してくれた。 セックスすると気持ち良いし寂しくなくて幸せなんだ。 <説明&注意点> 父×息子。兄×弟。3P。近親相姦。ショタ。ストーリー性0。エロ中心。 メスガキ感はあんまり出せてないかも。 一話2000文字くらい。続きの更新未定。 <キャラクター覚え書> ●お父さん(※名前未定): 会社員。妻に逃げられ、仕事に熱中して気を紛らわせたが、ある日気持ちがぽっきり折れて息子を犯す。 ●和雅(かずまさ): 兄。高校生。スポーツをしている。両親に愛を与えてもらえなくなり、弟に依存。弟の色気に負けて弟の初めてを奪う。 ●昂紀(こうき): 弟。僕。小学○年生。ホモでメスガキな自覚あり。父と兄とするセックスはスキンシップの延長で、禁忌感は感じていない。セックスは知識より先に身体で覚えてしまった。

処理中です...