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兄
やっぱり私は──。
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「はい。秋山です。」
「あっ……。秋山くん、最近調子どう?」
秋山くんとは、一度4人で会ったくらいの関係だったが、彼から連絡先を聞かれて、とりあえず連絡先を交換していた。
それ以来、たまに向こうからはかかってくるのだが、こうして私からかけるのは初めてだった。
「ああ、俺の方は特に何も変わらないが。それを言うなら七瀬さんの方こそ、声に力がないようだが、何かあったのか?」
今はとにかく、誰かに胸の内を話したかった。
でも私の友達には心配をかけたくなかったので、カイくんの友達である秋山くんに電話をかけたのだ。
それに、秋山くんには聞きたいことがあった。
「その……カイくんにひどいことを言われちゃって。でもリッくんにはなかなか言えなくて………。それで、秋山くんはカイくんと言い争った時、どうやって仲直りするかなと思って……。それが聞きたくて電話したの。」
そう質問をしたのは、カイくんが秋山苦しいに対して、そういう裏の顔を見せたことがあるのかを知りたかったからだ。
私の質問に対して、受話器越しの秋山くんは少しうーんと唸った。
「……そうだな。教えてやりたいのも山々なのだが、あいにく俺は海斗とは喧嘩をしたことはないんだ。あいつはとにかく控えめで優しい奴だからな。それこそ、あいつが暴言を言うタイプとは思えないのだがな。」
私だって、カイくんはちょっと気の弱い、心の優しい人だと思っていた。
でも今は、カイくんのことがわからなくなっていた。
「それじゃあ、今まで一緒にいて、何か…おかしなところとかは、なかった?」
私の質問に対して、秋山くんは再び頭を抱えているようだった。
「んー……、そうだな。おかしなところというよりも、最近兄貴の調子が悪いとか何とか言って、そそくさと帰るようになったな。」
秋山くんが言っているカイくんとは、リッくんの事に違いなかった。
だからリッくん自身がそれを言うのは、どう考えてもおかしかった。
リッくんはバイトを増やしたから疲れていると言っていたが、それならカイくんとして、バイトをやり始めたとでも言えばいい。
じゃあ何故わざわざそんなことを言ったのか。
それは自分が早く帰るための口実だと思った。
もちろんそれは、バイトが理由なんかじゃない。
他に、人に言えないような、何かがあって、それでカイくんと入れ替わって登校しているのではないか。
そしてその理由を、カイくんは知っている。
リッくんを救うというあの言葉からも、リッくんが何かに巻き込まれているのはほぼ間違いなかった。
そのせいで、カイくんは人が変わってしまったのだろうか。
でも私には、今まで本性を隠していたようにしか見えなかった。
あの私を見下したような目は、前々から私をよく思っていなかったのではないかと思えて仕方なかった。
「で、兄貴の方はどうなんだ?それほど悪いのか?」
事情を知らない私には、何も言いようがない。
「……うん。まあ………あまり……。」
なのでここは、曖昧に流すことにした。
「…あれだな。海斗もそうとう気に病んでいたようだから、つい七瀬さんに当たったのかも知れん。だから、いずれ頭を冷やして謝ってくるだろう。」
「………そうね。あまり気にしないことにする。今日はありがとう。少し気が楽になったよ。」
私はお礼を伝えて電話を切った後、大きくため息をついた。
結局、何も解決する糸口も見つからなかった。
でも、やっぱりこのままリッくんを放っておくことなんて、できないと思った。
カイくんに言われた通り、私は何の役にも立たないかもしれない。
それでもあの様子のカイくんに任せるのも不安だったので、私はリッくんに電話をかけることにした。
昨日の今日で気まずくはあったが、そんなことはどうでもよかった。
例えフラれたとしても、私はリッくんが好きだ。
だから少しでもリッくんの気晴らしになれればいいと思った。
だけど電話をかけようとしたら、リッくんの声ではなく、代わりに機械音声が流れてきた。
「おかけになった電話をお呼びしましたがお出になりません。」
一体、どういうことだろう。
忙しくて電話に出られないのだろうか。
だがその後、何度電話をかけても、リッくんに繋がることはなかった。
「あっ……。秋山くん、最近調子どう?」
秋山くんとは、一度4人で会ったくらいの関係だったが、彼から連絡先を聞かれて、とりあえず連絡先を交換していた。
それ以来、たまに向こうからはかかってくるのだが、こうして私からかけるのは初めてだった。
「ああ、俺の方は特に何も変わらないが。それを言うなら七瀬さんの方こそ、声に力がないようだが、何かあったのか?」
今はとにかく、誰かに胸の内を話したかった。
でも私の友達には心配をかけたくなかったので、カイくんの友達である秋山くんに電話をかけたのだ。
それに、秋山くんには聞きたいことがあった。
「その……カイくんにひどいことを言われちゃって。でもリッくんにはなかなか言えなくて………。それで、秋山くんはカイくんと言い争った時、どうやって仲直りするかなと思って……。それが聞きたくて電話したの。」
そう質問をしたのは、カイくんが秋山苦しいに対して、そういう裏の顔を見せたことがあるのかを知りたかったからだ。
私の質問に対して、受話器越しの秋山くんは少しうーんと唸った。
「……そうだな。教えてやりたいのも山々なのだが、あいにく俺は海斗とは喧嘩をしたことはないんだ。あいつはとにかく控えめで優しい奴だからな。それこそ、あいつが暴言を言うタイプとは思えないのだがな。」
私だって、カイくんはちょっと気の弱い、心の優しい人だと思っていた。
でも今は、カイくんのことがわからなくなっていた。
「それじゃあ、今まで一緒にいて、何か…おかしなところとかは、なかった?」
私の質問に対して、秋山くんは再び頭を抱えているようだった。
「んー……、そうだな。おかしなところというよりも、最近兄貴の調子が悪いとか何とか言って、そそくさと帰るようになったな。」
秋山くんが言っているカイくんとは、リッくんの事に違いなかった。
だからリッくん自身がそれを言うのは、どう考えてもおかしかった。
リッくんはバイトを増やしたから疲れていると言っていたが、それならカイくんとして、バイトをやり始めたとでも言えばいい。
じゃあ何故わざわざそんなことを言ったのか。
それは自分が早く帰るための口実だと思った。
もちろんそれは、バイトが理由なんかじゃない。
他に、人に言えないような、何かがあって、それでカイくんと入れ替わって登校しているのではないか。
そしてその理由を、カイくんは知っている。
リッくんを救うというあの言葉からも、リッくんが何かに巻き込まれているのはほぼ間違いなかった。
そのせいで、カイくんは人が変わってしまったのだろうか。
でも私には、今まで本性を隠していたようにしか見えなかった。
あの私を見下したような目は、前々から私をよく思っていなかったのではないかと思えて仕方なかった。
「で、兄貴の方はどうなんだ?それほど悪いのか?」
事情を知らない私には、何も言いようがない。
「……うん。まあ………あまり……。」
なのでここは、曖昧に流すことにした。
「…あれだな。海斗もそうとう気に病んでいたようだから、つい七瀬さんに当たったのかも知れん。だから、いずれ頭を冷やして謝ってくるだろう。」
「………そうね。あまり気にしないことにする。今日はありがとう。少し気が楽になったよ。」
私はお礼を伝えて電話を切った後、大きくため息をついた。
結局、何も解決する糸口も見つからなかった。
でも、やっぱりこのままリッくんを放っておくことなんて、できないと思った。
カイくんに言われた通り、私は何の役にも立たないかもしれない。
それでもあの様子のカイくんに任せるのも不安だったので、私はリッくんに電話をかけることにした。
昨日の今日で気まずくはあったが、そんなことはどうでもよかった。
例えフラれたとしても、私はリッくんが好きだ。
だから少しでもリッくんの気晴らしになれればいいと思った。
だけど電話をかけようとしたら、リッくんの声ではなく、代わりに機械音声が流れてきた。
「おかけになった電話をお呼びしましたがお出になりません。」
一体、どういうことだろう。
忙しくて電話に出られないのだろうか。
だがその後、何度電話をかけても、リッくんに繋がることはなかった。
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