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野バラが王宮にきた理由 3
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引きずられるように店から連れ出され、馬車に押し込められると一緒にイルミネも入ってきた。一度護衛の人と「あのような粗暴なものと一緒に乗るなんて」とひと悶着あったようだがイルミネはそこを押し通して馬車の乗ってきた。
気まずそうにしているイルミネをよそに野バラは無視を決め込んでいた。
「これから行くのは俺の研究施設なんだけど、別荘もかねてるから暮らしやすいと思う」
「……」
「ずっと拘束するつもりはないんだ、ただ色々と質問したいことがあるから、それに答えてもらえたら」
「……」
「失敗したな」とイルミネはぼやいているが、こんなやつに見つかったがために自分の生活がぱあになったと思うと怒りが噴出しそうだった。
(あの時ぶつからなければ……返す返すも本当についてない)
悔しくて悔しくて、腕を組みながら指をとんとんと動かしてしまう。イルミネは諦めたのか何もしゃべらなくなり、無言になりながら馬車は進んでいった。
到着して馬車から降りたイルミネが手をだして野バラをエスコートしようとするが全く理解できず野バラは普通に飛び降りた。周囲の護衛たちが青筋立てて睨みつけているのを意にも介さずぐるっと見回す。
美しく整えられた庭園は南の地域特有のカラフルな花が咲き乱れ、花をひくひくと動かすと甘い香りが風に乗って香ってくる。先ほどまでの不機嫌顔からは打って変わって輝く野バラにイルミネはほっと安堵の息をついた。
「どうだい?小さいけどいい庭だろ」
「ええ、とても美味しそうね」
夢見るようにつぶやく野バラに護衛たちはぎょっとした顔をしたが、イルミネは心得ているとでもいうようにうなずいた。
「君たちの文献を読んでから花は何種も取り揃えているんだ。いつもてなしてもいいように。もしかしたら一生無駄になるかもしれないという懸念もあったけれど、こんなに早く役立つ時がくるとはね」
イルミネは嬉しそうに言って、野バラを案内することにした。「このような得体の知れない者など閉じ込めておけばいいものを」という護衛、野バラを真っ先に捕まえた護衛が忌々し気にぼやくが、「君たちがいるんだからめったなことにはならないよ」とイルミネがなだめる。
野バラが観賞用の花に惹かれるのにはワケがあり、他の喰花族もそうなのだが人工的に栽培された花はとてつもなく美味しいのだ。しかしこういった花は一般的に役に立つものではなく裕福な家でしか利用されないため町に出回ることが少ない。
野バラにとってこの庭はまさにご馳走畑だったのだ。
「欲しいものをいくらでも摘んでいいよ」
いつの間に用意されたのかイルミネの手元にはハサミがあり、野バラに手渡された。誘惑に簡単に屈した野バラは「ぜひ頂く」と答えいそいそと受け取り、夢中になって切り出した。
(こんなところに無理やり連れてこられたんだもの、好物を食べずにやってられますか)
黙々とちょきん、ちょきんと切っていくうちに、恐ろしく香りのいい豪奢な花があるエリアにきた。
「この花は?」
思わずつぶやいた野バラにすかさずイルミネは答えた。
「バラだね、君の名前の野バラとは親戚じゃないかな」
「まあ……野バラとは華やかさが全然違うわ」
たっぷりとした花びらは一枚一枚が瑞々しく茎の棘まで野バラには可憐に見えた。
「切る時は気を付けてね、ケガをしないように」
イルミネの言葉にうなずいて、野バラは大振りな白いバラを切った。すっと香りをかぐと、今まで匂ったものの中で一番素敵な香りがする。
「そろそろティータイムにして積んだ花を食べてみないか?君が食べられるお菓子も用意してあるんだ」
この男は野バラと本当に偶然出会ったのか?と思うほど用意周到に準備をしているらしい。しかしこの花々を食べることを心待ちにしている自分もいて、野バラは不承不承という表情を作りつつも足元軽く動き出し、イルミネや護衛たちはその様子を見て苦笑しながら歩き出した。
気まずそうにしているイルミネをよそに野バラは無視を決め込んでいた。
「これから行くのは俺の研究施設なんだけど、別荘もかねてるから暮らしやすいと思う」
「……」
「ずっと拘束するつもりはないんだ、ただ色々と質問したいことがあるから、それに答えてもらえたら」
「……」
「失敗したな」とイルミネはぼやいているが、こんなやつに見つかったがために自分の生活がぱあになったと思うと怒りが噴出しそうだった。
(あの時ぶつからなければ……返す返すも本当についてない)
悔しくて悔しくて、腕を組みながら指をとんとんと動かしてしまう。イルミネは諦めたのか何もしゃべらなくなり、無言になりながら馬車は進んでいった。
到着して馬車から降りたイルミネが手をだして野バラをエスコートしようとするが全く理解できず野バラは普通に飛び降りた。周囲の護衛たちが青筋立てて睨みつけているのを意にも介さずぐるっと見回す。
美しく整えられた庭園は南の地域特有のカラフルな花が咲き乱れ、花をひくひくと動かすと甘い香りが風に乗って香ってくる。先ほどまでの不機嫌顔からは打って変わって輝く野バラにイルミネはほっと安堵の息をついた。
「どうだい?小さいけどいい庭だろ」
「ええ、とても美味しそうね」
夢見るようにつぶやく野バラに護衛たちはぎょっとした顔をしたが、イルミネは心得ているとでもいうようにうなずいた。
「君たちの文献を読んでから花は何種も取り揃えているんだ。いつもてなしてもいいように。もしかしたら一生無駄になるかもしれないという懸念もあったけれど、こんなに早く役立つ時がくるとはね」
イルミネは嬉しそうに言って、野バラを案内することにした。「このような得体の知れない者など閉じ込めておけばいいものを」という護衛、野バラを真っ先に捕まえた護衛が忌々し気にぼやくが、「君たちがいるんだからめったなことにはならないよ」とイルミネがなだめる。
野バラが観賞用の花に惹かれるのにはワケがあり、他の喰花族もそうなのだが人工的に栽培された花はとてつもなく美味しいのだ。しかしこういった花は一般的に役に立つものではなく裕福な家でしか利用されないため町に出回ることが少ない。
野バラにとってこの庭はまさにご馳走畑だったのだ。
「欲しいものをいくらでも摘んでいいよ」
いつの間に用意されたのかイルミネの手元にはハサミがあり、野バラに手渡された。誘惑に簡単に屈した野バラは「ぜひ頂く」と答えいそいそと受け取り、夢中になって切り出した。
(こんなところに無理やり連れてこられたんだもの、好物を食べずにやってられますか)
黙々とちょきん、ちょきんと切っていくうちに、恐ろしく香りのいい豪奢な花があるエリアにきた。
「この花は?」
思わずつぶやいた野バラにすかさずイルミネは答えた。
「バラだね、君の名前の野バラとは親戚じゃないかな」
「まあ……野バラとは華やかさが全然違うわ」
たっぷりとした花びらは一枚一枚が瑞々しく茎の棘まで野バラには可憐に見えた。
「切る時は気を付けてね、ケガをしないように」
イルミネの言葉にうなずいて、野バラは大振りな白いバラを切った。すっと香りをかぐと、今まで匂ったものの中で一番素敵な香りがする。
「そろそろティータイムにして積んだ花を食べてみないか?君が食べられるお菓子も用意してあるんだ」
この男は野バラと本当に偶然出会ったのか?と思うほど用意周到に準備をしているらしい。しかしこの花々を食べることを心待ちにしている自分もいて、野バラは不承不承という表情を作りつつも足元軽く動き出し、イルミネや護衛たちはその様子を見て苦笑しながら歩き出した。
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