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しおりを挟むピリピリ
「..........」
「何だこのひりついた空間は......。」
アキラはアルマッド邸にいた。そして、側近らしき人が十数人、そしてアルマッド、アキラで円卓を囲んでいた。
「コホン。」
アルマッドが咳払いをする。その瞬間に周りの人たちが覚悟を決めたように唾を飲んだ。
「それではカイザー領との内戦についての会議を始める。こちらの兵は5万、あやつらの兵はおよそ12万とされていて兵力に差がある。さて、これをどのようにして覆す?皆の意見を聞かせてくれ。」
「ふむ。」
真っ先に手を挙げたのはアルマッドと一番近いところにいる白髪、白髭の老兵だった。
「ギル指揮官。」
「五番、六番隊を中枢へと向かわせ、持久戦をしながら一番、二番隊が横から追撃、三番隊が裏から回り込んで寝首をかくってのが勝ち筋かのお。今回の戦はかなり分が良い。カイザー領の犬っころたちでは我ら狼には勝てぬよ。」
「ギル指揮官の指摘通り、奴らの統率力は我らには無いものだ。しかし、質が悪くとも2倍の兵力を持っている。勝てて当然、その上で犠牲を少なくする方法が必要だ!他にいないか!」
シーン
ギル指揮官の言った作戦以上のものを考えうる人はいなかった。一見、単なる案の一つかと思われていたが、地理的要因などを加味するとギル指揮官の作戦は完璧なものだった。
ひりついている中、アキラは配られていた資料を見ていた。敵の強力な兵のリストや地図などを見ていた。
「私はアキラ殿の意見を聞いてみたい。」
他の重役に呆れたアルマッドはアキラへとふった。
「あ、俺ですか。そうですね ~ とかどうですか?」
アキラは相手をおびき寄せ、奇襲をするという案を提案した。
「ほっほっほ、それは面白い。じゃが、それをするためには資源や労力が必要じゃよ。」
「それは ~ などで十分に対応できると思います。」
「ほぉ、これはさらに面白いのぉ。アルマッド様、私はアキラ殿の作戦がいいかと。」
アキラの作戦はギル指揮官の心を掴んだ。それと同時にここにみんなの心もがっちりと掴んだ。
そして、3時間にも渡る会議は終わった。
「では、アキラ殿。先程、頼んだ物の納品はよろしく頼んだぞ。」
「はい、任せてください。」
アキラは会議室を出た。
「ちょっといいかね。」
「はい?なんですか?」
ギルがアキラに話しかけた。
「あんな作戦を商人が考えつくとは思わぬのじゃが、お主は何者かのぉ?」
ギルはアキラを疑惑の目で見ていた。
「あぁ、あれは俺の国で昔使われてたものなんですよ。」
平々凡々のアキラが唯一得意だったものが日本史である。偉人の伝記や戦国武将の聖地巡りなどをするほど好きなのであった。
「それでですね!その時驚くわけですよ!間者がまさか自分の右腕なんて思わないですよね!」
アキラは久しぶりに語れることでリミッターが外れ、ギルに小一時間ほど話していたのだ。
「ほぉ、それは確かに思わぬことじゃ。」
ギルもアキラの話が新鮮で笑顔で話を聞き、意見を交換しあった。
「あ、すみません。沢山話しすぎちゃいましたね。」
「いや、わしも指揮官をして30年も経つが目からウロコが出るようなことばかりじゃった。」
ギルが引退し伝説の指揮官として語り継がれる時に最も敵に回したくなかった指揮官として名を挙げられたのは「アキラ」だった。
しかし、これはまた別のお話である。
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