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介護保険拒否編

在宅介護、介護保険拒否編 20話

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 介護を軽く考えている上の世代が存在する。
 介護のあれこれを、分担できていた世代。兄弟がたくさんいて、親戚も近くに住んでいて、二世帯同居は当たり前だった。
 血縁者が周囲に住んでいて手伝ってくれている世代だ。現代は核家族当たり前。

 後、配偶者などに全ての苦労を押し付けて自分は一切手を汚していないタイプ、これは論外。

 まず前提として長期の介護が社会問題になったのは寿命が延びてからだ。医療が発達していなかったり、物資が少なくて十分な医療を受けられなかった時代とは違う。
 床ずれをしたら感染症にかかり、1か月もすれば亡くなるような時代とは違う。
 日本の健康保険はすぐれた制度だ。
 抗生物質もすぐに手に入り、医療経験の蓄積も十分に蓄えられて適切な治療を受けられる時代だ。そうなると長生きが当たり前となってくる。
 認知症のリスクもある。
 難病で研究も進んでいない前頭側頭型認知症は有効な治療は確立していない。

 介護の問題を一家庭の問題だと考えているならば改めて欲しい。これは社会の状況が作り出した社会の問題なのだ。
 これまで人類が経験したことがないような超高齢社会だ。高齢「化」社会ではない。すでに高齢社会なのだ。
 子供が少なくなれば高齢者を支える世代も少ないということだ。俺は50歳離れた両親の介護することになった。経験を役立てて欲しい。せめて心の準備として知識を蓄えてほしい。その一心で本を書いたのだが全く売れなかった。無料で公開しても、ほとんどの人には見向きもされない。

 2011年、相変わらず、便妄想に振り回される。
 近くのY病院でアルツハイマーの診断を受けていた。のちに誤診と発覚する。

 アルツハイマーの薬、レミニールという薬が出た。本人はその薬を飲みたがらない。ひっそり捨ててしまう。見ていないと机の下、ゴミ箱、色んな所に捨ててしまう。 
「こんなもんいらん」
 クスリの管理は本人にできないので、飲む瞬間までつきっきりになるしかない。

 便妄想は続いていた。なぜか、便を出すためにタバコを吸いたがる。

 もともと両親は喫煙者だったが、チャイルドロックのせいでライターが使えずガスコンロでたばこをつけようとする。危ない。

「吸ったら便が出る」
 母は止めてもやめない。
 医師は「刺激にはなる可能性はあります」という。そうですか。専門家の意見ありがとう、でもこちらは止めてほしいんだよ。
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