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1章 幼少期編 I

89.北の視察3(Side ロッド王)

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東コースト橋を渡り切った先で、迎えのオマー領兵と合流した。

オマー経領陣たちへの『ジャガの収穫祭』参加通達は済んでいる。
余計な会話は必要ない。
我らはただ目立ち、収穫祭に参加するだけだ。

泊する領主邸へは街の中央道を行進する。


「「「きゃーーーっ! 綺羅さまーーーっ!」」」

「「「綺羅王子ぃぃーーーっ!」」」

「「「綺羅綺羅さまぁぁぁーーーっ!」」」


王の行進を見ようと中央道には多くの民が道なりに集まっていた。
特に今回は祭りのための花装束で目立っている。
目論見以上の若い娘たちの絶叫が耳に痛い。
それに答えるルベールの笑顔が益々艶めくのも、父親として目に痛い。
そして聞こえた『綺羅綺羅さま』に不意を突かれて、酷く耐え忍んでいる。

着飾って沿道に並んだ娘たちの騒ぎに、事情を知らぬ観光客も次々と宿から顔を覗かせた。
服装からマラーナの裕福層が多いことが伺える。
雪の降らないマラーナから、わざわざ雪で閉ざされにやって来ているのだ。

雪籠りの越冬観光客が、帰国や観光に移動するのは春入りの今頃だ。
事を起こしてこの地を離れるのなら、観光客に紛れることができる最適な時期である。

あらゆる『今』がオマー領に集まる。
そのような有り得ない偶然に背中が熱くなる。

犯よ……

二期続けての王の訪問に多少なりとも緊張しているであろう。
しかし祝いの花行列を見て、安堵もしているであろう。

収穫祭が仕組まれたものだと気付く必要はない。
気を緩ませろ。
そして、王が去った後が好機と思い込め。

「父上、顔が怖くなっていますよ」

息子に注意されてしまった。

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