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第二章 男の娘と百合の園
第十五話 気づいていた?
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日が暮れかけた頃、一冴は菊花と下校した。
桜の散りかけた鎮守の杜を二人で歩いてゆく。
遠くからながめていた蘭はどこか神秘的な感じがした。あの雨上がりの光景もそうだ。しかし実際にふれた蘭の姿は、一冴が想像もしないものだった。
菊花はウキウキしている。
「ご愁傷様だったね♪ 蘭先輩、女の人しか好きになれないんだってさ。」
「うん。」
何とか一冴は気を取り直そうとする。
「でも――異性を好きになったことがまだないだけかも。同性愛者かと思っていたら、実は両性愛者だったってこともありえるじゃん。」
「百二十三人も好きになっておいて今さら両性愛者なんてあり得る?」
そう言われると黙らざるを得ない。
「蘭先輩がそういう性的指向を持ってるっていうんなら、尊重しなきゃね。セクシュアルマイノリティのSOGIを尊重してマイクロアグレッションをなくしてゆくことがLGBTQ+にインクルーシブなダイバーシティっていうやつじゃないの?」
「そういうカタカナ語を遣う人が一番うさん臭いんだよ。」
菊花は溜息を一つついた。
「けど、私も意外だったかな――蘭先輩がレズビアンだったなんて。」
一冴は考えこむ。
「意外――かなあ。」
「意外――じゃないの?」
「だって、蘭先輩が書いてた小説って、そういうのでしょ?」
「まあ――そうだけど――」
一冴は胸元に手を当てる。
「それに、私はこの格好をしてるのに、今さら意外もないんじゃない?」
「いや――あんたみたいなオカマ、そうそういないじゃん。それと同じで、レズなんてそうそういないでしょ。」
それはそうであろう。しかし、菊花は知らない――中学のとき、見知らぬ女子と蘭がキスをしていたことを。
――これは天祐なんだろうか。
自分は男だとバレてはならないのだ。その上で蘭に好意を寄せている。普通、女性は女性を好きにならない。しかし蘭はレズビアンなのである。
考え込んだ一冴を目にして、菊花は疑問の声を上げる。
「あんた――まさか、蘭先輩がレズだってこと知ってた?」
「うん――まあ――」
菊花は酷く驚愕した顔となった。
桜の散りかけた鎮守の杜を二人で歩いてゆく。
遠くからながめていた蘭はどこか神秘的な感じがした。あの雨上がりの光景もそうだ。しかし実際にふれた蘭の姿は、一冴が想像もしないものだった。
菊花はウキウキしている。
「ご愁傷様だったね♪ 蘭先輩、女の人しか好きになれないんだってさ。」
「うん。」
何とか一冴は気を取り直そうとする。
「でも――異性を好きになったことがまだないだけかも。同性愛者かと思っていたら、実は両性愛者だったってこともありえるじゃん。」
「百二十三人も好きになっておいて今さら両性愛者なんてあり得る?」
そう言われると黙らざるを得ない。
「蘭先輩がそういう性的指向を持ってるっていうんなら、尊重しなきゃね。セクシュアルマイノリティのSOGIを尊重してマイクロアグレッションをなくしてゆくことがLGBTQ+にインクルーシブなダイバーシティっていうやつじゃないの?」
「そういうカタカナ語を遣う人が一番うさん臭いんだよ。」
菊花は溜息を一つついた。
「けど、私も意外だったかな――蘭先輩がレズビアンだったなんて。」
一冴は考えこむ。
「意外――かなあ。」
「意外――じゃないの?」
「だって、蘭先輩が書いてた小説って、そういうのでしょ?」
「まあ――そうだけど――」
一冴は胸元に手を当てる。
「それに、私はこの格好をしてるのに、今さら意外もないんじゃない?」
「いや――あんたみたいなオカマ、そうそういないじゃん。それと同じで、レズなんてそうそういないでしょ。」
それはそうであろう。しかし、菊花は知らない――中学のとき、見知らぬ女子と蘭がキスをしていたことを。
――これは天祐なんだろうか。
自分は男だとバレてはならないのだ。その上で蘭に好意を寄せている。普通、女性は女性を好きにならない。しかし蘭はレズビアンなのである。
考え込んだ一冴を目にして、菊花は疑問の声を上げる。
「あんた――まさか、蘭先輩がレズだってこと知ってた?」
「うん――まあ――」
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