幻獣士の王 ーとある魔性植物園ー

瑠璃垣玲緒

文字の大きさ
21 / 21
始動編

野鳥の雛

しおりを挟む
 「今から専門の薬師が発見したばかりの新しい方法で元気になれるか試してみるからね。ただ必ず上手く行くかは分からないんだ、そこは承知してくれるかな?」
ギルド職員が子供達に説明をする。
ここには今その薬師は居ないことと、まだ一部の種類しか試してないから失敗するかも知れないことも説明している。
 職員が子供の視線を逸らしてくれている間に非公開の処置を施すことにした。
先ずは魔素浴からだ。もしかしたら変異種を引き取ることになる可能性を考え、マジックバックに小振りだが勢いのある鉢植えの魔性植物を入れていたので取り出す。鉢のふちの方に横たえたが丁度良い具合に収まった。果汁を与える準備が出来るまで、そこに置いておく。
レナードさんの話しでは、急変した時は先ず森で魔素浴をして、様子が少しでも変化があれば果汁を無理矢理押し込んでも飲ませると言っていた。少しでも嚥下すれば持ち直すと。
 職員が雛に体力と生きたい気持ちがなければ、どんな方法でも助からないんだと告げていた。
「そんな!」
「だったらわたしお祈りする!」
助けられると聞いた兄らしい子の絶望的な声と、妹らしい子の希望に縋る声が聞こえてきた。
色々な神などに雛の回復を願う数人の声。
子供達に背を向けたまま雛を片手に持ち固定する。子供達の相手をしているのとは別の職員と無理矢理嘴をこじ開けた。雛にはシリンジの先に管がついた専用の物があり、慎重に量を調整して入れてもらう。嚥下しているかを喉元を良く観察する。嚥下さえしてくれたら生存の可能性が出て来るからだ。喉元の毛の密度が高くて動きが分からなかったが、とりあえず嘴から果汁の戻りはなかったようなので一度鉢植えに戻す。
「今出来る事はやってくれたみたいだから、そろそろ家に帰りなさい」
こちらが処置を終えたのを見て子供達の側にいた職員が帰宅を促してくれた。
「…でもぉ」
子供達は動かない雛が心配で仕方がないのだろう。
「じゃあ、この雛を保護した様子を説明してくれないか?」
雛の方をチラチラ見ながら話してくれた。
「では、雛が鳴いている声を聞いて近づいたら落ちていて、上にある巣に親鳥が居るらしいのに、君達が近付いても威嚇されなかったんだな」
「うん」
「気付いてなかった可能性は?」
「巣のある木に雛より近付くとチチッって鳴くの」
「やはり変異種だったから見捨てられたんだな」
「え~あの雛捨てられたちゃったの?」
女の子が涙ぐむ。
「変異種の赤ちゃんは賢いけど、もの凄く弱いんだ。だから巣にいるならともかく、巣から落ちた時には他の雛と違ってすぐに諦めちゃうんだ」
「どうして?」
「それは人間と違ってお薬を飲ませてあげられないし、他の雛の餌を探さずにその子だけのお世話が出来ないからなんだよ」
「他の雛が落ちたら探すんだよね?」
「そうだね、元気なら連れ戻そうとするね」
「変異種の雛だけ違うの?」
「変異種は成体にさえなれば群れのリーダーになるほど賢い。でもその代わり、調子が悪くなったらあの様に親鳥が付きっきりでお世話をしなきゃいけない状態になる事が多いんだ。
それを知っているから普通に育たないと分かった瞬間に放置しちゃうんだ。それは確実に多くの子孫が残せるための知恵なんだ」
その後、野生では初産で変異種の雛が居た場合には、経験値がないから頑張って育てようとして他の子も駄目になってしまい、その後何度産んでも育児放棄してしまうことがあったり、1匹しか産まない種族で愛情が深過ぎる母親は、亡くなった子を持ち歩いていたり、悲しみのあまり衰弱死してしまうことなど、親鳥が生き残り子孫を残すためにやっている事だと言うことを教えていて、真剣に聞いていた子供達は親鳥を責める言葉を段々と口にしなくなっていた。
 最後にここで応急処置をしたけどいつ目覚めるか分からない事と、準備が出来次第、保護する施設に移動することを説明した。明日お手伝いが終わってここに来た時に経過を教える約束をしてようやく帰って行った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...