幻獣士の王 ーとある魔性植物園ー

瑠璃垣玲緒

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始動編

園長の呟き①

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 今まで予算で散々苦労していた。
 今も本来の予算はほぼ最低限の必要経費と、いくらかは有効な研究や他の植物園との共同研究などで、青色吐息ではある。
 しかし必要経費の一部だった廃棄果実の処理費用が浮いたことやこれから引き取られる数が増える可能性が出来たことだけでも、悩みが若干だが減ることは喜ばしい。
 まだ駆除しないといけない毎日湧き出て来る魔物の虫の問題は、解決の糸口が見えてはいないが、今後餌として食べてくれる種族の変異種が我が植物園に来るか、検証業者からの問い合わせが有れば見えて来るに違いない。

 と思っていたら、小鳥系の変異種が我が園にやって来た!
 但し生まれてまだ日にちがあまり経っておらず弱々しくて、普通の虫さえ未だ食べられる様子がない。
 会議後しばらくして、伝書屋のヘルマンさんからの魔物の虫のサンプルの問い合わせが唯一希望のぞみだろうか。
 極々小さな魔素溜まりは、今いる変異種の子達が吸収してくれるので、僅かだが手間が減って助かる。
 適当な性格の職員が時々忘れて尻拭いが大変だったが、1ヶ所でもチェックする場所が減るのは助かる。
 但し、小型動物が好きな職員が時々暴走して、本来の業務に支障が出る可能性が出て来た。
 その情熱や行動力をたまには本業に使って欲しいというのは贅沢なのだろうか?
 確かにりすも、りす猿も、小鳥達も可愛いし、まだ生まれたばかりのような庇護欲を掻き立てるほど弱々しくはある。
 あの子達の世話をしている時に、部外者や本部の人が来たら色々とヤバイ。
 顔付きだとか、表情とか、行動とか、言動とか。
 極秘案件だからと動物好きのみの有志で構成されてはいるものの、情報を秘匿したいというよりは、我が植物園では担当している職員が、世話をしている様子が異様なために対外的な印象を悪くさせないために話せないなんて、口が裂けても言いたくない。
 普段は真面目で礼儀正しいアイツも、
 他人には興味がないとばかりの無表情なアイツも、
 もうあの子達にメロメロだ。
 自分の格好や容姿には一切頓着しないアイツが、りす猿のブラッシングを鬼気迫る顔付きでしているのを見てしまった時には目を疑うどころか、あまりの光景に開けたばかりの扉を思わず閉めてしまったほどだった。
 人間あそこまで変わるものだろうか?
 数時間後に研究室で資料に埋もれて仕事をする姿とのギャップに、戦慄が走ったものだ。
 抜き打ち監査や監視目的の本部の影が出来る限り来ないように何か考えなければならない。
 あぁ、長年の悩みの経費の削減と魔素の管理を減らせるという問題に公明が見えて来たというのに、新たな問題が爆弾級のヤバイことなのは勘弁して欲しい。
 時々持ち込んだ変異種の子達の様子見がてら、魔性果実を引き取りに来てくれるレナードさんとの会話が、今の私の数少ない癒しの時間だ。
 あの人の謙虚さ、誠実さ、懐の広さもさることながら、常識的な感覚で話せることが素晴らしい!
 なんか虚しくなって来た。
 どれだけ周りが普通じゃない考えの者が多いってことじゃないか。
 私も研究者畑だったはずなのに、いつの間にかこんな研究以外のことに頭を悩ませる日が来るとは思わなかった。
 はぁ、研究職に戻りたい。
 現実逃避はこの辺でやめなきゃな。
 さて、そろそろ仕事に戻るか。

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