幻獣士の王 ーとある魔性植物園ー

瑠璃垣玲緒

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始動編

育成計画

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 園内で一番小さく、日当たりの良い小部屋が最初の飼育ルームとなった。
 比較的新しい資料室だったが、物が少なかったこともあり、速攻で片付けられた。
 休みだった職員達が、自宅や近所から集めた壊れたゲージや止まり木になりそうなものを集めて来た。
 手先の器用な職員が、壊れたゲージの中で一番マシなものをベースに、止まり木などを設置して必要数を用意。
 連れて来た時に用意されたかごなどをベットにして入れ、着々と準備が完了する。
 予算に泣かされ、作れる物や直せる物は自分達でやる精神が、充分な力を発揮した。
 というより、研究の時より迅速だったのは上層部には内緒だ。

 集められた小型変異種達は、一番手のかかる産まれてから2週間の目も離せないほどの温度管理や食事の時期は過ぎていたものの、本来の種族の同時期に生まれた兄弟姉妹よりは小さく、ちょっとした油断が体調を左右するので慎重に、時には過保護だと思われるほどの世話をした。
 暖かく風が緩やかな日は出来るだけ植物園の敷地内で自由に過ごさせた。
 ほぼ全てが魔性植物であるため、小型種の変異種にとっては最高の環境だった。
 果実や木の実も、魔素も変異種や幻獣の子供達には必須の栄養素だったから。
 今までは普通種と同じ物を与え、弱い個体と同じ環境下で飼育するのが一般的だったそうだ。
 幻獣は魔素の多い森か、迷いの森で産まれるが、親や仲間達が育てるため人族でそのことを知る者はほとんど居なかった。
 竜人族やハイエルフなどの幻獣と共に暮らす一族の秘技であったとのちに判明した。

 最初の頃は職員の手の届く範囲内でしか動かず、直ぐに戻って来ては職員の膝の上や肩に止まって休んでいた。
「はぁ、癒され~る」
「疲れが吹き飛ぶ~」
 愛らしい寝姿に担当職員はメロメロで、顔面の崩壊度が半端ない。
 好みが分からないため、植物園内で熟している実をかき集め、絞ってジュースにした。
 小鳥系には最初方手で捕まえてスポイドで嘴の中に少量を押し出して飲ませた。
 美味しいと分かると
「ピッ!」
 と催促して来る。
 嫌いな時は首を振って抵抗する。
 リス系魔物と小型のリス猿系魔物には、片手ほどの大きさに切り分けて渡した。
 小さな手で果実を掴んでもぐもぐする姿は愛らしい。
 それぞれ催促したか、しなかったかで分けられ記録は班で共有された。
 ただそのデータは種族が全部違っていたため、個体の好みもあることが判明するのは数年経ってからであったが。
 どの種族も弱っている時は果汁を、元気が良い時は果実を適当に切り分けて与えた。
 有志で集めたお金で専用の餌を従魔士ギルドから購入したこともあった。

 レナードさんが開示した情報の通り、体調を崩した時に無理をしても魔性植物の果汁を少量与えるか、魔素の多い場所で過ごさせると、翌日の症状が軽くなったり、その後の頻度が減って来ることが確定して来た。
 元々の変異種の変調率は知らないが、伝書屋に研修にいった者の話しでは、一度体調を崩すと一昼夜は急変するため目が離せず、その後もしばらくは一進一退を繰り返していたが、魔性植物の果汁を与えるようになってからは、急変すること自体も減り、持ち直す確率が上がったそうだ。
 伝書屋に研修にいったある職員は、伝書屋の育成担当責任者の協力の元、学会や上層部に発表するための研究を始めたらしい。
 中間報告は協力関係である商業ギルドにも報告され、貸し魔獣屋や行商人など、観察記録を提出することに同意した業者を増やすことに使われた。
 冒険ギルドは畜産農家や一般家庭からの変異種の引き受けや保護、餌になる人族は食べない肉や魔虫などの害獣などを、協力者に安く売り渡していた。

 育成計画は試行錯誤しながら段々と形を整えていく。
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