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第四章
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しおりを挟むルディエルというのが今の赤月の名という事をすっかり忘れていた。
というか、ルディと呼んでいるあたり兄様は親しい仲と言うことだろうか。
「親しいんですか?」
「ルディとは割と昔から付き合いがあるよ。まぁ親しいのかと聞かれたら親しいんじゃない?ルディの側による男って俺くらいだから」
「そうなんですか」
「うん。学園では一緒にいるし」
なるほど同い年だったか。
すっかり抜けてた…。
「で、そんな人間が大切な妹と家族になるかもっていうから本当はどうか確かめにきたんだよ。ついでにルディが休んでる分の課題を伝えるのもしたけど」
いつの間にか兄様はベッド近くの椅子に座り、眠そうにあくびをした。
「聞いたら即答されたよ。シアだって」
「……」
「驚いたな普通に。今まで異性のことを考えたこともない興味関心ゼロのルディがうちの妹にはそれを示すだなんて」
ですよね…。
「始めは都合いいようにシアをお飾りで娶るのかと思ってたんだ。けど好きなところを聞いたら何か熱弁されたから納得しちゃった。…ルディにはシアしかいないんだなと」
赤月まさか兄様に熱弁したの!?
止めて私の後の生活に支障をきたすから!
こんなこと思っても届かないのはわかってるけど…。
「だから頑張ってシア」
「助けてはくれないんですか…」
「シアのことだろうから死ぬほどこの婚約は嫌だろうなとは思ったけど、ルディにはシアしかいないから折れてあげなよ」
「わかってるなら助けてください」
「そんなに嫌?」
「…仮に兄様が私の立場で婚約を望まれた場合…受け入れるのですか?」
「即断るね」
「…なら」
「確かに今のシアの気持ちは凄くわかるけど…残念ながら俺はルディのことも考えての結果だからさ。それに」
「?」
「ルディ相手に俺は敵わないよ。助けになんてならないから最初から期待しないで」
「……」
「そこは否定してほしいなぁ。嘘でも敵うって言ってくれればいいのに」
「いや、ジャンルによるんじゃないですか?…兄様が得意なものなら勝てると思いますけど」
「そう?」
「はい」
「ありがとう。……シアおいで」
「?」
急に手招きをされた。
ゴミでもついてるのだろうか。
「!」
そう呑気なことを考えてたら違った。兄様は私を引き寄せた。
「兄様…?」
「もし本当にシアが心からこの婚約を望まないなら、俺が何とかするよ。ルディは確かに大切だけど、可愛い妹はもっと大切だからね」
耳元で小さく言ってくれた。
何だかんだで兄様は優しい。
「ありがとう兄様」
「ううん…シアも大きくなったね」
久しぶりに兄様とハグをした気がする。
そりゃ、私だって成長しますから。
和やかな雰囲気に包まれていたそのとき。
「随分と仲の良い兄妹ですね」
聞き覚えのある声が、冷気を放って聞こえた。
赤月…。
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