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第九話 女子飲み会・前編

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「自由だーッ! アタシは自由だーッ!!」

 五月七日、GWゴールデンウィーク最終日の仕事を終え、あくあはハイになっていた。

 体力・気力は尽きてるが、開放感だけで動いている状態。

「お疲れ様。ふわあ……早く寝たいわ……」

 里愛から労われるが、彼女も疲労困憊モードだ。

「今日は、案内課の三人と、一緒に帰りましょうよ」

「そうね。二人と春木さんのお友達にも、お疲れ様って言わなきゃ」

 あくあがデバイスで連絡を取ると、「すぐ行く」と、まりんから返信があった。

 少しして、三人が職場から出てきた。

「おまたせしました~」

 まりんも開放感から、のほほんと二人に挨拶する。

「みんな、お疲れ様」

 さっそく、里愛が三人を労うと、「お疲れ様」「お疲れ様です」と、労い返される。

「やー! 三連休だー! 何しよー!」

 相変わらず、ハイなあくあ。寮に向かって歩きながら、明日の計画に思考を巡らす。

 カンブリアン・アクアリウムは、毎週火・水が休館日だが、スタッフの疲労を考え、明日月曜も臨時休館となっている。

「せっかくですから、みんなで飲みに行きませんか?」

「あら、雁州さん、飲みスタ?」

 奏にツッコまれる。一世紀以上前に流行った、飲みニケーションにすっかり取って代わった、「飲みでコミニュケーションを取るスタイル」の略語である。

「あははー……。お酒の味、すっかり覚えちゃいまして」

 照れくさそうに、己の後頭部を撫でる。

「同じく……」

 あくあも同様に、人差し指で、頬を掻く。

「あら~……。その歳で、覚えちゃったのね。まあ、可愛い教え子の頼みとあれば、やぶさかではないけど。二人はどう?」

 らいあと、里愛に尋ねる。

「あたしは構わんぞ」

「私も、二人と飲むの久しぶりだから、賛成~」

「じゃあ、決定ですね! 近所で、いいお店見つけたんですよ! ご案内します!」

 まりん、ノリノリ。

 談笑しながら寮に帰ると、御飯をしっかり食べ、入浴し、早寝。

 テンションこそ高かったが、やはり疲労困憊してることには、変わりないのであった。


 ◆ ◆ ◆


「今日は、何時頃から行きます?」

 朝。アジの開き定食をつつきながら、五人で今日の予定を相談。まりんが、四人に尋ねる。

「そうねえ。夜になると混むし、早めに行かない?」

「平日の真っ昼間から酒ですかー。ダメ人間って感じで、いいですねー」

 冗談か本気か、そんなことを言うあくあ。

「なんか……引くな」

「あーっ! 織田先輩、引かないでくださいー! 冗談ですよ、冗談。アタシら、仕事が仕事なら、土日休んでるんですから~」

 らいあを拝む。

「あのお店、何時開店かな……。十一時みたいですね。ランチとかやってますよ」

 まりんが、デバイスで調べる。

「お昼は、こっちで食べていきたいわねえ。食費、天引きされてるし」

「じゃあ、三時頃行きましょう」

 里愛に、そう応えるまりん。

「異議なし。お三方は?」

 決を採るあくあ。

 「異議なし」の三連唱。かくして、三時に飲み会決行となった。


 ◆ ◆ ◆


「こんにちはー」

「らっしゃーい! お好きなお席へどうぞ~」

 まりんが中に入ると、店主の威勢の良い挨拶が返ってくる。時間が時間だけあって、ガラガラだ。

 店構えは、いかにも個人経営の居酒屋という感じの、シックな造り。

「ここは、何がおすすめなんだろうか?」

 メニューデバイスを開き、にらめっこするらいあ。

「お酒なら、日本酒ですね。福井の地酒を扱ってるんです」

「ほう、それはなかなか」

 まりんの返答に、感心する。

「故郷が福井でしてね。油揚げなんかも、おすすめですよ!」

 店主が気さくに付け加える。

(油揚げ……。あんなものが、つまみになるのか?)

 味噌汁に入っているのを想像し、頭に疑問符を浮かべるらいあ。

「頼んでみてくださいよ。ほんと、美味しいですから」

「そうか? では、黒龍のマスと、油揚げを」

「っしたー!」

 略しすぎてわからないが、オーダーを承知したようだ。

「わたしは、ぼんじりとレバー、タレでもらおうかしら。それと、黒龍をマスで」

「っしたー!」

 こうして、一同次々にオーダーを決めていく。

「おまたせしましたー! 油揚げと黒龍です!」

 らいあのもとに、運ばれてきたものは?

 次回に続く。
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