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第八話 GW到来!
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「来ちゃいましたねえ……」
「来ちゃったねえ……」
「はあ……」
「だらしない、気合を入れろ!」
通勤の最中、すでに気力を吸い尽くされている、まりん、奏、あくあと、彼女らに活を入れる、らいあ。
四月二十九日、昭和の日。GW到来である。
「着いちゃいましたねえ……」
とうとう、アクアリウムに着いてしまった。まりんが、がっくりうなだれる。
まりんとあくあは初GW出勤だが、客として来ていた時代に、どれだけ大勢の客が訪れるか、イベントが盛り上がるかを、思い知っていた。
「気合だ、気合! 気合があれば、なんとでもなる!」
意気軒昂なのは、らいあだけである。
「ぼやいてても、お仕事は待ってくれないわよ。入りましょ」
奏に促され、職場に赴く一同であった。
◆ ◆ ◆
今年のGWの目玉イベントは、アノマロカリス大混泳。イベント用巨大水槽に、アノマロカリスといえばこれ、という、アノマロカリス・カナデンシスの他に、タミシオカリスという亜種を、大量混泳させるというもの。
企画課長は、今でこそ混泳に難色を示す人物だが、かつて混泳に積極的だった頃に、このイベントを成功させたことがあり、五年ぶりに復活したイベントとなる。
混泳メンバーの中には、あの、あのじろうもいた。
まりんは、解説役を務めたいのはやまやまだったが、とにかく過酷な労働環境になるので、奏以上のベテランが、交代制で解説に選ばれている。
では、まりんはどこに配属されたかというと、あのナラオイアの水槽だ。
あのときは暇をひさいでいたが、今日はナラオイアすら大人気。多数のお客様の質問に、必死に答えるのであった。
奏は、オダライア担当。人気度としては中ぐらいで、奏レベルで、やっとこのぐらいの生物を任される。
ハルキゲニア、オパビニアといったスターは、よりベテランの担当となっている。
普段は閑古鳥が鳴いている別館も、今日は大盛況。らいあはトリブラキディウムを担当し、その知識と愛を、余すことなく披露していた。
別館スタッフフル稼働で、らいあの部下も、ヨルギアという、エディアカラ生物の中でもマイナーな生物を任されていたが、これまた人だかりができ、必死で解説を行っている。
あくあ、里愛ら企画課一同は、イベントに遅れや混乱を出さないように、進行プログラムと格闘中。
GW中は、休館日以外、全スタッフ休日返上につき、案内役にも少しだけ余剰人員がいるので、道案内や、ピンチヒッターとして派遣される。「隙」ができないように人員を回すのも、企画課の大事な仕事である。
物販コーナーも、迷子センターも、レストランも、どこもかしこも、多忙を極めていた。
◆ ◆ ◆
地獄のような一日が終わった。
「先輩……もう、動けません……」
「がんばって、雁州さん。寮に帰れば、美味しい食事とあったかいお風呂、ふかふかのベッドが待ってるからね……」
「アタシ、五月七日の終業時刻まで、乗り切れるんでしょうか……」
「情けないぞ。こんなに働きがいがあったというのに」
比較的元気なのは、らいあのみ。そんならいあでも、かなり疲労の色が見られた。他の三人は、もはやボロ雑巾である。
四人は、ほうほうの体で、寮にたどり着いた。ベッドに横になったり、ソファに座ると寝てしまうので、食事時間まで食堂のテーブルで互いに起こし合い、食事が出されると、生気なく食膳を運び、無言でもそもそと食む。
他のみんなも、全体的に静かである。
四人は、とにかくお腹が空いているので、ペースこそゆっくりだが、おかわりを頼むほどであった。
風呂では寝ないように気をつけ、風呂を上がったらアラームをかけ、ベッドで布団にくるまると、就寝時間前にもかかわらず、あっという間に、眠りの世界に落ちていく。
乙女たちの戦いは、まだまだ続く。今はただ、良い夢を。
「来ちゃったねえ……」
「はあ……」
「だらしない、気合を入れろ!」
通勤の最中、すでに気力を吸い尽くされている、まりん、奏、あくあと、彼女らに活を入れる、らいあ。
四月二十九日、昭和の日。GW到来である。
「着いちゃいましたねえ……」
とうとう、アクアリウムに着いてしまった。まりんが、がっくりうなだれる。
まりんとあくあは初GW出勤だが、客として来ていた時代に、どれだけ大勢の客が訪れるか、イベントが盛り上がるかを、思い知っていた。
「気合だ、気合! 気合があれば、なんとでもなる!」
意気軒昂なのは、らいあだけである。
「ぼやいてても、お仕事は待ってくれないわよ。入りましょ」
奏に促され、職場に赴く一同であった。
◆ ◆ ◆
今年のGWの目玉イベントは、アノマロカリス大混泳。イベント用巨大水槽に、アノマロカリスといえばこれ、という、アノマロカリス・カナデンシスの他に、タミシオカリスという亜種を、大量混泳させるというもの。
企画課長は、今でこそ混泳に難色を示す人物だが、かつて混泳に積極的だった頃に、このイベントを成功させたことがあり、五年ぶりに復活したイベントとなる。
混泳メンバーの中には、あの、あのじろうもいた。
まりんは、解説役を務めたいのはやまやまだったが、とにかく過酷な労働環境になるので、奏以上のベテランが、交代制で解説に選ばれている。
では、まりんはどこに配属されたかというと、あのナラオイアの水槽だ。
あのときは暇をひさいでいたが、今日はナラオイアすら大人気。多数のお客様の質問に、必死に答えるのであった。
奏は、オダライア担当。人気度としては中ぐらいで、奏レベルで、やっとこのぐらいの生物を任される。
ハルキゲニア、オパビニアといったスターは、よりベテランの担当となっている。
普段は閑古鳥が鳴いている別館も、今日は大盛況。らいあはトリブラキディウムを担当し、その知識と愛を、余すことなく披露していた。
別館スタッフフル稼働で、らいあの部下も、ヨルギアという、エディアカラ生物の中でもマイナーな生物を任されていたが、これまた人だかりができ、必死で解説を行っている。
あくあ、里愛ら企画課一同は、イベントに遅れや混乱を出さないように、進行プログラムと格闘中。
GW中は、休館日以外、全スタッフ休日返上につき、案内役にも少しだけ余剰人員がいるので、道案内や、ピンチヒッターとして派遣される。「隙」ができないように人員を回すのも、企画課の大事な仕事である。
物販コーナーも、迷子センターも、レストランも、どこもかしこも、多忙を極めていた。
◆ ◆ ◆
地獄のような一日が終わった。
「先輩……もう、動けません……」
「がんばって、雁州さん。寮に帰れば、美味しい食事とあったかいお風呂、ふかふかのベッドが待ってるからね……」
「アタシ、五月七日の終業時刻まで、乗り切れるんでしょうか……」
「情けないぞ。こんなに働きがいがあったというのに」
比較的元気なのは、らいあのみ。そんならいあでも、かなり疲労の色が見られた。他の三人は、もはやボロ雑巾である。
四人は、ほうほうの体で、寮にたどり着いた。ベッドに横になったり、ソファに座ると寝てしまうので、食事時間まで食堂のテーブルで互いに起こし合い、食事が出されると、生気なく食膳を運び、無言でもそもそと食む。
他のみんなも、全体的に静かである。
四人は、とにかくお腹が空いているので、ペースこそゆっくりだが、おかわりを頼むほどであった。
風呂では寝ないように気をつけ、風呂を上がったらアラームをかけ、ベッドで布団にくるまると、就寝時間前にもかかわらず、あっという間に、眠りの世界に落ちていく。
乙女たちの戦いは、まだまだ続く。今はただ、良い夢を。
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