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第三話 暴走先輩
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「は~~~~……。つっかれたあああああ~!」
社員寮の自室に帰ってくるなり、ベッドに寝そべり大~きなため息をつくまりん。
「ア~タ~シ~も~~~~!」
ほぼ同時に帰ってきたあくあも、これまたベッドに寝そべり、大~きなため息。
二人は、同室である。
「アタシさー、出す企画、出す企画、全部ボツでさ、もーやんなった!」
「私は、詰め込み教育と解説祭りで、頭と顎が疲れたよ」
互いを見て、力なく微笑む。
「見るとやるとじゃ、大違いだねー」
今までは、客としてアクアリウムに訪れていたから気楽なものだったが、プロとはこんなに大変なものなのか。
はあ、と一つ小さなため息をつく、まりん。
でも、自分で選び、しかもまりんは、望んだ通りの部署にも就けた。これで不平を言ったら、贅沢だ。
「あ、晩御飯の時間だ。食べに行こ」
「うん」
食堂に行くと、まりんに気づいた奏から、手招きされる。
料理を受け取り、奏の向かいに座るまりんと、さらにその隣に座るあくあ。
「こちら、奈良先輩。私の教育係。こちらは、私の同室で親友の、春木あくあです」
「春木です。企画部に配属されました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。彼女は、織田らいあ。わたしの同期で同室」
「織田だ。よろしく」
隣りに座ってる女性を紹介する奏。まりんが、どこかで見た顔だと思案していると、エディアカラ別館で会釈しあった、あの人だと気づく。
「今日は、目玉焼きハンバーグですね」
「ふふ、なんか童心に帰るわよね」
美味しそうに食む、奏。
「いただきます!」
まりんとあくあも、食事に手を付ける。
美味しい。なかなかのレベルだ。
「美味しいですねえ!」
「うん。ここの料理、美味しいのよ」
和やかに談食。
「別館の仕事って、どうですか?」
なにげなく、らいあに質問を飛ばすまりん。
「どう、とは?」
「そうですねえ。やりがいですとか」
「割と暇だな。だが、これも大事な仕事だ。別館送りを島流しなどと陰口叩く者もいるが、そのように言われる筋合いはない」
地雷踏んだ臭いと、後悔するまりんであった。
「トリブラキディウムも、キンベレラも、可愛いもんだぞ。人気度で、カンブリア生物に劣るのが口惜しいな。トリブラキディウムなど、大昔に切手にもなったというのに」
止まらなくなってしまった。適当に相槌を打ちながら、食事を進めるまりん。
「ねえ、企画課では、今日どんなことやったの?」
スイッチが入ってしまったらいあを遮るように、奏があくあに質問する。
「企画書の制作と、プレゼンです。ただ、これが上手くいかなくて……。全ボツですよ。昔実行されて、コケた企画と丸かぶりだったり」
あくあが落ち込む。どうにも地雷持ちが多くて困るな、などと思うまりんであった。
「いやあ、初日でいきなり企画が通ったら、そりゃ天の星に愛されているぞ。そんなもんだ」
織田先輩が、エディアカラ語りをやめてくれたと、ほっとするまりん。
「そんなもんですかねえ」
思案顔で、もぐもぐとハンバーグを食べる、あくあ。
「うむ。あたしらの同期も、企画が通らないと、しょっちゅうぼやいてるからな」
「はー……。イバラの道ですねえ……」
「楽な部署なんてないわよ」
奏が苦笑する。
「別館が、楽ちん窓際扱いされてるのは納得いかんぞ」
(あーっ! また、スイッチが!)
脳内で、頭を抱えるまりん。
「どう、どう。あくあちゃんに頑張ってもらって、エディアカラ生物を盛り上げてもらいましょ」
「が、頑張ります」
突然振られた重責に、冷や汗を垂らすあくあ。
「それよりも、二人共、明日から本格的に仕事だから、早めに休むのよ」
「はい!」
食べるスピードを上げ、ごちそうさまする、まりんとあくあ。
実際、今日の研修で、二人共、かなり体力・気力が削られていた。
「お先に、失礼します!」
一礼して、食膳を下げに行く。
しばし、食休みに雑談していると、入浴時間が来たので、一日の汗を流し、朝までぐっすり休むのであった。
社員寮の自室に帰ってくるなり、ベッドに寝そべり大~きなため息をつくまりん。
「ア~タ~シ~も~~~~!」
ほぼ同時に帰ってきたあくあも、これまたベッドに寝そべり、大~きなため息。
二人は、同室である。
「アタシさー、出す企画、出す企画、全部ボツでさ、もーやんなった!」
「私は、詰め込み教育と解説祭りで、頭と顎が疲れたよ」
互いを見て、力なく微笑む。
「見るとやるとじゃ、大違いだねー」
今までは、客としてアクアリウムに訪れていたから気楽なものだったが、プロとはこんなに大変なものなのか。
はあ、と一つ小さなため息をつく、まりん。
でも、自分で選び、しかもまりんは、望んだ通りの部署にも就けた。これで不平を言ったら、贅沢だ。
「あ、晩御飯の時間だ。食べに行こ」
「うん」
食堂に行くと、まりんに気づいた奏から、手招きされる。
料理を受け取り、奏の向かいに座るまりんと、さらにその隣に座るあくあ。
「こちら、奈良先輩。私の教育係。こちらは、私の同室で親友の、春木あくあです」
「春木です。企画部に配属されました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。彼女は、織田らいあ。わたしの同期で同室」
「織田だ。よろしく」
隣りに座ってる女性を紹介する奏。まりんが、どこかで見た顔だと思案していると、エディアカラ別館で会釈しあった、あの人だと気づく。
「今日は、目玉焼きハンバーグですね」
「ふふ、なんか童心に帰るわよね」
美味しそうに食む、奏。
「いただきます!」
まりんとあくあも、食事に手を付ける。
美味しい。なかなかのレベルだ。
「美味しいですねえ!」
「うん。ここの料理、美味しいのよ」
和やかに談食。
「別館の仕事って、どうですか?」
なにげなく、らいあに質問を飛ばすまりん。
「どう、とは?」
「そうですねえ。やりがいですとか」
「割と暇だな。だが、これも大事な仕事だ。別館送りを島流しなどと陰口叩く者もいるが、そのように言われる筋合いはない」
地雷踏んだ臭いと、後悔するまりんであった。
「トリブラキディウムも、キンベレラも、可愛いもんだぞ。人気度で、カンブリア生物に劣るのが口惜しいな。トリブラキディウムなど、大昔に切手にもなったというのに」
止まらなくなってしまった。適当に相槌を打ちながら、食事を進めるまりん。
「ねえ、企画課では、今日どんなことやったの?」
スイッチが入ってしまったらいあを遮るように、奏があくあに質問する。
「企画書の制作と、プレゼンです。ただ、これが上手くいかなくて……。全ボツですよ。昔実行されて、コケた企画と丸かぶりだったり」
あくあが落ち込む。どうにも地雷持ちが多くて困るな、などと思うまりんであった。
「いやあ、初日でいきなり企画が通ったら、そりゃ天の星に愛されているぞ。そんなもんだ」
織田先輩が、エディアカラ語りをやめてくれたと、ほっとするまりん。
「そんなもんですかねえ」
思案顔で、もぐもぐとハンバーグを食べる、あくあ。
「うむ。あたしらの同期も、企画が通らないと、しょっちゅうぼやいてるからな」
「はー……。イバラの道ですねえ……」
「楽な部署なんてないわよ」
奏が苦笑する。
「別館が、楽ちん窓際扱いされてるのは納得いかんぞ」
(あーっ! また、スイッチが!)
脳内で、頭を抱えるまりん。
「どう、どう。あくあちゃんに頑張ってもらって、エディアカラ生物を盛り上げてもらいましょ」
「が、頑張ります」
突然振られた重責に、冷や汗を垂らすあくあ。
「それよりも、二人共、明日から本格的に仕事だから、早めに休むのよ」
「はい!」
食べるスピードを上げ、ごちそうさまする、まりんとあくあ。
実際、今日の研修で、二人共、かなり体力・気力が削られていた。
「お先に、失礼します!」
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