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顧客リスト№62 『笑いの神の笑ってはいけないダンジョン』

人間側 とある芸人達と使い⑦

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「タカナ、もうケツ大丈夫か?」

「……だいじょう…ぶじゃないすけど…。 なんとか椅子には座れますわ……」

「いやぁ見事なキックだったわぁ……」

「逆らっちゃいけませんね、バニーガールにも、ミミックにも……」

「じゃ、落ち着いたところで俺の分の鍵、開けるとするかぁ」




【タカナへのお仕置きが一段落したところで、マツトモは最後の引き出しネタに挑む。そこには何が入っているのか――】




「えーと…どこや?」

「番号的に、そこの小さい棚のですね」

「ほなさっさと開けて終わりにしてくれや……」

「中に何が入ってるんでしょうね」

「……また罠仕掛けられてたり…」


「余計な事言わんでやもう……――えいっ。 あ、普通に開いた……んん??」


「何入ってたんですか?」

「もう一個鍵と……これ」

「え? ちっちゃい…プレゼント箱っすか?」

「リボンとラッピングまでしっかりされとるし…」

「んーと…その鍵の番号は向こうのちょっと大きめの棚のっすね」



「とりあえずこの鍵も開けてみよかぁ。 …こっちも普通やな。で…え、もう一個?」

「うわ、またプレゼント箱や…!」

「しかも長方形でおっきめの……!」

「リボンの向き的に、縦置きっすね……」

「箱と言うだけでもう怖いのに……!」





【マツトモが見つけたのは、大小二つのプレゼントボックス。これは一体――?】





「……じゃ、開けてみるで…?」

「はい…!」

「お願いします…!」

「なんか飛び出してくるかもな…」

「…気をつけてください…! ハッピーボーイとかかもしれませんよ……!」

「「「ふっ…!」」」



\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』



「余計な事言うなってのホーセぇ! だぁっ…!」

「入ってる訳ないでしょこんな小さい箱に…! おぅっ…!」

「いや逆に入っててほしいわぁ…。そっちの方が安全やもん。 うぐっ…!」


「あ。お仕置き隊長のアナウンス再開したんすねぇ」

「うわホーセさんわざとらし…。 ……僕、ちょっと彼女の声怖なってきましたわ…」










「―――じゃ、改めて…。 小さいほうのプレゼント開けるで?」

「お願いしますー」

「ひと思いにぜひ…!」

「……特にリボン取っても包装外しても何もないな」

「それで、肝心の中身は……?」



「……これや」

「……? なんやそれ? 星か?」

「星…ですね。けどこれって…」

「あれじゃないですか? クリスマスツリーの上につける…!」

「あぁ、あの星飾り! ……なんでそんなもんが…?」



「――ということは、こっちの縦長のプレゼントの中身は…」

「お? あー! ツリーやん!」

「机に置けるサイズのクリスマスツリーや…!」

「しかも色々と綺麗に装飾されとりますね」

「あでも、一番上の星飾りだけ無いなぁ」





【なんと入っていたのは、クリスマスツリーとその星飾り。 この二つが示すのは――】





「……付けろ、ってことやんな…?」

「……で……すよねぇ…?」

「絶対なんかあるやろ……」

「ハッピーボーイ……」

「もうそれは良いですって……」


「―よし、乗せるで…! せーの…よいしょ!」


「うわっ! ツリー光り出したぞ!?」

「え!? なんですこれ!? なんですこれ!?!?」

「星とか、オーナメントとかがピカピカって…!」

「―ん!? 音が…! シャンシャンシャンって音がどっからか!?」





【ツリーをセットした瞬間、突如巻き起こった異常現象。すると直後――】





「……あれ? シャンシャン音が収まった…?」

「どう聞いてもクリスマスの鈴?の音でしたよね…?」

「――ん!? 待ってください…! なんか廊下から聞こえて…!」

「ホンマやな…! けど、何の音やこれ…?」

「色々ぶつかりながらな…なんか慌ててるような感じで……あ、扉が!」




「ほっ…ほっ…ほおっ…! め、メリー、クリスマス!! はあ…はあ…ほおぅっ……」



「うえっ!?」

「は、えっ!?」

「嘘やん…!?」

「え、本物…!?」

「んなわけ……ない訳ないんか…?? えぇえ…!?」




「「「「「サンタクロースさん!?!?」」」」」








【なんと、息せき切って入ってきたのは、かの聖なる存在、サンタクロース。 しかしその格好は――】




「…マジもん…よな…? 誰かのコスプレってことないよな…?」

「いや違うと思います…! 御顔そうですし、雰囲気も凄く清らかで優しい感じで…!」

「それは確かに俺も感じんねん…。 ……けど、あの恰好…」

「そこなんすよ…。赤いサンタ服に白い大袋持ってるんですけど、なんか乱れてるというか…」

「髭もボサボサですし、帽子に至っては思いっきり外れかけてますし……」



「ほぅ…ほぅ…ふう…。 いやぁ、悪いのぅ。 ワシ、少しあわてんぼうでの。見苦しい姿を見せてしまったわい」



「服を直し始めましたね…」

「あ、凄い…! 髭、撫でただけでふわっふわに…!」

「やっぱり本物なんかな…?」

「本物やとしたら、サンタさんにマジで何させとんねん…! あのサンタさんやぞ…!?」

「……あわてんぼうというか一周回って遅すぎるというか……」






「ほっほっほ。どうやらワシが本物か疑っているみたいじゃのう。どれ、信じてくれるかわからんが……これに見覚えがあるかの?」



「え。 サンタさん、袋の中を探って…」

「五個、なんか取り出しましたよ…?」

「……紙束…??」

「古ぼけてるのと新しめなのが混ざってる感じで…?」

「……なんか見覚えがあるなぁ…」



「これがハダマ家、こっちがマツトモ家じゃな。それでこれが――」



「あ、どうも…。 えっ!? うわこれ…!!」

「願い事書いたクリスマスカードですやん!? 僕が子供の頃に書いたヤツ…!!」

「うわわ! ウチの子供が書いたんのもしっかり入っとりますよこれ!」

「マジやん…! 書いた記憶あるし、欲しいモン貰った記憶あるでこれ!?」

「本物や……! 本物のサンタさんや!!!」



「ほっほっほっ!信じてくれて何よりじゃよ! ところで、何か食べたいおやつはあるかの?」



「えっ…? じゃ、じゃあ……ケーキ……?」



「ほっほっ! これかの?」



「あっ!? それ、お気に入りの店の!! しかも、今食べたいって思ってたヤツ…!」



「ほれ、召し上がれ! さ、他の皆は何が欲しいかの?」



「「「「……本物やぁ……!!!」」」」












「――ほっほっほっ、さてな。おやつが行き渡ったところで、プレゼントを渡すとするかの」



「えっ。今頂いたこれがそれじゃ……」



「それはお詫びじゃよ。慌てた姿を見せてしまったからのぅ」



「えぇ…! そんなええですのに…!」

「そうですよ…! 毎年有難いプレゼントをくださってるのに…!」



「ほっほっほっ。大人になってもええ子達じゃのぅ。 追加でコーラをあげるとしようかの!」



「ふっ…! いやなんで…! ……あっ…」




\デデーン/
『ハダマ、OUT!』




「うわサンタさんの前でも続行なんですね…」

「サンタさんにケツ叩かれるの見られるのは恥ずいわぁ…」

「…ん? あれミミック来ないですね…?」

「ホントや…。 ――へっ? サンタさんの袋がモゾモゾって…わぁっ!?」


「嘘やろ!? なんでそっから…袋の中からミミックが出て来るねん!? ばぁっ!?」




\デデーン/
『マツトモ、タカナ、エンドオ、ホーセ、OUTぉ!』




「ホントになんであそこから出てくるねん…! あぐっ!」

「しかもミミック、クランプス罰担当のサンタ従者みたいな角つけてますし…。 どぉっ…!」

「そして箱じゃなくて、ソリにはいっとりますやん! ばぅっ…!」

「はぅっ…! そんで袋の中にすいーって戻ってくし……。なんですかあれ……」










「――普段は年に一度の子供達へのプレゼントなんじゃがな。 五人共今日は頑張っておるし、そのクリスマスツリーも灯して貰ったのじゃから、特別じゃよ」



「うわ嬉しい…!」

「プレゼント貰うのなんていつ以来やろ…!」

「懐かしー…!」

「……サンタさん、クランプスミミックに関してはノーコメントなんすね…」

「あの袋の中、どうなってんやろなあ……」



「よっこいせと。 …しかしのぅ。慌てていたせいか、何を入れたか忘れてのぅ。 全部一緒だった気がするんじゃが……」



「……うわ急に怖なってきた…!」

「サンタさんお茶目ですわぁ……」

「変な物入ってませんように…!」



「まあ、開けてみてのお楽しみじゃのぅ。 ほれ、メリー・クリスマスじゃ!」



「おー立派なプレゼント箱…!」

「何入ってるんでしょ…?」

「ミミックやったらヤバいなぁ…」

「中身は全部一緒だって仰ってましたよね…?」

「…じゃあ、せーので開けるか? ええか……せーのっ!」



「――ん!?」

「あ、これっ…!」

「フッ…!」

「いやちょっとぉ…!」

「――?」



「「「「さっきのお仕置き隊長マスクやんかぁ!!!」」」」




\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUT!』




「「「「痛ぁっ…!」」」」









「おぉ、それじゃったそれじゃった。 早速、被ってみるかの?」



「ふっ…! いや…。 あ。 だぁっ…!」

「ちょっと…被りたくないっすね……」

「せやなぁ…。 だってこれ被ったら……」

「僕みたいになりますよ…! ケツキック……!」


「いやでも、折角サンタさんがくれた物ですし……」

「被んなきゃ失礼ちゃうか? なあタカナ」

「いやまた僕ですかぁ…!? 勘弁してくださいよぉ…!」

「でも今回は違うかもしれへんよ。 隊長、見逃してくれるかも」


「で、す、か、ね……? じゃ、じゃあ……よっと…――」




\デデーン/
『タカナ、ウサキックっぅ!!!』



「いややっぱりじゃないですか!!? 勘弁してくださいって!!  待ってイスタ姫様…!! 嫌です嫌嫌嫌―――ァッッッッッッッッ!!!!」




\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、ホーセ、OUTぉ!』












「ててて…。 ケツ真っ赤になってる気がするわぁ…」

「タカナは顔も真っ赤ですけどね……」

「そや。 おいホーセ、お前さっきこのマスク欲しがってたやろ。つけてみい」

「え゛っ。 嫌ですっ!」


「ふっ…! 即答やなぁ。 …あ、またやったわ…。  痛あっ…!」

「なんやお前、サンタさんのプレゼントを無下にするんか?」

「プレゼントでも嫌なモンは嫌ですよ! というか……」

「…あれ? ホーセさん、マスクないじゃないですか?」


「いやそうなんよエンドオ。 俺にだけ別なの入ってて……」

「そういえばさっき、ホーセだけ反応おかしかったな」

「何入ってたん?」

「え? なんですそれ? チケット?」



「ようわからんけど……『世界の半分をあげる券』って書いとりますわ……」








「……何やそれ?」

「僕にもさっぱり…。サンタさん、これって……?」



「はて? なんじゃろうなそれ? 見覚えがないがの……」



「えぇ…? サンタさんでも知らない物って……」

「なんか怪しいわぁ……」



「よくわからんが、一度プレゼントしたものじゃからのぅ。 そのまま貰ってくれんかの?」



「はぁ。じゃ、頂きますー。 …ぶっちゃけ、隊長マスクよりかは良い物っぽいですし」

「っぁ…はぁ……はぁ……。 ホーセさん……このマスクと…交換しませんか……?」

「あ。タカナ復活したで」

「そんで早々にマスク押し付けようとするなや!」

「ふっ…! 道連れ増やそうと必死か……ぶふっ…!!」



\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、ホーセ、OUT!』











「――ほっほっ…。 ふぅむ、プレゼントはお気に召さなかったようじゃのぅ…」



「い、いえいえサンタさん! 充分堪能させて頂きました!」

「そうですそうです! 美味しいおやつも頂けましたし…!!」

「懐かしいカードも見せてもらえましたし……!!」



「優しいのぅ。 じゃが、ここで終わってしまえばサンタクロースの名折れ。 もっと面白いプレゼントを…!」



「良いですってもう…!」

「既にアカン予感しかしないんすよぉ…!」




「ごほん。ではいくぞい……! これならどうじゃハダマくん! 『カツラ三点セット』!」


「いやそれヘルメーヌ様のやないすか…! 結局俺用のおかっぱ交っとるし!」



「これは如何か、ホーセくんや! 『お着替え二着セット』!」


「うわちょこちょこ出てるスライム着ぐるみ……色、なんで金ピカ銀ピカなんです!? 経験値多そうな…!」



「マツトモくんや、ならこれは! 『伝説の武具付属、身体強化薬』!」


「僕が常用してるプロテインじゃないすかぁ! 名前書いてありますもん!」



「むむ…タカナくん、これなら! 『今回引き出しに入れるか迷ったVTRシリーズ』!」


「それ絶対ケツキック関係じゃないですかね!? 絶対要らないです!!」



「エンドオくん…! 『㊙、女性遍歴…――』」


「ちょ、ちょっと待ってください!? 僕のだけ別ベクトルのヤバさしてませんか!?!?」




\デデーン/
『全員、OUTぉ!』



「「「「「だぁあっっ!!」」」」」





「―――ほぅむ…。 これらも駄目とはのぅ…。 どうやら慌ててきたせいで、ワシの力が鈍ってしまっているようじゃな…」



「多分そうですよ…!」

「一回お帰りになって、ゆっくり休んでくださいって…!」



「これが最後じゃ…! 最後にチャンスを…!」



「いやもう勘弁してくださいって…!!」

「うわ袋の中がモゾモゾって…!? 何を――」





「―――フハハハ! 新入りの五人よ、とうとう決着の時が来た!」





「……えっ!? この声……!」

「もしかしなくとも……!」

「「「ドラルク公爵!!?」」」




「如何にも、吾輩である! さあ五人共、いざ勝負を―――むごっ!!」




「これは流石にプレゼントにならんのぅ。ナシじゃな」






「――へ? ……ふふっ…!」

「今、ドラルク公爵が顔を出そうとした瞬間…サンタさん…!」

「思いっきり袋の奥に押し込んで黙らせたやん…!!」

「流石サンタさん、強いわぁ…」
 
「公爵可哀そう……。 ふっ……!」




\デデーン/
『全員、OUT!』



「「「「「だぅっあっ……!!」」」」」










「うーむ……。本当に調子が悪いのぅ……。 ―ん? ルドルフ、どうしたんじゃ? あぁ! そういえばこの後予定があったんじゃった!」



「あ…。扉から赤鼻のトナカイさんが…」



「すまんのう五人共、ワシはもう行かなきゃならんのじゃ。大した事できずに悪いのぅ。 次に会う時までには本調子に戻しておくからの」



「あー…。帰ってしまわれたわ……」

「なんというか……嵐みたいな勢いでしたね…」

「だとしたらブリザードやなぁ…。サンタさんの季節的に。……ふふっ…!  あっと…ぐあっ!」

「いや、というかな……。サンタさんに…子供達の夢に、何をさせとんねん!!! 泣くで皆!!」

「これマジで関係各所に土下座せえへんとマズい奴ちゃうすかね…?」





【こうしてあわてんぼうのサンタクロースは去っていった。 しかし……このプレゼントの一つが、この後とんでもない事態を引き起こすことは、まだ誰も知らない――】



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