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顧客リスト№40 『サキュバスの淫間ダンジョン』

魔物側 社長秘書アストの日誌

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えーと……本日もまた依頼を受けて、私と社長はとあるダンジョンに来ているわけなのだけど…。

「あ゛っ♡ い゛っっ♡」

…いつもならば、記録がてらダンジョン内部の様子や、依頼主との会話、依頼内容等を紹介をするのを習慣…としているが…。

「う゛っっ…♡ う゛ぅふぅっっ♡…!」

……うん…、まあその…今回ばかりは詳しく紹介するのを止めるべきなのかなーって…思っていて…。

「え゛ぇへぇ…♡」

………どういうことかと言うと…ちょっと説明が…あれで…。なんというべきか、その…『レーティング』というか、制限的にアウト風味というかひっかかりそうな…。

…………いや、わかってる。通じにくいってことはわかってる…。でも、これ以上オブラートを剥がすわけにはいかない気が…。だって…。

「お゛ぉおぉほぉッッッッッッ♡!♡!♡!♡!♡!♡!♡!♡!!!!」


あ゛ーーもうっ! うるさっ!!! せっかくの配慮が台無し!!






失礼…、ちょっとこの場の空気にとある問題があって…物理的にも、精神的にも…。

だからちょっと息苦しかったのだけど、ついに吹っ切れちゃったというか…。


…いや、もういいや…。全部明かそう…。



では、改めて…。ここはとある洞窟に作られたダンジョン。規模としてはちょっと小さめ。


それなのに、冒険者は次々とここへ吸い寄せ…ごほん、侵入を試みている。その数は、そんじょそこらのダンジョンを優に上回っている。

希少な魔物狙い? いいやそれは違う。 ならば、レアなアイテム狙い? 当たっている。…半分ほど。

ただ、そのレアなアイテムも強い武器防具では…いや、一応それも用意されてるらしいが…。…あー、いや、その…。



…はぁぁぁ…。全部明かそうって言った手前、今更渋っても仕方ない。覚悟を決めよう。

ここは『淫間ダンジョン』。悪魔族が一種、【淫魔】『サキュバス』が棲まう…Hな、ダンジョン…である…。


…というか、薄々察していたでしょう…? だって…周囲の至る所からずーっと、よがった喘ぎ声が聞こえてきているのだから…。

…構造同じだからといって、『サキュバス×女性』の場所に来たのが間違いだったかな…。いや、多分マシなのかも…きっと…。





では再々度仕切り直して…。

サキュバス―。先程も述べた通り、彼女達は私と同じ悪魔族。ただ、姿や生態はそこそこ違う。


まず姿だが、悪魔族の特徴は角、羽、尾。私にもついてるのだけど、彼女達サキュバスは形が違うのだ。


一つ目は角…そこは同じである。まあそもそもが個人個人で形状違う部位だから。

とはいっても、実はサキュバスの角はやけに滑らか。つやつや…いや、てらてら…?そんなのが相応しい光沢具合をしている。


二つ目、羽。悪魔族の羽はコウモリみたいなものだが、サキュバスのは色が違う。

羽の飛膜部分…あの薄いトコがまっピンクなのだ。赤っぽかったりショッキングピンクだったりもするけど、ピンクなのは絶対。


三つ目、尾。悪魔族の尻尾といえば、鞭のような細長いアレだが…。

サキュバスはその尻尾の形が、穴あきハート型になっている。それはもう、綺麗なハート型。それを上手く使って色々できるらしいが…。


加えて、サキュバス特有の特徴として、下腹部についている紋様…『淫紋』がある。それこそハート型だったり…なんていうか…説明が憚られる形だったり…。





…え…?もう一つ特徴があるだろうって…? …その通り。サキュバスの服装である。

いやもう、ご存知の方は多いだろうから、説明は割愛…。いや説明するって言ったの私ですよね、はい…。


一言でいえば、『THE・エロティック』。周りを見渡しても、私が今着ているスーツのように着こんでいるサキュバスは全くいない。

…例えば、ガータベルト下着だけだったり、胸の谷間が丸見えの穴あき袖なしトップスだったり、完全紐なビキニだったり、えっぐい食い込みボンテージだったり…。

それは、序の口。寧ろ露出を抑えている方。もっとヤバいのはあっちにいるサキュバスたち。


お分かりだろうか…、全身透けタイツ、前掛けこそあるけども横から見ると履いていないの丸わかりな服、ニップレスに前張りのみ、中にはタオルを乗せているだけとかいう強者も…。



…おや。あのサキュバスは私のようなスーツ……じゃないな、あれ…。明らかに丈が小さいし、ボタンは全部千切られ胸が大きく曝け出されている…。

むこうのは、社長と同じ白ワンピ…。…!? いや違う…! とんでもなく透けてるシースルー…てかあれ、見えてない…!? 何かとは言わないけど、絶対見えてる!!!


―と、まあ…『謎の光』とか『どこからか湧いて出た白い煙』とか『闇のような黒靄』とかが活躍しそうな服装している人達ばかり。その全員がスタイル良いし、美人だし…。…何故か悔しい…。








…話を戻して、生態の方を…。サキュバスは別に普通に食事とかもするけど、その他に好むものがある。

それは『精気』。簡単に言えば、生物が持つ活力エネルギーという感じ。特に人間がそれを豊富に持っているらしいので、彼女達は冒険者を狙うのだけど…。

どう絞るか、なんて…説明……できるか! 一発アウトに決まってるでしょう!!



コホン…また取り乱してしまった…。まあ言うと…××とか、×××××××とか、×××とか、×××××とか、××××××××××××とか…。

…一応『ピー音』で掻き消してみたが、そんな感じ…。


…モザイクか『見せられないよ!』な看板が欲しくなる……。







そんな淫魔たちが営む『淫間ダンジョン』。その内装も中々のもの。『そっち系』という意味で、である。…いや、『えっち系』…?

ぱっと見ただの岩づくりだが、奥に進むと妖艶なムードの暗めピンク空間が突然現れる。

そして空気も変わる。ピンクの霧…媚薬がたっぷりと含まれているそれが漂い出すのである。

常人なら一呼吸で。耐性がある人でもそう長くは耐えられない、甘ったるぅい感じの空気。私達でさえ、魔法使わないと視察がまともにできないぐらい。もはや瘴気。


そんな中、サキュバスたちは問答無用で襲い掛かってくるのだ。


勝てれば金銀財宝だけではなく、サキュバス特製の薬だったりアイテム類を手に入れられる。…うん、その中には勿論『媚薬』も…。しかもすっっごく強力な。

だけど、それが出回ることは滅多にない。持ち帰れる冒険者がほとんどいないのである。大体は死に体(意味深)で脱出してくるか、復活魔法陣送りになるかだから…。


しかしその分、サキュバス薬の取引価格は跳ね上がっている。だから一攫千金を目指して、今日も冒険者達はこのダンジョンに潜ってきているのである。


…………そういうことにしといてください……。









さて…そんなダンジョンの主にして、私達への依頼主はどんな方かというと…。

「う・ふ・ふぅ♡ どうかしらぁ?アストちゃあん♡ たぁっっっっぷりナカ内部を、堪能して貰えたかしらぁ?」

「ひゅっ…?!」

み、耳が犯さ…!? ねっとりと囁かれた甘い声が、耳から脳に入って…全身がゾクゾクと…!!


思わず軽く跳び逃げ、背の方向…囁いた相手のいる方向へと向き直る。そこにいたのは―。

「あぁん♡ 逃げちゃダァメ♡ 一緒にイ・イ・コ・ト商談の続き、しちゃいましょうよぉ♡」

たわわな胸を強調するようにムギュリと寄せ、自身の指をねぶるように舌を這わせる妖しげな仕草。

周囲のサキュバスよりも一際抜群のプロポーションと、むせ返るほどの色香を淫蕩に発しているサキュバス。


彼女こそ依頼主。サキュバスの『オルエ』さんである。






「ほぅら♡ こっちにいらっしゃあい♡」

指先と腰をクイっクイっと曲げ、手招きするオルエさん。私は恐る恐るながらも、彼女へと近づく。

しかし…一部からは『サキュバスクイーン』とも呼ばれているオルエさんの姿はまさに妖艶そのもの。サキュバス族の特徴の角や羽、尾はなまめかしさすら感じられるほどに照っている。

体つきも…とてつもなく肉感的で蠱惑的。プルンと揺れる胸、ほどよく引き締まったお腹、むっちりとしたお尻や太もも…そのどれもがツヤめいている。コケティッシュという言葉がこれ以上似合う人はいないだろう。


そんな彼女の服装も、やはりサキュバス。上は羽の形を模したような、胸の一部しか隠せないニップレスとチョーカーのみ。そしておへそを囲むようにクロスさせられた紐…というか糸…。

足には黒い長タイツ。そして極めつけは、もはや局所一点しか隠せてないGストリングショーツ。ほとんど着ていないと言って差し支えないその服装は、下腹部の大きく黒ピンクな淫紋を華のように引き立たせている。


以前訪問した魔女のダンジョンの主、『マギ』さんもとてつもなく妖艶だった。だけど…オルエさんはそれを凌ぐ。正しくは、エロティック全振りというか、フェロモン増しましというか…。


だって…さっきから変な音が彼女から聞こえてくるのだ。『どたぷんっ♡』とか『ゆさゆさっ♡』とか『むちっ♡』とか…。幻聴かと思ったけど、これ本当に聞こえる…。





「さあ、こっちへ…♡ まずは、お互いをよぉーーーく知るところから始めましょう♡ ね…♡」

女である私でさえ、生唾を呑んでしまうオルエさんの媚態…。あ…あれ…? ふらふらと足が…。

「うふふ♡ つーかまえーた♡ じゃ、あ…♡ ハダカの付き合いと洒落こみましょ…♡」

そう言いながら、オルエさんは私の上着に手をかけ、ボタンをプチリ、プチリ―。


パカッ!


「いい加減に…しなさーいッ!! オルエ!最初に言ったわよね!? アストに手をかけるならブッ飛ばすって!! この子は私の!!」

当然、抱えていた宝箱が勢いよく開く。飛び出してきたのは社長。オルエさんを怒鳴りつけると、今度は私の両頬をパチンと叩いてきた。

「アストもしっかりなさい! 『チャーム魅了』直に食らってるんじゃないの! ほら、さっさと目を覚まして対策魔法かけ直す!」

「…ぇ…  ――ハッ!!?」

……あ、危な…!!






「いいじゃないのよぉミミン、味見ぐらいさせてくれてもぉ…♡ これだけの上玉、私でも滅多に捕まえられないんだから♡ 別に寝取るわけじゃないんだしねぇ♡」

「うっさいわねぇ…。やっぱりアスト連れてくるべきじゃなかったわ…。アンタが頼み込んでくるから渋々連れてきたけど…。アンタのチャーム、特別製なんだし…」

「うふふふふ…♡ でも、凄いわねぇアストちゃん♡ 多少の対策や耐性程度なら、最初の囁きで一発でキメられたのに♡ 流石ミミンが見初めた子…♡」

「はぁ、もう…。誉め言葉なんでしょうけど、快く受け取れないわよ…」


気心の知れた仲のように、笑い、肩を竦めあうオルエさんと社長。実際に2人は古馴染みらしい。

だからオルエさんのチャームには気をつけろって口酸っぱく言われてた。…まあ思いっきり食らってしまったのだけども…。



「ところで、アストはどれぐらい?」

「そうねぇ…♡ 90点ってとこかしらぁ♡」


ん、何? 謎の社長の問いに、オルエさんは謎の点数評価。その、どこかで微妙に聞き覚えがある品定め的な数値は…? ハートのせいで特に…。


「超高いわね。ほぼほぼ最高レベルじゃないの」

「えぇ♡ それぐらい魅力があるのよ、アストちゃんは♡」

「あのー…なんの話ですか…?」

社長達の会話に横入りし、聞いてみる。と、オルエさんはにっこり笑みを。

「貴女の『美味しそう度』よ♡」


…へっ!? か…狩られる…!?



「その引きつった顔…♡いやん、ゾクゾクしちゃう…♡!! ねえミミン、やっぱりちょっとぐらい…!」

「だーめ」

「あん♡いけずぅ♡ でもそんな冷ための返しも良いわぁ♡」

「相変わらず無敵ね、オルエは…」

ビクンビクンと身体を震わせるオルエさんを、社長はフッと笑う。…なんかよくわからない内に、無事に済んだ…?



「…でも、100点じゃないんですね」

と、ほっとした安心感もあって、私は思わず口走ってしまう。すると、オルエさんはにんまり。

「満点をあげたのは今まで2人しかいないのよ♡ 今の魔王と、ミミンだけ♡」








「で? 確かに必要になったら気軽に連絡してって言ったけど…。うちのミミック達をどんな使い方したいの?」

話はようやく商談に。オルエさんはポンと手を合わせた。

「普通に冒険者を捕まえる役割もだけど、考えていることがあるの♡」

いうが早いか、オルエさんは社長の耳に口を寄せる。と―

コショコショ…コショ…
「…んっ…。 …つっ…。 そ、んな…使い方…んくっ…!」

…社長が、喘いでる…。我慢しながら、囁きを聞いてる…。オルエさんの話し方的に、そうなっちゃうのか…。


とはいえ介入することもできず、そのASMRの成り行きを呆然と眺めていると…。

「―ひゃぅんっ!? 今なんで舐めたの!?」

「バレちゃった♡ 美味しそうだったから、つい♡  甘かったぁ…♡」

ビクッと顔を逸らす社長。明らかにてへぺろ以外の要因で舌を出してるオルエさん。社長が手玉に取られてるとこ、初めて見たかも…。



「どうかしらぁ? 中々イケちゃえる案でしょ♡」

「うーん…。まあ流石サキュバスって使い方だし…。適任な子、いるし…。『攻め』というか『責め』が大好きなミミック達が…」

「ほんとぉ、じゃあその子達で♡ あと群体型の子達って、毒を弱められないかしら♡ 体の感覚はあるのに、丸一日抵抗できなくなる毒なんて最高♡ 好きにねぶり尽くせちゃう♡」

「…まあ、出来るけど…。というか、ちょっとオプションと元薬を貰えれば媚薬毒もいけるわよ」

「嘘…♡♡! その子達も派遣して欲しいわぁ♡ 代金は幾らでもあるわよ♡ 私達特製アイテムだけじゃなく、ここに入ってきた人が残していった道具類や、貢がれたお金とか♡ 多めに支払っちゃう♡」


頼み込むオルエさん。社長は頭をポリポリ。

「いや、別にそこは気にしてないんだけど…。言うまでもないけど、定期的にしっかり浄化魔法をかけること! じゃなきゃミミック達が淫に飲まれちゃうし」

「勿論よぉ♡ 刺激に弱いトコに触れるように、やさしーく、大切に扱うわ♡」

「…相変わらず、なんか危ないわよね。アンタの発言」








契約書の記入が済み、諸々の手続きも終了。そんな折、オルエさんは私にずいいっと迫ってきた。

「ところでアストちゃん…♡ 貴女、もっと露出の多い服、着ないのかしらぁ♡」

「へ…!?」

「おんなじ悪魔族なんだから、着てる服わかるわよぉ♡ 私達ほどではないにしろ、お家ではそこそこなやつ、着てるでしょう?」

「う…!」

何も言い返せない…。だって、その通りだから…。実家に帰った時とか、それが顕著だったりする…。

だって、それが伝統着だし…着心地はかなり良いから…。実は会社でもたまに着ているけども…。


「うふふ…ふふふふ…♡」

と、オルエさんは艶めかしい笑みを浮かべる。瞬間―。

「―! 消え…!?」

オルエさんの姿が、ピンクの靄となって消えたではないか。どこに行ったのかと探そうとするが、それよりも先に―。

ふぅっ むにゅうっ
「ひゃぁっ!?」

耳に、生温かい息が…! 背中に、すっごく柔らかな感触が…!

「こぉんな立派なカラダをしているのに活かさないなんて、もったいなぁい…♡」

い、いつの間に…背後に…!


「オルエは魅了魔法の他に、幻惑魔法も得意とするのよ。気づいた時には時すでに遅し、それがオルエの戦法ね」

社長はトントンと書類を整理しながら、そう教えてくれる。助けてくれる気は…ない…!? まさか、本当に味見させる気…!?


「ほんと、良いカラダ…♡ 好き放題弄びたくなっちゃう♡」

つつぅ…
「ひぁっ…!?」

う、うなじから首筋にかけて、ゾワゾワする感覚…! オルエさんの爪で、心底柔らかく引っ掻かれている…!

「感度も抜群…♡ やっぱり95点あげちゃおうかしら♡」

いやここで点数あげられても…!! ひぅんっ…耳を甘噛みされ…!

「もっと…もっとよ…♡ もっとカラダの力を抜いて…蕩けて…トロトロになって…♡」

キュッ…
「あっ…くぅっん…!」

だ…駄目…! 羽の根元は…弱くて…! やっ…!尻尾はもっと…! ひゅっ…!?な、何その触り方…!手や尻尾同士を絡ませて、擦るように…! そ、それ駄目…!!

「えい♡」
プチッ

――!? ぶ、ブラが外れ…!? 服の上から、外されたの…!?


「それ♡」
スルッ

――――――!?!? いやそれどころか、外に引っ張り出され…!? えっ、嘘…!?早業すぎる…!?


「ふふふふ♡」
むにゅっ

「ひゃぁぁっっ!?」

ちょ、直接…! 直接、胸を触られてる…!! あっという間に、オルエさんの手が服の中に張って来てるぅ…!

「形も、ハリも素晴らしいわぁ♡ 感度なんて、言うまでもないわねぇ♡」

…っや…! 止めっ…クリクリってするのは…! んっ…うっ…! あっ…♡

「さて…♡ こっちは…♡」

―――――!!! オルエさんの手が、私のお腹を撫でながら、下に…!! 待ってそれ以上はほんとに駄目……んあっ…♡


「―あらぁ…? これって…♡ この感じって…♡」

…と、オルエさんは再度私の耳に顔を。そして、快感を感じるほどの声で囁いてきた。

「アストちゃん…? もしかして、周りの皆の喘ぎ声を聞いてただけでぇ…♡」

「―――ッ…!」

「ふふ…うふふフフ…! 貴女、Mの気質ねぇ♡それも、かなりの…♡ やっぱり、向こうで味見を…!」


ゴスンッッッ!



「あうっ♡」

突如、オルエさんの頭に宝箱のクリティカルヒット。その勢いで彼女は軽く吹き飛ばされ、私の身体をまさぐっていた手や尻尾は引き抜かれた。

「オぉルぅエぇええ…!! アンタ、やったわね…!私に幻惑魔法かけたわね…!!」

スタンと着地した宝箱…もとい社長は完全に怒声。どうやら、気づかぬ内にやられていたらしい。よかった…本当に味見に差し出されたわけじゃなかった…。


ほっと息つく私、がるると唸る社長。一方のオルエさんは楽しそうに起き上がった。

「あらー…♡ せっかくこの日、この瞬間のために練りに練っていた魔法、もうバレちゃったのねぇ♡ 流石、ミミンね♡」

「平常運転のようで安心半分、苛つき半分よ…! これ以上許可なくアストを狙うなら、本気で怒るからね…!」

手を幾本もの触手…それも槍や剣のように尖らせ戦闘態勢をとる社長。オルエさんはひらひらと手で降参を示し、一言。

「なんならミミン、貴女が相手してくれれば一番なのだけど♡」

「契約書、破り捨てるわよ?」

「ごめんなさーい♡」










「もう…!あの子ったら…! 普段は良い子なのに、時たまあんなふうに強硬手段に出るんだから…!」

帰り道。ぷりぷりと怒りを露わにする社長。と、申し訳なさそうに蓋の陰から顔を私の方に向けた。

「アスト、大丈夫だった? 怖くなかった?」

「えぇ。まあ未遂ではありましたし…。無理言ってついてきたの私ですしね…」

私が呼ばれているということを聞き、そして相手が社長の友達と知って、渋る社長を説得したのは何を隠そう私自身なのだ。

正直、あんな目に遭う覚悟は出来ていた。…結果、予想をはるかに上回るテクニクシャンだったけど…。




「それより、どうしますそれ?」

負い目を感じてしょぼくれる社長を案じ、話を無理やり変える。とはいっても、本当に気になっていることではある。

「あぁ、これね…。どうしようかしら…」

社長が取り出したのは、大きめの瓶に入ったピンク色の液体。…サキュバス特製の媚薬である。しかも、最上級の。一滴使えば、数日の間発情状態になってしまうという第一級劇薬指定な代物でもある。

名称を『サキュバスの露』というが…まあそれは置いておこう。なんか名付け理由は嫌な予感するし。



オルエさんは私へのお詫びとして、金銀財宝や色んなアイテムを大量にくれた。全部冒険者が持っていたものらしい。

サキュバスたちにとってお宝はそういったものじゃなく、冒険者そのもの。だから財宝は精々冒険者を釣るためだけの餌な模様。要はあんまり必要ない物みたい。


だが、それだけでは済まなかった。加えて、サキュバス特製の薬やアイテムまで半ば無理やり持たされたのだ。その一つが、その『サキュバスの露』である。

因みに他のサキュバスアイテムは、袋に詰め込まれ、腫れ物のように社長の箱の奥に追いやられている様子。


「売れば良いんでしょうけど…この量を一気に捌くのは色々と危険な気がするわね…」

「となると…それまで素材倉庫の危険物金庫に厳重保管ですかね」

「そうねー…。あと、これどうする?」


と、次に社長が引っ張りだしてきたのは、2着の服。…いや、服と言ってはいけない代物…。

『これでお洒落してね♡』とオルエさんに渡されたのだが…なんともサキュバスらしいというか…。


…『ベビードール』という、所謂ナイティランジェリー夜用下着なのだが…持ち上げると、反対側が綺麗に透けて見えるのだ…。

それが2着。社長にぴったりサイズと、私にぴったりサイズ。…さっきオルエさんが触ってきたとき、さらっと3サイズ計測されてたようで…。


「…あの媚薬もそうだけど、使いたければ自由に使って良いわよ?」

そう付け加える社長。私は苦笑いを浮かべ、答えた。

「とりあえず全部、危険物金庫の中に放り込んでおきましょう…」
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