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第一章 少年の日々
0-17. 武家屋敷の縁側
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「……どうしたのです。こんなに本を広げて」
制服を着たままスナック菓子を片手に漫画をパラパラと読む……ある意味模範的な女子高校生を見下ろし、着物姿の少女はため息をついた。
顔の造形は瓜二つだが、ブレザー姿と着物姿のせいか、雰囲気はまったく異なる。
「んー、実はな、期末テストが近い」
「……なるほど。いつもの現実逃避ですか」
「違うぞ!? モチベを上げるためにな、範囲の漫画とか小説を図書室から借りてきた!」
それを現実逃避だというのです……と呆れた瞳で見ながらも、そもそも通っていない身としては口出しがしにくい。
「確かに、この前も範囲だと言って……べる……ベルセルクの槍……のような題名の漫画を読んでいましたね」
「姉さん、それどういう少年漫画だ? この前の範囲はフランス革命とかだぞ? ベルセルクの槍ってなんだ?」
「…………少女漫画だったかと思われます」
「あっ、ベルばらかー! 惜し……くないな! 全然!」
姉と呼ばれた方は、頓珍漢なことを言いつつも、目に付いた本を1冊拾い上げる。
「おや、この訳者……美和殿のご親戚でしょうか」
「誰だ? 美和って」
「おばあ様から聞いたのです。花野美和殿……確か、先代のお知り合いだったとか……」
「花野紗和と花野美和……じゃあ姉妹とかかもな。なんか、わが校出身みたいなコーナーできてた。大上次郎のコーナーもあったぞ。サイエンス雑誌ばっかりだったけど」
「さいえんす……?あ、ああ、科学ですね。なるほど」
取り留めのない話をしながら、いつの間にか姉の方も本を読み始める。
「……この話……2つ、あるのですね」
「あ、それ、話が途中から変わるっぽい。二次創作かな?」
「ふむ……平家物語も写本で内容が変わりますから、何とも……。どこまで読んだのですか?」
「えーと、ジャンとルマンダ……っていうかルインがなんか痴情のもつれしてるとこ」
「……つなぎらしい解釈です」
呆れたように言いながらも、姉の方も文化がよくわからないらしく、結局は流し読みになる。
「……話は確かに違いますが……ジャン殿がルイン殿と因縁があったこと、ルイン殿がジャン殿の生存を願ったことは確かなようです。それと、本来の血筋ですね」
「……血筋かぁ……。……おれ、ジャンが死んだとこからなんか悲しくて、放置してる」
「……そちらのジャン殿は、生きていればどうなったのでしょうね」
「んぇ?」
「いえ……おじい様は、確か、実の兄上に……」
ぽつりぽつりと紡がれた言葉は、その家柄が血塗られていることを思い起こさせるものだった。
「……まあ、どっちにしろ、そっちのジャンはそこで死んだし……」
気まずい沈黙の後、しばらくページを戻したり進めたりする音が響く。
「……ふぇに、めりる……とは、国名なのでしょうか。王の姓のようにも……」
「……どっちもじゃないか? フェニメリルって国の王様だから苗字もフェ二メリルっていう感じで」
「ふむ……? フェ……ニメリル守ということですか?」
「たぶん違うし、それすごいシュールな響きだな!?」
「……ところで、今更になりますが、これはアメリカの話ですか。それともロシアですか」
「どっちでもないな。たぶんだけど架空の国……だと思う! モデルとかあったらたぶんフランスとかドイツあたり? たぶん」
「なるほど。……す、すとり……びあ?という、賢者の一族? の末裔……と、自称しているのですね。れ、れび……モーゼ殿は」
「あっ、そいつが一番発音難しそうだと思った!」
姉妹が和気あいあいと語り合うなか、静かに陽は傾いていった。
制服を着たままスナック菓子を片手に漫画をパラパラと読む……ある意味模範的な女子高校生を見下ろし、着物姿の少女はため息をついた。
顔の造形は瓜二つだが、ブレザー姿と着物姿のせいか、雰囲気はまったく異なる。
「んー、実はな、期末テストが近い」
「……なるほど。いつもの現実逃避ですか」
「違うぞ!? モチベを上げるためにな、範囲の漫画とか小説を図書室から借りてきた!」
それを現実逃避だというのです……と呆れた瞳で見ながらも、そもそも通っていない身としては口出しがしにくい。
「確かに、この前も範囲だと言って……べる……ベルセルクの槍……のような題名の漫画を読んでいましたね」
「姉さん、それどういう少年漫画だ? この前の範囲はフランス革命とかだぞ? ベルセルクの槍ってなんだ?」
「…………少女漫画だったかと思われます」
「あっ、ベルばらかー! 惜し……くないな! 全然!」
姉と呼ばれた方は、頓珍漢なことを言いつつも、目に付いた本を1冊拾い上げる。
「おや、この訳者……美和殿のご親戚でしょうか」
「誰だ? 美和って」
「おばあ様から聞いたのです。花野美和殿……確か、先代のお知り合いだったとか……」
「花野紗和と花野美和……じゃあ姉妹とかかもな。なんか、わが校出身みたいなコーナーできてた。大上次郎のコーナーもあったぞ。サイエンス雑誌ばっかりだったけど」
「さいえんす……?あ、ああ、科学ですね。なるほど」
取り留めのない話をしながら、いつの間にか姉の方も本を読み始める。
「……この話……2つ、あるのですね」
「あ、それ、話が途中から変わるっぽい。二次創作かな?」
「ふむ……平家物語も写本で内容が変わりますから、何とも……。どこまで読んだのですか?」
「えーと、ジャンとルマンダ……っていうかルインがなんか痴情のもつれしてるとこ」
「……つなぎらしい解釈です」
呆れたように言いながらも、姉の方も文化がよくわからないらしく、結局は流し読みになる。
「……話は確かに違いますが……ジャン殿がルイン殿と因縁があったこと、ルイン殿がジャン殿の生存を願ったことは確かなようです。それと、本来の血筋ですね」
「……血筋かぁ……。……おれ、ジャンが死んだとこからなんか悲しくて、放置してる」
「……そちらのジャン殿は、生きていればどうなったのでしょうね」
「んぇ?」
「いえ……おじい様は、確か、実の兄上に……」
ぽつりぽつりと紡がれた言葉は、その家柄が血塗られていることを思い起こさせるものだった。
「……まあ、どっちにしろ、そっちのジャンはそこで死んだし……」
気まずい沈黙の後、しばらくページを戻したり進めたりする音が響く。
「……ふぇに、めりる……とは、国名なのでしょうか。王の姓のようにも……」
「……どっちもじゃないか? フェニメリルって国の王様だから苗字もフェ二メリルっていう感じで」
「ふむ……? フェ……ニメリル守ということですか?」
「たぶん違うし、それすごいシュールな響きだな!?」
「……ところで、今更になりますが、これはアメリカの話ですか。それともロシアですか」
「どっちでもないな。たぶんだけど架空の国……だと思う! モデルとかあったらたぶんフランスとかドイツあたり? たぶん」
「なるほど。……す、すとり……びあ?という、賢者の一族? の末裔……と、自称しているのですね。れ、れび……モーゼ殿は」
「あっ、そいつが一番発音難しそうだと思った!」
姉妹が和気あいあいと語り合うなか、静かに陽は傾いていった。
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