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第二章【Enjoy life】
3 君の頼りに
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俺には4つ(4歳)下の弟がいる。翔はまだ中学生なのに彼女がいて、きっと恋愛経験も豊富だろう。
華の余命のことを弟に話してもいいかは分からない。何故なら華には直接訊いていないからだ。
でも俺も、勝手な意見だが相談できる相手がほしい。
「華、ちょっと聞きたいことがある。」
俺は勇気を出して華に直接聞いてみることにした。
「何なにー?ズバリ、「相談できる相手が欲しいんだけど、一人くらいは華の余命のこと話していいかー?」でしょっ!」
「え、いやなんで分かんの…?」
「え、いや適当に言ったんですけど…?」
華はたまにエスパーになる。俺が考えていることを感じ取ったり、それを当てたり…。その面は普通に恐い。
「一人くらいなら全然いいよ!蓮もこんな彼女もって辛いだろうし──」
「辛い?告白したのは俺からだろ?俺はただ、華の幸せを一緒に築きたい。」
「ほーん。嬉しいこと言ってくれるじゃん。まぁ、余命のことは蓮に告白された後に言ったんだけどね。」
華は自分のことを悪く思いすぎだ。
まぁ、相談オーケーなのは凄くありがたいけど。
「まぁ有難う。秘密は守るよ。信頼できる一人にしか言わない。」
「うんっ。」
こうして俺は交渉に成功した。
「兄貴が相談なんて珍しいな。で?」
翔は興味をもって俺の彼女の事情を聞いてくれた。
「なるほどな…。兄貴、苦い恋してんな!」
いや、そこじゃないだろ。
「まぁ、兄貴ができることは、その彼女さんを幸せにすることだろ。」
やっぱりそうだよな…。
翔は南斗と同じような性格をしていて(だから南斗と仲良くなれたのだが)、普段は呑気だがたまにいいことを言うのだ。
「兄貴は彼女さんを幸せにしたいんだろ?じゃあ答えは一択じゃねぇかよ?」
「そうだな。翔、今日は有難う。」
「おう!いつでも相談しろよ!」
翔と話すたびに、翔が弟で良かったと思えることが幸せだ。
俺の周りにはいい人がたくさんいる。俺はあまりにも幸せすぎるから、華の病気を代わってやりたいと思ったこともしばしば。
きっと本人が聞いたら煽っているようにも聞こえてしまうだろう。
でも俺は「どうして華に余命が…。」という絶望感に囚われていた。
華には人を思いやる優しい心もあり、容姿も魅力的だ。小説や漫画などでも、こういう才色兼備な女性に余命がつきがちという印象がある。
言っちゃ悪いが、小説や漫画などでもモブキャラが余命つきなパターンは聞いたことがない。
もしかしたら、華のような恵まれすぎた人への天罰的な奴で余命がつくのかもしれない。だからと言って華のような素敵な女性がこんな不運な目に遭う必要は、どこにもないのに…。
俺は時々悲嘆に暮れてしまう日がある。華のことを想うと眠れなくなったり、不安になったりしてネガティブ思考になってしまうのだ。
俺が一人で校門を潜った日の話だ。学校を後にしようと校舎に背を向けると、ちょうど華と茜が二人で話していたのだ。
特に用もない俺は横を通り過ぎ──
「ちょっとあんた?」
横切った瞬間に茜に呼び止められたのだ。これまた面倒事に絡まれた。
「えっ?二人知り合いなの?」
「前にちょっと話しただけ。コイツが本当に詐欺男じゃないか怪しくてね。」
詐欺男って…。俺はどれだけ悪そうな容姿をしているんだか。
「茜、うるせぇな。で、用は何だよ?」
「華を送って行きなさい!」
「…はっ?」
その依頼自体はいいのだけれど、何故こうも命令口調なんだか。
結局、俺は華を家まで送って行くことになった。
「茜と仲良いの…?」
訝しみながら俺に聞く華は、どこか不安そうだった。
「全然仲良くない。ていうか一回しか話したことがない。なんでだ?」
「いや、下の名前で呼んでたから…。その、嫉妬…?」
赤面し、下を向きながら言う華はものすごく愛くるしい。
「華は可愛いな…。」
呟くように言う俺に、華は耳まで赤くしていた。その姿が余計に可愛くて、俺は思わず華の頭を撫でる。
「ちょっ、蓮…?恥ずかしい…。」
華の髪はフワフワしていて撫で心地が良いから、つい飽きずに撫でてしまう。
周りはもう黄昏の頃、俺は華の横顔を眺めていた。
あと2ヵ月弱でいなくなってしまうとは、到底思えない容姿。
夕日に照らされた華の横顔は、つい見惚れてしまうほど美しい。
華には頼れる人がいるのだろうか。俺はつい翔や華に頼ってしまうし、心に余裕はある。
でも華は、もし茜にも相談できていなかったら…。
俺は華を抱き締める。
「えっ、れっ蓮…?」
「俺は華に頼りすぎちゃうことがある。だから華にとっての相談できる人は、頼れる人は俺がいい…。」
俺だけ華に頼っていたら、なんだか片想いのようで寂しいのだ。
華は俺のわがままにしっかり頷いてくれて、俺を安心させてくれる。
俺は華の「安心させてくれる存在」になれているだろうか。
いつまで経っても返事がこない独りの疑問は、黄昏の中に溶け込んでいった。
華の余命のことを弟に話してもいいかは分からない。何故なら華には直接訊いていないからだ。
でも俺も、勝手な意見だが相談できる相手がほしい。
「華、ちょっと聞きたいことがある。」
俺は勇気を出して華に直接聞いてみることにした。
「何なにー?ズバリ、「相談できる相手が欲しいんだけど、一人くらいは華の余命のこと話していいかー?」でしょっ!」
「え、いやなんで分かんの…?」
「え、いや適当に言ったんですけど…?」
華はたまにエスパーになる。俺が考えていることを感じ取ったり、それを当てたり…。その面は普通に恐い。
「一人くらいなら全然いいよ!蓮もこんな彼女もって辛いだろうし──」
「辛い?告白したのは俺からだろ?俺はただ、華の幸せを一緒に築きたい。」
「ほーん。嬉しいこと言ってくれるじゃん。まぁ、余命のことは蓮に告白された後に言ったんだけどね。」
華は自分のことを悪く思いすぎだ。
まぁ、相談オーケーなのは凄くありがたいけど。
「まぁ有難う。秘密は守るよ。信頼できる一人にしか言わない。」
「うんっ。」
こうして俺は交渉に成功した。
「兄貴が相談なんて珍しいな。で?」
翔は興味をもって俺の彼女の事情を聞いてくれた。
「なるほどな…。兄貴、苦い恋してんな!」
いや、そこじゃないだろ。
「まぁ、兄貴ができることは、その彼女さんを幸せにすることだろ。」
やっぱりそうだよな…。
翔は南斗と同じような性格をしていて(だから南斗と仲良くなれたのだが)、普段は呑気だがたまにいいことを言うのだ。
「兄貴は彼女さんを幸せにしたいんだろ?じゃあ答えは一択じゃねぇかよ?」
「そうだな。翔、今日は有難う。」
「おう!いつでも相談しろよ!」
翔と話すたびに、翔が弟で良かったと思えることが幸せだ。
俺の周りにはいい人がたくさんいる。俺はあまりにも幸せすぎるから、華の病気を代わってやりたいと思ったこともしばしば。
きっと本人が聞いたら煽っているようにも聞こえてしまうだろう。
でも俺は「どうして華に余命が…。」という絶望感に囚われていた。
華には人を思いやる優しい心もあり、容姿も魅力的だ。小説や漫画などでも、こういう才色兼備な女性に余命がつきがちという印象がある。
言っちゃ悪いが、小説や漫画などでもモブキャラが余命つきなパターンは聞いたことがない。
もしかしたら、華のような恵まれすぎた人への天罰的な奴で余命がつくのかもしれない。だからと言って華のような素敵な女性がこんな不運な目に遭う必要は、どこにもないのに…。
俺は時々悲嘆に暮れてしまう日がある。華のことを想うと眠れなくなったり、不安になったりしてネガティブ思考になってしまうのだ。
俺が一人で校門を潜った日の話だ。学校を後にしようと校舎に背を向けると、ちょうど華と茜が二人で話していたのだ。
特に用もない俺は横を通り過ぎ──
「ちょっとあんた?」
横切った瞬間に茜に呼び止められたのだ。これまた面倒事に絡まれた。
「えっ?二人知り合いなの?」
「前にちょっと話しただけ。コイツが本当に詐欺男じゃないか怪しくてね。」
詐欺男って…。俺はどれだけ悪そうな容姿をしているんだか。
「茜、うるせぇな。で、用は何だよ?」
「華を送って行きなさい!」
「…はっ?」
その依頼自体はいいのだけれど、何故こうも命令口調なんだか。
結局、俺は華を家まで送って行くことになった。
「茜と仲良いの…?」
訝しみながら俺に聞く華は、どこか不安そうだった。
「全然仲良くない。ていうか一回しか話したことがない。なんでだ?」
「いや、下の名前で呼んでたから…。その、嫉妬…?」
赤面し、下を向きながら言う華はものすごく愛くるしい。
「華は可愛いな…。」
呟くように言う俺に、華は耳まで赤くしていた。その姿が余計に可愛くて、俺は思わず華の頭を撫でる。
「ちょっ、蓮…?恥ずかしい…。」
華の髪はフワフワしていて撫で心地が良いから、つい飽きずに撫でてしまう。
周りはもう黄昏の頃、俺は華の横顔を眺めていた。
あと2ヵ月弱でいなくなってしまうとは、到底思えない容姿。
夕日に照らされた華の横顔は、つい見惚れてしまうほど美しい。
華には頼れる人がいるのだろうか。俺はつい翔や華に頼ってしまうし、心に余裕はある。
でも華は、もし茜にも相談できていなかったら…。
俺は華を抱き締める。
「えっ、れっ蓮…?」
「俺は華に頼りすぎちゃうことがある。だから華にとっての相談できる人は、頼れる人は俺がいい…。」
俺だけ華に頼っていたら、なんだか片想いのようで寂しいのだ。
華は俺のわがままにしっかり頷いてくれて、俺を安心させてくれる。
俺は華の「安心させてくれる存在」になれているだろうか。
いつまで経っても返事がこない独りの疑問は、黄昏の中に溶け込んでいった。
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