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第七章 風雲

十六話 定期訪問

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「こちらがダンジョンの一覧と、所有者の名前で御座います。ご指示の通り、簡単な地図に場所も書かせましたが、大まかな物だとお考えください」

 ソファーに腰掛ける俺の前には、机に広げられた羊皮紙が並んでいる。
 その一つには、多数のダンジョンとそれを所有する貴族の名前が挙がっている。
 同じく広げられた羊皮紙には、地図の上に対応するダンジョンの番号が振られていた。

「ご苦労様、それで販路の方はどう?」
「そちらの反応はとても良いです。各国の貴族があちらから接触してくるほどです。竜王戦でしたか? 大陸の古竜が一堂に会したのは数百年以来の話ですので、皆さま興味をそそられておるようです」
「じゃあ、持ってきた注文より、多めに用意しておいた方がいいのかな?」
「そのようにして頂ければと思います。現に今はお断りをしているほどですので」
「古竜向けの物じゃないから、比較的早く用意は出来るよ。マジックバッグも追加で渡すから、持たせてあげてくれ」
「ははっ! しかしながら、ゼン様。本当にこれだけの物と儲けを頂いて宜しいのですか?」
「何、原価は殆ど掛かっていないんだ。三割渡した所で損と感じる事もないよ。それに、遠距離を移動するのに、あれを持ち運ぶのは辛いだろ。貴方たちは客を増やして儲けを得ればいい。その内、俺から直接渡す金も要らなくなればいいな。まあ、それはもう少し先の話か」

 ローブから顔を出してるシェードが、俺が渡したマジックバッグを、持ってきた鞄に入れている。
 俺はナディーネが入れてくれた紅茶を飲みながら、机の上の羊皮紙に目を通す。

「しかし、あれだね。やはり情報を得られるダンジョンは、ほぼ全て攻略は無理だね」
「大小有れど、ダンジョンから得られる収入は、貴族にとって重要な物ですので」
「何しても良い国でもあれば、そこに乗り込んで攻略したいんだけどな」
「それが出来るとすれば、大陸の東側に行かなければ難しいでしょう。それほどゼン様の名前は広がりを見せております」

 エゼル王国では魔槍として、最近では教国で暴れたせいで更に名前が売れてしまった。
 別にそれは良いのだが、動きにくくなることは間違いないだろう。
 この前も街で会ったチャラ集団に、教国の件で周りを囲まれてとてもウザかった。
 それにしても、あの集団は何故人数が大幅に増えていたのだろうか?
 俺が知っている五人を入れて、総勢二十人とか、この街の一大クランになってたぞ。

「所で、ダンジョンの収入ってそんなに大きいの?」
「ダンジョンも様々御座いますので、一様には言えませんが、シラールド様の領地では、得られるエーテル結晶体や魔物の素材から、領地の一割の収益を上げている時もあったとか」
「はぁ~、儲かるんだねダンジョンって」
「これは噂話程度でございますが、シーレッド王国では国を挙げてダンジョンから儲けを出していると聞きます。何分他国であり遠方ですので、我々も話を聞く程度なのですが。しかしながら、一部では数十年前からそれは行われており、近年の飛躍はそのお陰と言う声も聞きます」

 東にあるシーレッド王国は、派手な動きをしているだけあって、俺の耳にも話が入る。
 俺の生まれた場所がある国だし、キャスやランドルが所属している国だ。
 更に言えば、アニアとアルンの生まれた村もある。
 その所為で、結構馴染みはあるのだが、余りいい印象は持っていない。
 ナディーネの一件で初めて人を殺した思い出もあるからな。
 まあ、それも今となっては些末な事ではあるけれど。

「それじゃあ、引き続き頼んだよ。貴方たちの繁栄は、俺の力になると確信したからね」
「ハッ! 有難きお言葉! それでは失礼いたします」
「あっ、これお土産に持ってって。子供増えたんでしょ?」
「あ、はい。いつもすみません。皆喜んでいます」

 シェードが立ち去る前に、俺は忘れていたお土産を手渡した。
 エリシュカ用にストックしている焼き菓子を、麻袋一杯に詰め込んだものだ。
 廊下を通りかかったエリシュカが、目を見開いて俺を見ている。
 若干の罪悪感を感じたが、あれはまた注文すれば良いだけだ。

 何故か窓から帰っていくシェードを見送り、俺は再度羊皮紙に目を通す。
 すると、話が終わる事を待っていた、ユスティーナとポッポちゃんがやってきた。

「一緒に見るか?」
「うん。よいしょっと」

 ユスティーナが俺の膝の上に腰を下ろした。
 それに続いて、ポッポちゃんは俺の肩へと昇ってくる。

「ダンジョンいくの?」
「行きたいんだけど、良い所が見つからないんだよね」
「ふ~ん。あっ、アルンお兄さんに渡した、あのアーティファクトはどうなったの?」

 ユスティーナはダンジョンで思い出したのか、家の庭に出来たダンジョンで手に入れたアーティファクトの事が気になったらしい。

「アルンでも勝てないってさ。当分見込みがないから今度持ってくるよ」
「じゃあ、遊んでいい?」
「もちろんだよ。将棋好きになったのか?」
「エリシュカちゃんがね、覚えれば竜のお爺ちゃんが良い物くれるから一緒に覚えようって」
「何つう理由だよ……まあ、それでも喜びそうだから良いけどさ」

 あのダンジョンで手に入れたアーティファクトは、見た目通り将棋が遊べる道具で、床に設置をしてそのそばに座れば、自動的に駒が配置され対戦が行える素晴らしい品だった。
 もちろん一人でも遊べる。コンピューターゲームで言えばCPUに当たる存在が、自動的に駒を動かして対戦してくれるのだ。難易度設定もできる。
 低級であれば俺でも勝てるのだが、それ以上になると難しい。最上級に設定も出来るのでやってみたら、覇武名人とやらが出てきた。
 試しにやってみたら10手ぐらいで負けてた。自分でも意味が分からん。


 名称‥【八一戦場】
 素材‥【万年榧 本黄楊】
 等級‥【伝説級レジェンダリー
 性能‥【自動遊戯】
 詳細‥【遊具の神のアーティファクト。君は覇武名人に勝てるかな?】

 こんな感じの鑑定結果なのだが、流石あの神様だけあって、詳細もふざけてた。
 しかもこのアーティファクトは、エリシュカも遊べている。
 もしかしたら、アーティファクトじゃないのかもしれないが、等級だけでは確認が取れないのでどうしようもない。
 まあ、この辺の事って神様のさじ加減一つ臭いんだよな……
 最近も、加護に関して疑問を持っており、もし戦場の神の加護を俺が手に入れていたら、アルンが得た物とは別の効果になったのじゃないかと思っている。

「一週間後にお出かけ?」
「そうだよ、今回はお留守番でごめんな?」
「ううん、みんないるから大丈夫だよ。あっ、ジニーママに会うんでしょ? なら、これあげますって渡して」

 そう言って手渡されたのは、植物を結んで作ったアクセサリだった。
 大きさや形状的にブレスレットだろう。俺には細いが女性の腕には合いそうだ。
 複雑に絡み合った枝が形を作っており、所々に添えられた葉がアクセントになり、なかなか美しい。派手さはないが、自然を思わせる出来に、俺はユスティーナの才能を感じた。
 ん……? 継ぎ目がないんだが……いや、これはこの形で生育したのか?

「なあ、ユスティーナ。これはどうやって作ったんだ?」
「えっとね、ゴブちゃんの所にドライアドの人いたでしょ? その人が教えてくれたの。植物を操って動かすの。あと、育つのが早くなる方法もあるよ」
「……俺と離れてた時に教わったのか?」
「そうだよー、パパも欲しい?」
「凄い欲しい! って、そうじゃない。ユスティーナは何なんだ、天才だったのか!?」
「あっ、それママが良く言ってくれる!」

 これは少し驚きだ。樹人らしい所は肉体的なものだけではなく、魔法的な物まで備わっているらしい。
 しかし、ママも天才と言っていたのか。ポッポちゃん、君はスパルタ教育をしていた筈なのに、何時の間に方向転換をしたんだ? あっ、目を合わせたら逸らせたぞ。これは、俺がいない所じゃ甘々にしてたな!

「ポッポちゃん?」

 俺が声を掛けてみると、ポッポちゃんは視線を合わさずに「知らないのよ? 本当なのよ!?」とクルゥと鳴いて、しらばっくれていた。分かりやすすぎるよ!

 ユスティーナが言う通り、俺はゴブリン集落から帰ってきて少し落ち着いてから、エアとジニーに会う為に、王都へ行く事になっている。
 純粋に会いに行く為なのだが、どうしても伝えたい重大な報告と、俺には余り関係ない報告が一件ある。
 少し予定が詰まっているので、今回はポッポちゃんとだけで行く事にした。

 王都までの道のりは、僅か五日で済むこととなった。
 以前は七日近くかかっていたのを考えると、ポッポちゃんが微妙に飛ぶ力を上げている気がする。

「何だ、ジニーに会う前に俺の方へ来たのか?」
「だってお前王様だろ。順番的にそうなるだろ」
「いや、まあそうか。ゼンはその辺りちゃんと考えてくれるな」
「エアの面子を考えてるんだよ。ついでに後で、王座の間で頭ぐらい下げとくか?」
「そうだな……それ高いのか?」
「子供が出来た記念にタダにしとくよ」
「おっ、ならそうしよう。それで、俺が駆け寄って肩を抱く展開がいいだろ?」
「あぁ、良いな。その方が俺にちょっかい掛けてくる奴が減りそうだ」

 お互いフカフカなソファーに深く腰を掛け、用意された紅茶を飲みながら、再会の挨拶を交わす。
 政務も大分落ち着いて、午後の昼下がりでも、長く会話ができるほどになっていた。

「……失礼ですが嫌な会話をするようになりましたな」

 俺らの給仕をしていたグウィンさんがポロっと、そんな事を言っていた。

「何を言うかグウィン。王とゼン殿の仲が健在だと示せるのだぞ?」
「私は子供の頃から二人を見ているのですよ……あのような話を聞くと、微妙な気持ちになるのは、リシャール様ならば分かるのでは?」
「う、うむ。確かに……」

 確かに俺らの会話は、ちょっと悪巧みの匂いがする。グウィンさんにその事を指摘されて、エアと俺は顔を合わせて笑ってしまった。

「はは、まあこんな話も出来るようになったって事を褒めてくれよ爺」
「そうで御座いますね。御子も出来ますし、私も年を取るはずです」

 出会った時から白髪交じりだった頭は、大分白い物が増えてきている。
 それを寂しく思ってしまい、心が少しだけ沈んでしまった。
 だが、今日は良い話を持ってきている。それを早速伝える事にしよう。

「教国より親書が届いている。俺は中身を見ていないが、エゼル王へとの事だ」
「お前が暴れたって言うあの国な? 俺の所まで伝わってきたぞあの話は」
「……俺は悪くないから大丈夫だ」
「何が、大丈夫だよ……勇者をぶっ飛ばしてくるとか、前代未聞だろ」

 この親書は、アニアから届いた手紙に同封されていた。
 どうやら、俺経由で渡す事で俺の手柄にしろって事らしい。
 直接やり取りしてくださいよと言いたくなったが、アニアがお世話になっている国だし無下にする事は出来ない。

「なるほどな、通商と特使の派遣か」
「あれ? 取引もしてなかったのか?」
「国としてはないな。接していないし、距離もあるから付き合いはなかった。俺の父上の時代では、運営資金をだしていたはずだが、すっかり忘れてたな」
「出す利点が最早ありませんので、隣国だけで運営すればよいでしょう」

 リシャール様は知っていたみたいだが、金を出す気はないらしい。うちの国も大変だったしね?

「まあ、これに関しては後は任せたよ。俺がどうこう出来る話じゃないからな」
「うむ、任された。態々お前に持たせたって事は、少なからず何か得をする取引を持ちかけてくるはずだ。とりあえず、特使とやらを受け入れる事にするよ」

 ちょっとだけその特使が気になった。教国のような国からくる特使……可愛い聖女みたいな子だろうな。聖女ってアニアか……
 聖女と考えて浮かぶ顔がアニアなのも不思議な気がするが、頭の中に浮かんだ笑顔でちょっとだけ幸せになってしまった。

「それで、もう一つ何かあるんだろ?」
「あぁ、次の方が重要な話なんだ……」
「おいおい、もったいぶった言い方をするな」
「実はな……アルンが……」
「何だよ……」

 俺は重大発表を溜めに溜めてぶちまけた。

「アルンが……結婚するんじゃああ!」
「うおおおっ! 本当かッ!」
「これは、おめでとうございます」
「ッ! あの少年か……孫を送り出すのが遅かった……」

 リシャール様が変な事を言っているが、聞かなかった事にしよう。
 今回俺が一番伝えたかった内容とは、アルンの結婚の話だ。
 まだ少し先の事だが、学ぶ事もなくなったらしく、後数カ月で侯爵様の下から戻ってくる事になっている。
 それに合わせてナディーネとの結婚をする予定なんだ。
 完全に先を越されたが、アルンだから良いし、ナディーネも早く嫁に出してあげたい。
 これに合わせ、アニアも教国から帰ってくる事になっている。
 あの一件以来、優遇されまくりのアニアからの手紙は、半月で行き来出来るようになり便利になっていて、この前その返事が来ていた。
 あの国も中々侮れないわ。

「そうか、アルンも結婚するか。これはゼンもおちおちしてられないな」
「まあ、それに関しては俺もそろそろ動き出すつもりだよ」
「ならいいさ、だが余り待たせてやるなよ? ……手助けいるか?」
「駄目だったらエリアス兄さんに泣き付くかな」
「それでも良いぞ、王都隣りの領地を明け渡そう」
「あの盆栽領地か……自分で頑張るわ」

 農地経営をするのは悪くはないが止めておこう。絶対に難易度イージーな土地だろうからな。
 つまらなくなって腐りそうだ。

「それとは別にさ、聞くのが怖いんだけどさ……エアは両刀だったのか……?」
「何の事だ? 不敬罪で臭い飯が食いたいのか?」
「王都で聞いたんだが、メリル君はどうなってんだよ」

 これは王城へ来る前に、飯ぐらい食べようと飯屋に入った時に、何か面白い話はないかと店の人に聞いた所、王の側室が決まったのではないかと噂話があると言っていたのだ。
 サラダをポッポちゃんに、肉料理を俺へと追加で頼み、更に情報を聞いた所、メリル君の名前が挙がっていた。
 だから聞いたんだ、両刀なのかと。

「あれは……女だったんだ」
「確かめたのか?」
「あぁ、態々信用できるロレインに確認させた。付いてませんって言ってたぞ」
「そうか……エア、切り落としたい、お前の、それを、確実に。絶対にあの子美人になるじゃん!」

 やはり真実だったのか……メリル君、改めメリルちゃんは絶対に可愛くなる。
 だって、一年前も凄い可愛かったんだ。あれはそういないレベルの美少女だぞ。
 いや、だからって嫉妬とかじゃないんだけどさ。ただ言いたいだけって奴だ。

「物騒な事言うなよ、お前だってアニアとジニーがいるだろ。それに最近は古竜の娘が近くにいるとか聞いてるぞ?」
「王家の諜報でも使ってんのか!?」
「違うわ、レイコック卿が知らせてくれるんだよ。お前の動向は……監視されているッ!」
「エゼル王国怖いっ!」

 最期にそんなふざけたやり取りをして、エアとの会話を終えることになった。
 俺は一度与えられる屋敷に戻る。これからジニーがやってくる予定になっているからだ。
 どうやら、こっちでゆっくりやれって事らしい。露骨すぎるその手はずにちょっと引く。

 まだ時間はあるので、旅の汚れをポッポちゃんと一緒に落とし、軽い服装に着替えて暇つぶしに屋敷の中を探索する。
 ポッポちゃんも以前来ているが、久しぶりなので「ひろい巣なのよ~、ここにまた住むの?」とクルゥっと鳴いていた。
 そんなやり取りをしながら、屋敷を探索をしていると、メイドさんがやってきてジニーが来たと伝えてくれた。
 よく見ると呼吸が荒い、流石に王族が来るだけあって全力で走ったようだ。
 彼女の苦労を称えて、俺はジニーを出迎える為に、屋敷のエントランスへと向かう。
 そこには数名の女騎士と、ロレインさん、リディアを引きつれたジニーの姿があった。

「またお美しくなられたようで、ヴァージニア姫殿下」
「お久しぶりで御座いますわ、ゼン殿。貴方様も逞しくなられましたね」

 多くの目がある手前、以前シドウェル侯爵夫人に教わった貴族風礼儀を持って出迎えた。
 少し身長の伸びたジニーは、女性らしさを残しつつほっそりとした身体つきになっており、長く伸びた金髪を背中に垂らしている。顔つきも大分大人になり、落ち着いた物になっていたが、それでも愛くるしい大きな瞳は俺を引きつけて離す事を許さなかった。

「紫のドレスに姫殿下の美しい髪が映えますな」
「うふふ、そうかしら? でも気に入って頂いたようで良かったですわ。今日の為に頑張って選びましたのよ?」
「なるほど、それはとても嬉しいです。さあ、奥に案内いたしましょう。お手を」

 案内をする時に隣に立ったから分かったのだが、ドレスの背中が大きく開いており、臀部の辺りまで見えている。
 思わずそれを見つめてしまったら、ジニーに気付かれて小さな声で「めっ」と怒られた。

「それでは私たちはここで待機致します。何かあればお声をお掛けください」

 俺らの後ろに続いていたロレインさんが、同じく付いて来ていたリディアや騎士と立ち止まり、数個手前の部屋で待機すると言っている。
 ジニーの顔色を窺って見ると、動揺した所もないので予定通りなんだろう。

「あっ、ゼン殿。ポッポちゃんと楽しみたいのですが、宜しいですか?」

 ロレインさんが忘れてましたと言わんばかりの顔をして、両手を差し出している。
 ポッポちゃんにどうするか聞いてみると「久しぶりだから相手してあげるのよ?」と、寛大なお言葉を頂いた。
 いってらっしゃい、でもジニーがちょっと残念がってるぞ?

 用意していた部屋へジニーと共に入る。そこには話をしながら飲み食いが出来るように、多くの飲み物や食べ物を用意しておいて貰った。というか、俺が頼んだら分かってますみたいな反応を返された。絶対に仕込んでたんだろうな。ロレインさん辺りのてはずか、もしかして。

 部屋のドアがメイドの手で閉められると、俺とジニーは離れていくメイドの足音を聞いていた。
 そして、それが聞こえなくなるとジニーが俺の腹に突撃してきた。

「久しぶりゼン! もー何でこんなに大きくなってるの!? びっくりした!」
「ジニーだって、大人びてるから驚いたよ。いや、本当に美人になったな」

 今日の髪型はおでこを丸出しにしている。さらに化粧も少し濃い目なので、何だか年上の女性の雰囲気を感じさせる。そう言えば、着けている髪飾りは俺が送った物だな。

「えっ!? 美人になったかな? うへへっ、もうゼンったら上手いんだからぁ」

 ジニーはだらしない顔をしながら俺の二の腕を叩いている。ペシペシと何度も叩いているが、並んでみると改めて身長差が出来ているんだと感じられた。
 普段俺の近くにいるのはアルンだから余り意識しないだよね。あいつも大きくなってるし。

「じゃあ、早速お話しましょ? って、わっ!」

 ジニーが俺の手を握りソファーに誘導するので、ジニーを抱きかかえてみた。
 そして、そのままソファーに座らせる。

「楽で良いけど、何か言ってよもう」
「いきなりの方が面白いだろ。何飲む?」

 俺はジニーの隣りに腰をおろし、目の前に置かれた数種類の飲み物を指差した。

「ん~、じゃあこれかな」

 俺はジニーの指定した、果物のすりおろしをグラスに注いでやり手渡してやる。

「まずは、乾杯だな」
「うん、再会に乾杯ね」

 グラスを軽く打ち鳴らし、再会の合図とした。本来ならば酒なのだろうが、それはまだ時間が早い。まずはジュースで乾杯だ。
 こうして、隣り合うジニーとの会話が始まったのだった。
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