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幸せが崩壊する音。。。③
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「自信を持て。お前はお母さんを守れる。」
俺は父親ではない。
そう言い聞かせて掴んできた愛しい手を俺から離した。
まだ9歳、大好きなお母さんの助け声を聞いて平然なわけはない。
そんなのはわかっているけど……
ずっとずっと永一をこれからも守れるわけじゃない。
玄関のドアを閉めて煙草に火をつけようとジッポ開けようとしても
指が動かない。
蓋が……うまく開かない。
「誠二…?」
「兄さん。待っていたよ。」
「どうしてこの家に…?まさか美緒に?」
「俺の部屋を整理しに来たんだよ。」
開かなかったジッポの蓋が開いてキィーンという音が響く。
兄さんが一瞬冷静をかいて口が動くのが見えた。
だけどジッポの音ですぐ冷静さを取り戻している。
「兄さん…どうしていつもそんな冷静でいられるわけ?」
「…冷静でいなきゃこの家に住んでいない。」
「フッ…確かに冷静じゃないと俺と美緒をセックスさせたりしないよな。」
手にしている鞄からギリギリという音が兄さんから聞こえる。
本当は平然な顔して兄さんだって美緒のことが好きなんだ。
「10年やったのに……どうして美緒の心を掴んでないんだよ!!」
「俺は!俺は俺なりに大事にした。だけど美緒は……お前のことを忘れてない。」
「そんな言い訳聞きたくない。ずっとそばにいたくせに…手を伸ばせば抱きしめられて、寝顔も寝息も聞ける距離にいたくせにっ……」
「お前こそ…何で戻ってきた!?迎えにきたわけでもない。だけど美緒を傷つけるだけ傷つけて――」
「もしかして、お前――」
「兄さん…頭のいい兄さんならわかってくれるよね?」
「俺が考えていることは本当に当たっているのか?」
「一緒に暮らしていなくても俺たちは双子だから――」
「誠二……お前――」
「兄さん、だけど俺はもう一つのこともあって帰ってきたんだ。永一のこと――」
「永一……?」
「今日弘樹が家に来た。」
「どうしてだ…?」
「永一が俺の子だと言いふらすって美緒を脅して……犯した。」
「なっ…!!!」
兄さんも冷静さがなくなり怒りで満ち溢れた顔になってくる。
こんなこと……許してはいけないことだ。
「今から弘樹のところへ……誠二?」
「兄さん、それは今は止めておこう。」
「だけどっ――」
「まだ弘樹は大事なことに気付いていない。」
「大事なこと…?お前の子供ってこと以上に大事なことって?」
「兄さん、永一の夢は兄さんみたいに経営者になることなんだ。」
「……そうか……だけどどうしてそれが関係してくるんだ?」
「永一には……兄さんの会社を継ぐ権利がない。」
「どういう……ことだ?」
外からみれば可愛らしい清楚な妻と
か弱いが大人しく純情な息子と家族として暮らしてきた。
例え隣で寝ている美緒が別の人のことを思っていても
永一が自分とは血のつながりがなくても
幸せな生活を送っていたのに――
偽りのある家族ごっこはもうお終いを告げるんだ。
俺は父親ではない。
そう言い聞かせて掴んできた愛しい手を俺から離した。
まだ9歳、大好きなお母さんの助け声を聞いて平然なわけはない。
そんなのはわかっているけど……
ずっとずっと永一をこれからも守れるわけじゃない。
玄関のドアを閉めて煙草に火をつけようとジッポ開けようとしても
指が動かない。
蓋が……うまく開かない。
「誠二…?」
「兄さん。待っていたよ。」
「どうしてこの家に…?まさか美緒に?」
「俺の部屋を整理しに来たんだよ。」
開かなかったジッポの蓋が開いてキィーンという音が響く。
兄さんが一瞬冷静をかいて口が動くのが見えた。
だけどジッポの音ですぐ冷静さを取り戻している。
「兄さん…どうしていつもそんな冷静でいられるわけ?」
「…冷静でいなきゃこの家に住んでいない。」
「フッ…確かに冷静じゃないと俺と美緒をセックスさせたりしないよな。」
手にしている鞄からギリギリという音が兄さんから聞こえる。
本当は平然な顔して兄さんだって美緒のことが好きなんだ。
「10年やったのに……どうして美緒の心を掴んでないんだよ!!」
「俺は!俺は俺なりに大事にした。だけど美緒は……お前のことを忘れてない。」
「そんな言い訳聞きたくない。ずっとそばにいたくせに…手を伸ばせば抱きしめられて、寝顔も寝息も聞ける距離にいたくせにっ……」
「お前こそ…何で戻ってきた!?迎えにきたわけでもない。だけど美緒を傷つけるだけ傷つけて――」
「もしかして、お前――」
「兄さん…頭のいい兄さんならわかってくれるよね?」
「俺が考えていることは本当に当たっているのか?」
「一緒に暮らしていなくても俺たちは双子だから――」
「誠二……お前――」
「兄さん、だけど俺はもう一つのこともあって帰ってきたんだ。永一のこと――」
「永一……?」
「今日弘樹が家に来た。」
「どうしてだ…?」
「永一が俺の子だと言いふらすって美緒を脅して……犯した。」
「なっ…!!!」
兄さんも冷静さがなくなり怒りで満ち溢れた顔になってくる。
こんなこと……許してはいけないことだ。
「今から弘樹のところへ……誠二?」
「兄さん、それは今は止めておこう。」
「だけどっ――」
「まだ弘樹は大事なことに気付いていない。」
「大事なこと…?お前の子供ってこと以上に大事なことって?」
「兄さん、永一の夢は兄さんみたいに経営者になることなんだ。」
「……そうか……だけどどうしてそれが関係してくるんだ?」
「永一には……兄さんの会社を継ぐ権利がない。」
「どういう……ことだ?」
外からみれば可愛らしい清楚な妻と
か弱いが大人しく純情な息子と家族として暮らしてきた。
例え隣で寝ている美緒が別の人のことを思っていても
永一が自分とは血のつながりがなくても
幸せな生活を送っていたのに――
偽りのある家族ごっこはもうお終いを告げるんだ。
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