【R18】どうか、私を愛してください。

かのん

文字の大きさ
33 / 99

抱いてください……

しおりを挟む

「美緒、気分はどうだ?」



「誠一さん…私はもう大丈夫です。」



誠二さんが帰ってきてから、私は二日間ベッドの上で過ごしていた。
大丈夫だというのに誠一さんが寝ておきなさいと……
私の体を気遣って言ってくれているのはわかる。
だけどこのベッドで一人で寝ていると誠二さんのことばかり考えてしまう。



誠二さんと抱き合ったこと、共に流した涙、そして誠二さんの結婚



誠二さんが結婚するなら……ちゃんと笑顔でおめでとうって言わなきゃって
何度も頭の中では言い聞かせているのに――
中々整理がつかずにいた。



「お母様。」



「永一…」



「もう大丈夫だからね。心配しないでね。」




「……お手紙書いてきました。」



「手紙?ありがとう永一。」



「じゃあ行ってきます。」



「行ってらっしゃい。」



「じゃあ永一を送ってくる。まだ寝ておきなさい。家事は人を雇ったから。」



「あ……はい、わかりました。行ってらっしゃい。」



元気なのに家事もせずにベッドの上で寝ている私って
誠一さんにとって、永一にとってどんな存在なのだろう
ベッドの上に寝ている人形になった気分――



そんな風に考えてはダメと気持ちを切り替えるためにも
永一にもらった手紙を開けてみた。



【お母様。お母様の笑った顔が見たいです。】




「永一……」



私はこうやってベッドの上で寝ているから
永一はこういう風に手紙に書いてきたと思っていた。



子供がくれるパワーってすごい。
こんなにも愛おしく可愛い存在を手放したくはない。
きっと今家を出て行っても永一はどんな手を使われても奪われてしまう。
誠二さんだって大切だけど永一だって私にとっては大切な人。



ベッドから起き上がって誠二さんの部屋へまた行ってみた。
窓の淵の土汚れはそのまま――




誠二さん、どうして結婚するのに私にキスしたの?
どういう意味のキスだったの……?
あんな、優しいキスをされたら
またあなたを考えては胸が苦しくなる。



「奥様!」




「え?」




「ダメですよ。起き上がっては……寝ておかないと。」



誠一さんが雇ったお世話係の人にベッドへ連れて行こうとする。



「あら?ここ汚れていますね。」



お世話係が窓の淵の土を取ろうとした瞬間



「大丈夫です!」



自分でも何でこんなことを言ってしまったんだろう……
言った自分にも驚いてしまった。



「あの……もう気分がいいので私がやりますから。せっかく来ていただいて申し訳ないのですが帰っていただいても大丈夫です。」



「それでは誠一様が……」



「大丈夫です。ちゃんと私から主人に伝えますから。」



人にとっては汚いものだと思う。
だけど私にとっては――
誠二さんと私の関係は
誰にも消されたくない記憶なんだ。



「美緒…お手伝いさんを返したって本当なのか?」



「はい。もう大丈夫ですから。ご飯作って待っています。」



電話の主は誠一さんで誠二さんが帰ってきてからは
誠一さんはさらに心配性になった。
きっとお手伝いさんを用意したのは誠二さんが近づいてこないようにするためもあると思う。
もう、誠二さんはほかの人と結婚するというのに――



“ピンポーン”



「誰…?あ……」



「すごーい!豪邸みたいに綺麗!」



「円花さん……」



「急にごめんなさい。でも連絡先知らなくて…」



「そうよね。お茶いれるわね。」



「いいんです。私急いでて…あの誠二の部屋ってどこですか?」



「え…誠二さんの部屋ですか?」



「誠二がこの家に置いてある私物を取りに行ってほしいって言われて……」



「あ……それならこっちです。」



もう、この家に来ることはないってことだ。
そうだよね、それが正しい。
私の我儘だけど誠二さんが家にいなくても
誠二さんの絵に囲まれているあの部屋は私の癒しの空間だった。



「絵ばっかり…これじゃ家に置くとこないな~」



円花さんは誠二さんの服だけをボストンバックに詰め始めた。
もともと少ない枚数しかない服はすぐに詰め終わる。



「じゃあ、ここの部屋にある絵は捨てちゃってください。」



「……え?」



こんなにも素敵な絵ばかりなのに……あっさりと捨ててしまってもいいの?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...