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抱いてください……②
しおりを挟む「誠二が持ってこれないものは捨ててくれって伝えてほしいって言われて…」
「そう……ですか。」
まだこの絵たちに囲まれて過ごせれるんだと思うとホッとしたけど
誠二さんにとってはこの家であった出来事は全部捨てたいんだと思うと胸が痛んだ。
「あ、それとこれを……」
「お披露目会…?」
「誠二さんのお父様が私を紹介してくださるらしくて…お義姉さんも来てください。」
永一ができたことで誠二さんをちゃんとお義父様は認めてくれたんだ。
以前ならこんなこと絶対しなかったと思う。
誠二さんをこの家で迎え入れてほしいと願っていたから素直に嬉しい。
「円花さん、おめでとうございます。誠二さんをよろしくお願いします。」
「はい!」
元気で明るくて素直で……誠二さんには円花さんはお似合いだ。
笑顔で誠二さんにもきっと言える。
「お母様……」
「永一…お帰りさない。こちら誠二さんの婚約者の円花さん。」
「こんにちは!可愛い!!!誠二にそっくり!」
「……え?」
今まで誠二さんにそっくりって言われたことはない。
だって誠二さんを見たという人が少なったから……
円花さんに言われて初めて気づいた。
永一は誠二さんに似ているってこと――
親子なんだから当たり前だけど
これから大きくなるにつれて永一にいつか父親のことを伝えたほうがいいのだろうか?
「誠二さんって…誰?」
「お父様の弟さんよ。弟といっても双子だから同い年だけど。」
「僕はあったことある?」
「……ううん、でも今度ご飯食べるときに会えるよ。」
「もしかしてこの部屋の人?」
「ええ…そうよ。」
「僕、この部屋が大好きなんだ!僕を温かく包み込んでくれるような感じがするんだ。」
永一が言っていることがよくわかる。
誠二さんの絵と微かな香りが包み込んでくれる気がして安心して眠れる。
親子だというのがカラダがわかっているのかもしれない。
不思議だな……
前は誠二さんに会いたくて、会いたくて仕方なかった。
だけど今は…あまり会いたくない。
会わす顔に困るし、円花さんが横にいる姿をじっと見つめているだけの自分が
忘れなきゃいけないのに忘れられない自分が
……嫌になる。
自分のこの感情をどうすればいいの?
永一を残すことも
離婚することも
誠二さんと一緒になることもできない。
もう、この家で
誠一さんと共に生きていくことを選ぶしかないのに――
誠二さんと円花さんの食事会は
円花さんのご両親は亡くなっているということで
お義父様とお義母様、私たち家族だけの食事会だった。
本当はお披露目ということだから
親せきをよぶと思っていたけど
誠二さんたちが小さいのにしたいと言ってきたとか……
「お義母さま…ご無沙汰しております。」
「美緒さん…あ、もしかしてこの子が?」
「永一です。」
「もうこんなに大きくなって……」
「おばあ様、もう体大丈夫なの?」
「えぇ、もう大丈夫よ。永一に会ったら元気が出てきたわ。」
確かにお義母様は久しぶりにお会いしたけど
思ったよりは元気そうで安心した。
永一や私にも会いたくないと聞いていたけど
今日の様子なら、ただ具合が悪いから会いたくなかっただけかなって思える。
「あぁ、あなたが円花さんね。誠二のことよろしくお願いします。」
「お義母さん、早いですよ~こちらこそよろしくお願いします。あ、美緒さん、こちらに座ってください。」
お料理はフランス料理だったけど
味はどれもしなかった。
だけど食べないと何か思われると思って水で流し込んでいた。
「美緒、大丈夫か?」
「え…?」
「さっきからワインをたくさん飲んでいるが……」
ワイン…?
水だと思って飲んでいたのは白ワイン
水と白ワインの違いも気づけないぐらい何もかも味がしなかった自分にも驚いた。
だけどそれと同時に酔いが回ってきてフラフラする。
「ごめんなさい、ちょっと…」
お手洗いにいっても
吐きたくても吐けない。
息だけが苦しくなって何も出ない――
「美緒さん、大丈夫ですか?」
「円花…さん?」
そっと背中をさすってくれる手が温かくて
不思議と気持ちの悪さもなくなっていく――
「円花さんの手、温かくて気持ちがいい。」
「ふふ、私背中をさするのは上手なんですよ♪」
看護婦さんを天使だって表現する人がいるけど本当に天使みたい
安らいだ気分にしてくれるんだから――
「あの、美緒さん……」
「何?」
「…いえ、何度もないです。あ、お水飲みますか?」
「うん…飲みたいかな。」
「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」
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