sweet!!

仔犬

文字の大きさ
24 / 378
territory!!

6

しおりを挟む


「全く、ディナー中に抜け出すなんて信じられない!私だったら殴り込みしてるわよ、そんな風に育てた覚えありませんけど?!」

カツカツと響くヒールの音と同じように、サクラの口は止まらなかった。瑠衣は指を耳に当て塞ぎ、暮刃は聞いているような聞いていないような笑顔で佇んでいる。その中で1番嫌そうな顔をしている氷怜だけが返事をした。


「育てられた覚えはねぇな」

「はあ、いい子達だしなにも気にしてないみたいだけど丁重に扱うのよ。いくら男の子だからって」

これ以上言い返すとさらにヤジが飛んでくると思った氷怜は話題を変える。こちらとしても早くデートに行ってほしいところだ。

「……サクラ、要件はなんだ」

「話を変えたわね……はぁ、ネロの子がうちの店に来たわ……もう期日は決まった?何か聞き出してほしい事があればと思って」

サクラの言葉に氷怜は口角を上げた。よくやったと言いたげだ。

「なるほど……試合は2週間後だ……後で連絡する」

「はいはい。あ、あの子達巻き込んじゃダメよ」

「言われなくても」


VIP用の出入り口まで来れば、サクラのデート相手が車で迎えていた。サクラが手を振ると相手も振り返す。いつ見ても優しげで品がいい。氷怜にはなぜこんな口うるさいサクラが彼の心を射止めているのか不思議だった。

暮刃が思い出したように手叩く。
「記念日じゃなかった?今日は」

「あら暮刃くんよく覚えてたわね……今日こそ言ってくれるかしら」

心なしかいつもよりも彼女がご機嫌なのは唯斗のおかげだろうか。振り返ったサクラが通路の向こうを見た。その奥の唯斗達のいる部屋だ。

「ねぇ、あの子達とまたお話しししたいわ」

まで付けさせて、そんな気に入ったの?」

「だってなんだか可愛かったんだもの。弟に欲しくて……」

わがままな子供のような言い分に氷怜は呆れ返った。しかし彼女のこういう部分が気に入ってチームに所属しているのだ。大人を振りかざさない彼女を。

彼女にしては珍しく年相応の大人の表情で氷怜を見つめた。

「氷怜くんの愛に特別があったなんてね」

「自分でも驚きだな」


チームの全てに愛を捧ぐ男は誰よりも人望が厚い。だからこそ特別な目を唯斗に向けていたことにサクラは驚いていた。
続けて困ったように瑠衣と暮刃を見る。

「暮刃くんも瑠衣くんも気になってるならちゃんとしないと……」

「氷怜にも同じこと言われたばっかりだよ、十分耳に残ってる。ねえ、瑠衣?」

「オレはする事もなにも変わらないから、やりたい事するだけ」

珍しくまともに瑠衣が返事をするのでサクラは少し笑ってしまった。なぜこの子はだらしがないふりをするのだろう。

「まあ、あの子達一筋縄では行かなそうよ?唯斗くん筆頭にすごいいい味してるんだから」

「まあね、面白い子達デショ」

なぜか自慢げに瑠衣が胸を張った。なにかを拾った飼い主の気分だろうか。


「ネロ思ったよりも不穏な空気みたいだけど、あの子たち巻き込まないでよ」

「そのつもりだ」

「それならいいわ」


車に近づき暮刃が助手席を開ける。するりと乗り込んでサクラが笑った。

「私もディナー中にお邪魔しちゃったし、人のこと言えないわね。あの子達と赤羽くんによろしく」

バイバイと手を振って車が動いていった。
瑠衣だけが大きく手を振って聞こえもしない返事を投げかる。


「……やっと帰ったか」

「サクラちゃんパワフルだからねぇ」

「さて戻りますか」

三者三様にため息をつき元の道を辿る。

「それにしても驚いたね、女性相手の彼らがあんな感じだったなんて」

「いろんな顔するよねーアノコ達」

「……」

氷怜が2人の言葉で唯斗を思い出し、眉間にシワがよる。覗き込んだ瑠衣がすかさず爆笑し始めた。

「ひーが苦悩してる!」

「こらこら笑わないの」


コツンと暮刃が瑠衣を咎めるも笑いがすぐに引くことはない。


「お前らだって同じじゃねえか……」

「んーまあ、氷怜ほどでは無いし。今は面白い方が強いからね」

「オレは今のところ遊びたいから」

2人は2人なりの興味があるようだが、深く聞くほど無粋では無い。

そしてネロが頭をよぎった。
巻き込まないとは言ったがご指名が入っている。

考える氷怜に気付いた暮刃が聞く。彼もまた同じことを考えていたのだ。

「どうするかは本人達に決めてもらうんだろう?」

「ああ、別に参加したところでなにをさせるわけでは無いからな」

「厳重に守ってオモテナシ~?」

瑠衣の適当な考えに少し笑うと氷怜はドアに手をかけた。
しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

処理中です...