逢魔刻に氷菓を手折り

茉莉花 香乃

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東雲

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「えっと…ちか、こっちだよ…」

尊は自分より大きな親彬を抱きしめた。

やる気満々である。

セックスにこれだけ積極的に取り組むなど、平成にいた尊では、想像できないだろう。

(先ずは…ムードが大切だよね!)

苦笑いの親彬に顎を持たれ、キスをされる。 

(あれ?これは、主導権が…えっ?奪われた?)

侵入してきた舌に翻弄される。歯列を確かめるように順に舐られ、身体が震えた。

「…ぁの…ぁぁっ…んっ、ふぅん…」

舌を根本から絡めたり、甘噛みされるとだらりと力が抜けた。

(ううっ…降参です…。親はやっぱり僕ではダメなんだ)

「ううっ…ぐっ…ううっっんっ…」
「ん?どうした、尊?口付けは嫌だった?昨日は…」

こんなことで泣いてはいけないと思うけれど、後から後から溢れてくる。

「だって、だって…、ううっ…ひっく、親が…親が…」
「俺?俺、何かした?」
「やっぱり、僕じゃ、やっ、なん、でしょ?ごべ、ね、ううっ、ご、べ、んっ、ね…ぐっ」
「えっ?ち、違!違うって」
「な、に、ぐっ…ひっく…が?」
「えっと、尊が俺の事、抱いてくれるんだろう?」
「でも、だっ、て、親は…」
「俺、嫌だなんて一言も云ってないぞ?」
「あっ!」

(確かに!)

「俺だって安倍さまに抱かれるとか、想像するだけで嫌なんだけど」

誰に突っ込まれるのも本当は不本意であるとは、今の尊には云えない親彬であった。でも、誤解はといておかないといけない。

「昨日、尊は云ってくれただろ?俺が良いって。嬉しかったよ。俺も尊が良い。安倍さまにも宣言してくれてたじゃん」

「じゃ、じゃあ…僕が…」

(主導権を、僕に!たとえ上手くできなくても、何とか親彬を気持ちよくしてあげなきゃ!親だって、されるのは初めてだから、僕と同じで緊張…はしてないかもだけど、きっと、何時もとは違うはず)

「でも、これは二人でスルことだろう?お互いの気持ちが同じならさ…」
「でも!でも、このままじゃ…僕…気持ちよくて、何もできなくなっちゃうよ…」

(力が抜けて、昨日のようにされるがままに流されて…。ちゃんと抱いてあげなくちゃいけないのに)
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