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第3章 一緒に歩いてくれる人がいることは、どんな大金にも代えられない
3-1 『向こうから』来る話って、大抵向こうにメリットがあるんだよ
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……それから、数週間が経過した。
だが、相変わらず日南田に対して行われる陰湿ないじめは続いた。
チョークで「バカ」と書かれてゴミ箱に捨てられた学生かばんを取り出しながら、日南田は思った。
(陽花里も同じ目に遭っていたんだよね……それなのに、僕は……)
唯一変化が起きたことといえば、日南田の心境だった。
今まで日南田は、陽花里に対して『どうやって不登校をやめさせるか』ばかり考えていた。
そのため、
「だからさ、学校行こうよ?」
「家にひきこもっていても、何も解決しないよ? まず外に出ないと!」
「ほら、頑張って! ね?」
と言う形で『説教』と『励まし』ばかり行っていた。
(僕は……。陽花里の気持ちに向き合っていなかったな……)
そんな風に思っていると、昇降口で声をかけられた。
「日南田君!」
「影李さん! ……あれ、髪染めたんだね」
「うん、似合うでしょ?」
黒髪のロングストレートだったその髪はバッサリと斬られて、シャギーが入ったセミロングのヘアになっていた。
そして髪の色は鮮やかな茶色に染められていた(日南田の学校は染髪は認められている)。
「もしよかったらさ、一緒に帰らない?」
「え? いいの?」
「うん。……その、学校では日南田君に優しくしてあげられないからさ。今日くらいはさ」
そういう影李の笑顔はどこか作られたような印象を受けるが、日南田はその提案に喜んで了承した。
「そういえばさ、読んだよ。あの『殺し屋とご令嬢』ってやつ!」
「あ、そうなの?」
「うん、友達たちもみんな『面白い』って言ってたんだ。だからちょっとしたブームになってるよ、私たちの間で」
その『私たち』の中に自分が入っていないのが少し残念な気持ちになったが、自身が薦めた漫画をきちんと読んでくれたことに日南田は嬉しくなった。
そうやってしばらく漫画の話をした後、影李は申し訳なさそうに謝罪した。
「あ、あのさ。ごめんね。私のせいでいじめられてるんだよね?」
「え? ……いいよ、別に影李さんが悪いわけじゃないから……。気にしないでよ?」
そういって日南田は肩を叩こうとしたが、影李はそこからサッと避けながら、
「う、うん……」
と答えてきた。
そして、
「任せてよ、と……」
といいながらスマホで誰かに対して返事をしていた。
(なんか、影李さんの様子が変だな……)
そう思っていると、影李はスマホをしまい、笑顔で尋ねてきた。
「そういえばさ。日南田君は漫画描くのって、まだ続けてるの?」
「え? ああ、勿論」
「アカウント教えてもらってなかったよね? ……教えてもらっていい?」
その時の影李の表情は、どこか狡猾な印象を受けた。
だが日南田は、
「いじめから助けて『あげた』自分に対して、彼女は好意を持っている』
という幻想をまだこの時は捨てられてなかった。
そのため、
「うん、もちろん!」
そういって、アカウントを教えた。
……それから数日後。
日南田のアカウントには複数のコメントが寄せられていた。
「この作品はゴミ」
「間違いなく、作者は差別主義者」
「これを面白いって言う読者もたぶん友達いない」
という言葉とともに最低評価を付けられていた。
「そんな……僕の作品だけじゃない。僕のことそのものや、作品の人格批判までしているじゃないか……」
流石にこれは答えたのか、日南田は思わず涙をぬぐいながら思った。
(おかしい……こんな急に誹謗中傷が増えるなんて……。ひょっとして……)
当然、影李の顔が頭に浮かんだ。
だが、
「ううん、ダメだ……影李さんを疑うなんて……」
そう必死に自分に言い聞かせながら、日南田は廊下を歩いていた。
すると、隣の多目的室から声が聞こえてきた。
「悪かったね、日南田のアカウント聞き出させて」
「ほんっと。マジキモかったよ! あいつと話するのとか、最悪! 唾まで飛んできたしさ!」
「うわ、まじかよ!」
(ん?)
自分のことを話しているのを知り、日南田は教室のドアを開いた。
……そこには、日南田の心を叩き壊す光景が広がっていた。
だが、相変わらず日南田に対して行われる陰湿ないじめは続いた。
チョークで「バカ」と書かれてゴミ箱に捨てられた学生かばんを取り出しながら、日南田は思った。
(陽花里も同じ目に遭っていたんだよね……それなのに、僕は……)
唯一変化が起きたことといえば、日南田の心境だった。
今まで日南田は、陽花里に対して『どうやって不登校をやめさせるか』ばかり考えていた。
そのため、
「だからさ、学校行こうよ?」
「家にひきこもっていても、何も解決しないよ? まず外に出ないと!」
「ほら、頑張って! ね?」
と言う形で『説教』と『励まし』ばかり行っていた。
(僕は……。陽花里の気持ちに向き合っていなかったな……)
そんな風に思っていると、昇降口で声をかけられた。
「日南田君!」
「影李さん! ……あれ、髪染めたんだね」
「うん、似合うでしょ?」
黒髪のロングストレートだったその髪はバッサリと斬られて、シャギーが入ったセミロングのヘアになっていた。
そして髪の色は鮮やかな茶色に染められていた(日南田の学校は染髪は認められている)。
「もしよかったらさ、一緒に帰らない?」
「え? いいの?」
「うん。……その、学校では日南田君に優しくしてあげられないからさ。今日くらいはさ」
そういう影李の笑顔はどこか作られたような印象を受けるが、日南田はその提案に喜んで了承した。
「そういえばさ、読んだよ。あの『殺し屋とご令嬢』ってやつ!」
「あ、そうなの?」
「うん、友達たちもみんな『面白い』って言ってたんだ。だからちょっとしたブームになってるよ、私たちの間で」
その『私たち』の中に自分が入っていないのが少し残念な気持ちになったが、自身が薦めた漫画をきちんと読んでくれたことに日南田は嬉しくなった。
そうやってしばらく漫画の話をした後、影李は申し訳なさそうに謝罪した。
「あ、あのさ。ごめんね。私のせいでいじめられてるんだよね?」
「え? ……いいよ、別に影李さんが悪いわけじゃないから……。気にしないでよ?」
そういって日南田は肩を叩こうとしたが、影李はそこからサッと避けながら、
「う、うん……」
と答えてきた。
そして、
「任せてよ、と……」
といいながらスマホで誰かに対して返事をしていた。
(なんか、影李さんの様子が変だな……)
そう思っていると、影李はスマホをしまい、笑顔で尋ねてきた。
「そういえばさ。日南田君は漫画描くのって、まだ続けてるの?」
「え? ああ、勿論」
「アカウント教えてもらってなかったよね? ……教えてもらっていい?」
その時の影李の表情は、どこか狡猾な印象を受けた。
だが日南田は、
「いじめから助けて『あげた』自分に対して、彼女は好意を持っている』
という幻想をまだこの時は捨てられてなかった。
そのため、
「うん、もちろん!」
そういって、アカウントを教えた。
……それから数日後。
日南田のアカウントには複数のコメントが寄せられていた。
「この作品はゴミ」
「間違いなく、作者は差別主義者」
「これを面白いって言う読者もたぶん友達いない」
という言葉とともに最低評価を付けられていた。
「そんな……僕の作品だけじゃない。僕のことそのものや、作品の人格批判までしているじゃないか……」
流石にこれは答えたのか、日南田は思わず涙をぬぐいながら思った。
(おかしい……こんな急に誹謗中傷が増えるなんて……。ひょっとして……)
当然、影李の顔が頭に浮かんだ。
だが、
「ううん、ダメだ……影李さんを疑うなんて……」
そう必死に自分に言い聞かせながら、日南田は廊下を歩いていた。
すると、隣の多目的室から声が聞こえてきた。
「悪かったね、日南田のアカウント聞き出させて」
「ほんっと。マジキモかったよ! あいつと話するのとか、最悪! 唾まで飛んできたしさ!」
「うわ、まじかよ!」
(ん?)
自分のことを話しているのを知り、日南田は教室のドアを開いた。
……そこには、日南田の心を叩き壊す光景が広がっていた。
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