いじめから助けてあげた僕を、なぜ君は愛してくれなかったんだ(小説版)

フーラー

文字の大きさ
7 / 17
第2章 フィクションでは大抵、親切に「見返り」が支払われるけど

2-3 いじめのターゲットは日南田、君に変わったみたいだよ

しおりを挟む
翌日、日南田の机の上にはいくつもの落書きがあった。
「クソ」「ヘンタイ」「モラハラ」といった心無い罵倒とともに、昨日影李の机の上に置かれていた花瓶があった。

ご丁寧に、今度は中に水ではなく墨汁がなみなみと入っている。捨てようとしたら、たぶん袖かどこかに付けてしまうことになるだろう。

「ま、想定内だったな……」

流石の日南田も自分がこんな目に遭うことを想定もしていなかったわけではない。
そう思いながらも、クラスメイトの『とっくん』に声をかけようとした。

「おはよ、とっくん!」
「…………」

だが彼は、申し訳なさそうに顔をそむけた。
そしてスマホにメッセージが届いた。
当然差出人はとっくん。

『おはよ、日南田! ……けど悪い、今のお前に挨拶を返せないんだ』

そう書かれていた。

(やっぱり……。けど、僕は彼に連絡先なんて教えてたかなあ……)

そう思っていると、後ろからドン! と突き押される感触があった。

「うわあ!」
「あれ? ここになんか、見えない壁があるなあ……」

そういってもう一度日南田の方を押してくる。
押してくる男子生徒の名は聖正(せいじ)。
先日影李にハンカチを貸していた生徒だ。

大人しくて『優しそうな』顔立ちもあいまって、クラスで一番の人気ものである。
文化祭の出し物なども彼の鶴の一声で決まるような、クラス内でのキャスティングボードを握っているのも彼だ。

だが、日南田は思い切って彼に抗議した。

「やめてって言ってるよね?」
「あれ? なんか幻聴が聞こえるな? ここからか?」

そういいながら、もう一度突き飛ばしてくる聖正。
証拠になるような、明確にあざになるような暴力を振るわないところが、彼らしい。

「いた!」

思わずひるみながらも、その様子をニヤニヤと周りが笑ってくる。

(そんな……。思い切って声を上げても……誰も味方してくれない……。いじめって、こんなものなの?)

それを見て、日南田は信じられないという表情をした。
……そして、自分の鞄の中を調べて更に気づいたことがある。


(あ……)

今朝、父が早起きして作ってくれた弁当箱が、入っていないのだ(日南田の家では、たまに父親が弁当を作る)。

「あれ、嘘?」

そう驚いていると、昨日影李をいじめていた女子生徒たちがニヤニヤと笑っていることに気がついた。
その視線はゴミ箱に向いている。


「やっぱり……捨てられてる……」

そう言いながら、日南田は少し泣きそうな表情で弁当箱を取り出していると、

「あれ、チー牛が泣いてるよね?」
「ほんとほんと。ちぎゅちぎゅうるさいっての」

そうニヤニヤ彼女たちが、こちらにギリギリ聞こえる声でつぶやきながら笑ってきた。
……恐らく、昨日の意趣返しのつもりなのだろう。

不幸中の幸いは、弁当の中身は無事だったことだ。
日南田は弁当箱を開いて食べ始めながら影李の机の方を見た。

すると、先ほど自分を突き飛ばしてきていた聖正と、同じくカースト上位のギャル風の女子生徒が、

「影李ちゃん、今まで助けて上げられなくてごめんね?」
「お昼、一緒にあっちで食べよ?」

そんな風に誘っていた。


(よかった……影李さんは僕とは逆に……友達が出来たんだな……)

そう日南田が思っていると、影李は日南田のほうに一瞬笑顔を向けてきた。
……だが、その笑顔は感謝の笑顔でも、同情を思わせるような苦笑いでもない。

そのことを少し気にしながらも、日南田は彼女に対して心の中で手を振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...