閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】6

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 「巻くか?」

 指をピンと伸ばしサインを送る鬼達。すると一斉に馬のスピードが上がる。

 「カド様聞こえますか?輪廻様が速度を上げ、こちらを引き離しに入った模様。至急先回りにて確保願います」

 「うむ、了解。急がねば、さあ行くぞ!」

 カド爺を乗せた天馬車が舞い上がる。

 「相変わらず空は怖いのぅ…。高いところは好かん、わしゃやっぱり普通の馬車がいいのぅ」

 爺が目的地に着くや、遠くから鬼達と共に輪廻が衛兵に追われてやって来た。

 「輪廻様~!止まってくだされ~!」

 馬車の窓から手を広げて、輪廻達の前に立ちはだかる。

 「止まって~く・だ・さ・れ~!」

 爺の懸命の呼びかけにも一向に止まる気配なく。馬車めがけ飛んできた。

 「あわわ!なんかヤバい雰囲気!ひぃぃ~お助け~!」

 間一髪、馬車をスレスレでかわす輪廻。それに白目をむいて倒れこむ爺。

 「カド様、カド様、大丈夫ですかお気を確かに!」

 衛兵に頬を叩かれ、何とか意識を取り戻した。

 「う、う~ん。」

 「なんだ爺やか。」

 馬けら降りてきた若者はゴーグルの向こうに澄んだ瞳がキラキラしていた。

 「輪廻様、無理はいけませぬ。お年寄りにはいたわりを持っていただかないと。」

 「へいへい、それより何かしたのか?爺や来たってことは」

 「ははっ。大王様がお呼びでございます。至急社の方へ」

 「…。親父が?何だよ」

 やはり粋がっていても父親の事が怖いのか顔色が変わる輪廻。

 「詳しいことは存じ上げございません」

 「わかった…」

 「天馬の方は私どもが、まずはカド様と馬車の方へ」

 鬼達に理由を話し別れを告げ天上へ。


天魔界―

「お帰りなさいませ、輪廻様」

入口でカシムがお出迎え。

 「カシム、親父は?いないの?」

 「はい、仕事場でございます。そちらの方へとことでしたが」

 「ああ、わかった。カシム、悪いが馬のアトラスが厩舎に戻ったら体洗ってやってくれ、あと餌も頼む。あいつ高いものしか食わない馬だからな、これ、餌のレシピな、渡しとくから」

 「はい、かしこまりました」

 「あと…、悪ぃ~餌代立て替えておいてくれ後で返すから~じゃぁな~」

 「!○Х△…。ひぃぃ、あんまりですぅ~!」

 「?」

 血は争えません、あの祖母あってこの孫あり。

 本邸から庭を横切った所に閻魔の社がある。

 「親父に会いにきた」

 「はっ、ただいま」

 奥間に入る衛兵を見て、やや緊張気味の輪廻。

続く

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