閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】7

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 「輪廻様、こちらの接客間で待つ様にとのことです」

 「わかった」

 地味な装飾に安物だとわかる椅子、大王とはいえ贅沢とは縁もない感じだった。

 立って待つこと暫し―

 「入るぞ」

 面と向かわず、仏頂面になにも言わず正面の机にドカッと腰を下ろす閻魔。

「…」

 人を呼んでおきながら、口を開かない閻魔に苛立つ輪廻。沈黙が更に続きそうなので輪廻から切り出した。

 「そっちから呼んどいて、なんだよ用件は?」

 あまり長話はお互い苦手なのか閻魔もストレートに言った。

 「人間界に行ってこい」

 唖然とする輪廻。

 「何言ってるんだ?親父、冗談やめろよ」

 「冗談などではない、大王としての命令だ。明日付けにて下界落ちを命ず」

 権限なのかなんなのか、一方的な命令にさすがの輪廻もアツくなる。

 「ふざけんなよ!不良息子への仕打ちのつもりか?なんで俺が人間たちの下界なんぞに行かなきゃならないんだよ!」

 自分勝手は承知の上、こんな親を許せとは口にできす、あくまでも大王の威厳を貫く閻魔だった。

 「自分の目で人間の世界を見て来るのだ。いずれはお前もこの生業につかねばならぬ身、その為に人間の生に触れてこい。二度と帰れない訳ではない、ちゃんと期間を設ける」

 「くそっ…一方的に…。くっ…」

 心の中では“誰が継ぐか!”と出かかった言葉を飲み込んだ。自分が今までしてきた事、いつも迷惑ばかりかけてきた事。しかし出てきた言葉は。

 「この馬鹿おやじ!」

 扉を足で蹴飛ばし、下唇に力を込め、真っ赤な顔で出て行く。ツッパる自分の気持ちに情けなささえあるに、裏腹な自分を責める輪廻だった。


魔界某所―

 鬼達のリーダー、不良仲間のキマラに胸の内を明かす。

 「なんだぁ?人間界だぁ?キャッハハハ、お前、何訳わかんねーこと言ってんだ?それも明日だぁ?お前の親父もなーに考えてんだか」

 呆れ顔のキマラに強気を返せない輪廻。

 「くっ…」

 「なーに好き好んで人間界なんぞに、あんなゲスな生き物なんぞ我ら鬼の糧に過ぎねぇぞ、ヒャハハハ。そんなもん、断っちまえよなー輪廻よー」

 「誰が好きなもんか、仕方ないだろ親父の命令なんだから」

 そんな弱気な輪廻にキマラが食って掛かる。

 「てめえ、良い子ちゃんぶってるとシメるぞ!」

 「離せよ、最近好き勝手ばっかだったし」

続く


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