66 / 83
ダンジョン
しおりを挟む
「はふーん……なるほどねぇ」
俺はサスケが持ってきた情報を聞いていた。
「いかが致しましょうか?」
スチュアートが問いかける。
「うーん。まぁ、取り敢えずこっちが一段落したらでしょう」
前方の戦闘包囲網から漏れた小型の魔物へ向けて、黒い補助媒体を向け氷魔法を放ち魔石へ変える。
俺は何処にいるかと言うと、お分かりのように“漆黒の森”で見つけたダンジョンにいる。
元々は、勇者パーティがイベントの為に抜けた穴を埋めるサポートとして、ダンジョン入り口付近の魔物だけを相手にしていたのだ。
が、勇者パーティは半月経っても全くダンジョンに帰って来ず、その後1週間経っても帰って来ず、結局1ヶ月経ってもダンジョンに戻って来なかった。
勿論、ローワン王国に苦情は入れている。元々共同で事にあたる予定が、全く参加しないばかりか、現在はこちらのシルバリウスという即戦力を連れて全く現場に居ない状態なのだ。
高ランクの探索者はいるが高ランクの探索者だからといって全員が強いわけではない。
高ランクの探索者はその名の通り、対魔物のための前衛、後衛職だけでなく罠の解除や、索敵が得意な者やマッピングが得意な者、回復役などバランスの取れたパーティであり、通常のダンジョンを探索するのは強いが、高ランクの魔物ばかり出現する今の異常なダンジョンでは進みがどうしても遅くなった。
領地の兵団も、ダンジョン関係なく現れる魔物対応や治安維持をお願いしていてとてもダンジョンまでは手をまわせない。
そんな八方塞がりな7月中旬。
あてにならない勇者パーティの代わりに、俺は最強の布陣を用意していたのだ。
即ち本来勇者パーティに入れる実力を持つ使用人達である。
オールラウンダーである勇者の能力が無いのと、近接戦闘が得意なシルバリウスが居ないのはキツいが、治癒や浄化担当のカメルの役割は魔力が尋常じゃない俺が出来、風魔法の魔術師ルドルフの役割は俺の前世概念を子供の頃から植え付けられていたエドガーが上位互換としている。
ロイは音属性の持ち主で広範囲の索敵ができ、ハワードの植物属性はダンジョンの植物には効きが悪いが全く使えない訳でもなく、土属性魔法とのコンボは魔物の足止めなどに役に立ち、カーラの毒属性は毒を持つ魔物に強く、毒を食らっても錬金術で毒消し薬が作れる、ニアは火属性魔法で攻撃が得意な上に、熱属性で火の威力を上げることが出来る、エドガーは武闘大会で優勝出来るほどの実力を持ち、俺は体力はなくても治癒とゲームのおかげで、それぞれメンバーの特性を本人達以上に知っており、効率よく指示を出す事ができ、俺の護衛は万能執事のスチュアートが出来る。
……過剰戦力な気がする。
斯くして、エドガーと俺まで屋敷を離れてしまう為、急遽戻って来た父親と入れ替わるようにダンジョンの1階層攻略に旅立ったのだ。
因みに、最初は俺の同行は父親もエドガーも反対していたが、いっこうに現れない勇者パーティと刻々と赤に近くなっていくダンジョン魔力石を前に全員が折れた。
ここでダンジョンを停滞期に持っていかないと、スタンピートでより酷い事になる事が分かっているのだ。
そして冒頭に戻り、ただ今絶賛ダンジョン探索中なのである。
サスケには別の仕事を任せていた為、今まで別行動だったが、これからはしばらくダンジョン探索に加われそうだ。
ってか、まだマッピングもしている最中のダンジョンで難なく合流出来るサスケは流石だな……。
今はダンジョン探索に潜ってから約2週間。早いテンポで進んでいるものの、余程広いのかまだ地下へ降りる階段が見つからない。
そんな最中、サスケが持ってきた情報の1つにリョウコから俺宛のガーデンパーティの招待状が屋敷へ届いたらしい。
……。
……。
……彼女は馬鹿なのかな?
今必死で、スタンピートを発生させないように頑張っている最中、ガーデンパーティとは仕事をほっぽり出している自覚がないのか、空気の読めなささがヤバイ。
それにローワン王国の国王も必死で勇者不在を誤魔化していたのに、これはもう言い逃れ出来ないだろう。
正当な理由なく、ダンジョンへの協力もせず利権だけ得ようなんて甘い。国には良い交渉材料になるだろうな。
そんなわけで意味の分からないガーデンパーティーの件は父親に任せて、こちらはダンジョン1階層の攻略を目指すばかりだ。
いつの間にか集まっていたメンバーにもうちょっと進む旨を伝えて、俺も俺を運ぶゴーレムに指示を出す。
ダンジョンといえば、シルバリウスに抱えられて進んだが、今は車椅子代わりの専用のゴーレムを調整しダンジョンを進んでいる。
服の上から指輪をひと撫ですると、前を向き再出発した。
――ダンジョンへ潜って約1ヶ月後の8/18に地下へ続く階段を発見、蔓延る魔物を一掃し無事に地下2階層が開き、徐々に1階層の魔物のレベルが安定していく。
ダンジョンの魔物のランクの正常化を確認し、ダンジョン魔力石が橙色に戻った報告を受け、そこからは本職の探索者がメインでという事でリューイ達は屋敷へ戻って行った。
因みに、結局勇者パーティはその間ダンジョンに一度も現れなかった。
俺はサスケが持ってきた情報を聞いていた。
「いかが致しましょうか?」
スチュアートが問いかける。
「うーん。まぁ、取り敢えずこっちが一段落したらでしょう」
前方の戦闘包囲網から漏れた小型の魔物へ向けて、黒い補助媒体を向け氷魔法を放ち魔石へ変える。
俺は何処にいるかと言うと、お分かりのように“漆黒の森”で見つけたダンジョンにいる。
元々は、勇者パーティがイベントの為に抜けた穴を埋めるサポートとして、ダンジョン入り口付近の魔物だけを相手にしていたのだ。
が、勇者パーティは半月経っても全くダンジョンに帰って来ず、その後1週間経っても帰って来ず、結局1ヶ月経ってもダンジョンに戻って来なかった。
勿論、ローワン王国に苦情は入れている。元々共同で事にあたる予定が、全く参加しないばかりか、現在はこちらのシルバリウスという即戦力を連れて全く現場に居ない状態なのだ。
高ランクの探索者はいるが高ランクの探索者だからといって全員が強いわけではない。
高ランクの探索者はその名の通り、対魔物のための前衛、後衛職だけでなく罠の解除や、索敵が得意な者やマッピングが得意な者、回復役などバランスの取れたパーティであり、通常のダンジョンを探索するのは強いが、高ランクの魔物ばかり出現する今の異常なダンジョンでは進みがどうしても遅くなった。
領地の兵団も、ダンジョン関係なく現れる魔物対応や治安維持をお願いしていてとてもダンジョンまでは手をまわせない。
そんな八方塞がりな7月中旬。
あてにならない勇者パーティの代わりに、俺は最強の布陣を用意していたのだ。
即ち本来勇者パーティに入れる実力を持つ使用人達である。
オールラウンダーである勇者の能力が無いのと、近接戦闘が得意なシルバリウスが居ないのはキツいが、治癒や浄化担当のカメルの役割は魔力が尋常じゃない俺が出来、風魔法の魔術師ルドルフの役割は俺の前世概念を子供の頃から植え付けられていたエドガーが上位互換としている。
ロイは音属性の持ち主で広範囲の索敵ができ、ハワードの植物属性はダンジョンの植物には効きが悪いが全く使えない訳でもなく、土属性魔法とのコンボは魔物の足止めなどに役に立ち、カーラの毒属性は毒を持つ魔物に強く、毒を食らっても錬金術で毒消し薬が作れる、ニアは火属性魔法で攻撃が得意な上に、熱属性で火の威力を上げることが出来る、エドガーは武闘大会で優勝出来るほどの実力を持ち、俺は体力はなくても治癒とゲームのおかげで、それぞれメンバーの特性を本人達以上に知っており、効率よく指示を出す事ができ、俺の護衛は万能執事のスチュアートが出来る。
……過剰戦力な気がする。
斯くして、エドガーと俺まで屋敷を離れてしまう為、急遽戻って来た父親と入れ替わるようにダンジョンの1階層攻略に旅立ったのだ。
因みに、最初は俺の同行は父親もエドガーも反対していたが、いっこうに現れない勇者パーティと刻々と赤に近くなっていくダンジョン魔力石を前に全員が折れた。
ここでダンジョンを停滞期に持っていかないと、スタンピートでより酷い事になる事が分かっているのだ。
そして冒頭に戻り、ただ今絶賛ダンジョン探索中なのである。
サスケには別の仕事を任せていた為、今まで別行動だったが、これからはしばらくダンジョン探索に加われそうだ。
ってか、まだマッピングもしている最中のダンジョンで難なく合流出来るサスケは流石だな……。
今はダンジョン探索に潜ってから約2週間。早いテンポで進んでいるものの、余程広いのかまだ地下へ降りる階段が見つからない。
そんな最中、サスケが持ってきた情報の1つにリョウコから俺宛のガーデンパーティの招待状が屋敷へ届いたらしい。
……。
……。
……彼女は馬鹿なのかな?
今必死で、スタンピートを発生させないように頑張っている最中、ガーデンパーティとは仕事をほっぽり出している自覚がないのか、空気の読めなささがヤバイ。
それにローワン王国の国王も必死で勇者不在を誤魔化していたのに、これはもう言い逃れ出来ないだろう。
正当な理由なく、ダンジョンへの協力もせず利権だけ得ようなんて甘い。国には良い交渉材料になるだろうな。
そんなわけで意味の分からないガーデンパーティーの件は父親に任せて、こちらはダンジョン1階層の攻略を目指すばかりだ。
いつの間にか集まっていたメンバーにもうちょっと進む旨を伝えて、俺も俺を運ぶゴーレムに指示を出す。
ダンジョンといえば、シルバリウスに抱えられて進んだが、今は車椅子代わりの専用のゴーレムを調整しダンジョンを進んでいる。
服の上から指輪をひと撫ですると、前を向き再出発した。
――ダンジョンへ潜って約1ヶ月後の8/18に地下へ続く階段を発見、蔓延る魔物を一掃し無事に地下2階層が開き、徐々に1階層の魔物のレベルが安定していく。
ダンジョンの魔物のランクの正常化を確認し、ダンジョン魔力石が橙色に戻った報告を受け、そこからは本職の探索者がメインでという事でリューイ達は屋敷へ戻って行った。
因みに、結局勇者パーティはその間ダンジョンに一度も現れなかった。
85
お気に入りに追加
1,459
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい
白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。
村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。
攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる